感じ方

もう一度食べたくなるチョコは何が違う?食べ飽きの研究では、続けて食べるほど「食べたい気持ち」が下がった

約8分で読めます / 主役の研究: Hetherington ら 2002(リバプール大学)

研究の確かさ ★★☆ 中論文5本を照合
並んだ一口大のチョコ
Photo: Marek Ślusarczyk (Tupungato) Photo portfolio / CC BY 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

試食の1かけ目では高く評価されたのに、続けて食べると点数が落ちる。「もう一度食べたくなる」チョコを作るうえで、この「食べ飽き」は避けて通れません。食べ飽きは研究で何度も測られてきました。この記事では、チョコを食べたくなる理由(チョコがやめられないのは依存?)ではなく、続けて食べたときと毎日食べたときに「もう一口」の評価がどう変わるか、チョコのどの性質が効きそうかを、開発で試作と評価を組む人に向けて読みます。

結論

  1. リバプール大学の実験では、同じチョコ67gを毎日食べ続けると、味のおいしさと「食べたい気持ち」の評価が日を追って下がった。同じ量のバターつきパンでは下がらなかった。
  2. 色だけが違うチョコの実験では、食べた色のおいしさの評価が、食べていない色より大きく下がった。食べ飽きは味だけでなく見た目にも結びつく。
  3. 口どけ・後味・甘さの強さのどれが食べ飽きを左右するかを、チョコで比べた研究は今回見つからなかった。

01 どんな研究か同じチョコを毎日食べると、おいしさは下がる?

下がりました。リバプール大学の Hetherington らは、男性に同じチョコを毎日決まった量だけ食べてもらい、味のおいしさと食べたい気持ちを繰り返し測りました。どちらも日を追って下がりました。

Hetherington MM, Pirie LM, Nabb S / リバプール大学 心理学科(2002)[1]

実験1では、チョコ組の13人が毎日67g(1473kJ)のチョコを22日間食べた。1・8・15・22日目には好きなだけ食べてもらった。チョコの味のおいしさと食べたい気持ちは、日を追って有意に下がった。比べたバターつきパン組(16人、毎日95g)では、この変化は見られなかった。

対象: 健康で標準体重の男性 / 限界: 1つのチョコだけで調べている。どの種類のチョコかで差が出るかは調べていない。

実験2では53人を3組に分け、15日間調べました[1]。試験日だけ食べる組、毎日67gを食べる組、毎日少しずつ量を増やす組です。おいしさと食べたい気持ちは時間とともに下がり、毎日食べた2組で下がり方が大きくなりました。

ただし、好きなだけ食べてよい日の食べた量は、日を追って増えました[1]。「おいしい」と感じる気持ちが下がっても、食べる量が減るとは限らない、ということです。「もう一度食べたくなる」を考えるときは、量ではなく本人の評価を見る必要があります。

1回の中での変化も測られています。ノースウェスタン大学(連絡先の著者の所属)の Small らは、チョコを満腹を超えるまで1かけずつ食べてもらいました[2]。1かけごとに「どれだけおいしいか」と「もう1かけほしいか」を答えてもらい、脳の血流を調べました。おいしく、もっとほしいときと、満腹なのに食べているときでは、働く脳の場所が違いました。

02 わかった数字チョコの何が変わると、食べ飽きも変わる?

見た目の色だけが違っても、食べた色のチョコだけおいしさの評価が下がりました。カカオ分70%のダークチョコは、30%のミルクチョコより甘いものへの欲求を下げました。どちらも少人数の実験です。

22日同じチョコ67gを毎日食べ続けた期間。おいしさと食べたい気持ちが下がった(13人、Hetherington ら 2002)
17%ダークチョコ100gを食べた2時間後の食事の量が、ミルクチョコ100gのあとより少なかった(男性16人、Sørensen・Astrup 2011)
色だけ色だけが違うチョコでも、食べた色のおいしさの評価が大きく下がった(Rolls ら 1982)
14〜15%形や味の違う料理を順に出すと、好きな1種類だけより食べる量が増えた(パスタとサンドイッチ、Rolls ら 1982)

見た目. オックスフォード大学の Rolls らは、色だけが違うチョコを使いました[3]。ある色を食べたあとは、その色のおいしさの評価が、食べていない色より大きく下がりました。中身は同じでもです。ただ、いろいろな色を出しても、好きな色だけのときより食べる量は増えませんでした。形を変えたパスタ(14%)や、味を変えたサンドイッチ(15%)では、種類を変えると食べる量が増えました。

カカオ分と甘さ. コペンハーゲン大学の Sørensen と Astrup は、男性16人にミルクチョコ(カカオ分30%)かダークチョコ(同70%)を100g、15分で食べてもらいました[4]。ダークチョコのあとは、満腹感が高く、甘いもの・脂っこいもの・塩味のものを食べたい気持ちが低くなりました。2時間後の食事の量は17%少なくなりました。著者らは、ダークチョコの味が強いことを理由の候補に挙げています。ただし2つのチョコは、カカオ分だけでなく脂肪や砂糖の量も違うため、どれが効いたかは分けられません。研究は大学の内部資金で行われ、著者の1人は別の研究で多くの食品企業から支援を受けていると書かれています。カカオ分と苦さの関係はカカオ分が高いほど苦い?で整理しています。

味の強さと複雑さ. ワーヘニンゲン大学の Weijzen らは、スープ(66人)とスナック(61人)で調べました[5]。味が強いスナックは、やや食べ飽きが大きい傾向でしたが、はっきりした差ではありませんでした(p = 0.09)。強すぎず弱すぎない、ほどよい刺激の味は、繰り返し食べてもおいしさが下がりにくいとされました。スナックがチョコかどうかは要旨に書かれていません。共著者の1人は食品企業の所属です。

03 開発への使い方食べ飽きを試作の評価にどう入れる?

1かけ目の好き度だけでなく、続けて食べたときの下がり方を評価に入れることです。配合は味の強さを1つずつ変え、評価は1回の中の変化と日をまたいだ変化の2通りで測ります。

1

配合・工程: 味の強さを1つだけ変えた試作を並べる

砂糖の量、カカオ分、焙煎の深さのうち1つだけを段階的に変え、ほかはそろえます。スナックの研究では、強すぎず弱すぎない刺激の味ほど繰り返してもおいしさが下がりにくいとされました[5]。チョコで確かめた結果ではないので、試作で確かめる価値がある条件として扱います。ダークとミルクの比較のように、カカオ分・脂肪・砂糖が同時に違う比べ方では、どれが効いたか分けられません[4]。

目安 1条件3段階。ほかの配合と工程は固定

2

評価: 1かけごとの2つの点数と、日をまたいだ反復を測る

Small らの研究のように、1かけごとに「おいしさ」と「もう1かけほしいか」を付けてもらい、何かけ目で下がるかを見ます[2]。Hetherington らのように同じ試作を毎日食べてもらい、初日と最終日の1かけ目を比べる反復試験も組めます[1]。食べた量は評価が下がっても増えたので[1]、量ではなく評価の点数で比べます。

目安 1回5かけまで。反復は1〜2週間、パネルは同じ人

3

品質管理・表示: 見た目のばらつきも食べ飽きに入る

色だけが違うチョコでも、食べた色の評価が下がりました[3]。つまり見た目は評価に入り込みます。食べ飽きを比べる試験では色・つや・形をそろえ、量産でもロット間の色のばらつきを管理項目に入れます。色だけを変えて飽きにくく見せる手は、中身が同じなので勧めません。詰め合わせにするなら、中身の味や食感が実際に違うものを組みます。

目安 試験の試料は同じロットから。色差は機械で測って記録

研究の条件は、健康な男性13〜53人、1種類のチョコ、大学の実験室での結果です。自社のラインや買う人の層とは違うので、自社の試作と自社のパネルで確かめ直す必要があります。口どけのよさは粒の大きさや結晶の状態で変わります(なめらかさは粒の大きさで決まる?)が、口どけが食べ飽きを変えるかは、まだ確かめられていません。社内の試食記録には食べ比べノートも使えます。

04 まだわからないことチョコのどの性質が「もう一口」を決めるかはわかっている?

わかっていません。チョコでも食べ飽きは起きる、という点は複数の研究で同じ向きです。しかし、口どけ・後味・甘さの強さを1つずつ変えて、食べ飽きを比べた研究は今回見つかりませんでした。

  • 口どけの速さや後味の長さを変えたチョコで、食べ飽きを比べた研究は見つかりませんでした。
  • ダークとミルクの差は、カカオ分・脂肪・砂糖が同時に違う比較で、どれが効いたかは分けられていません。16人の男性だけの結果です。
  • 毎日食べる実験は男性だけ、1つのチョコだけで、女性や別のチョコで同じになるかはわかりません。
  • Small らの研究で、何かけ目からおいしさが下がったかの数字は、今回は本文を読めず確かめられませんでした。
  • 食べ飽きが起きにくいチョコが、本当に「また食べたくなる」チョコなのか、つまり次の日に手が伸びるかを測った研究は見つかりませんでした。

「誰かにあげたくなる」と「もう一度買いたくなる」の研究は、箱の色や重さで味の感じ方は変わる?ともう一度買いたくなるチョコは何で決まる?で読めます。

テンパリング温度ガイド研究一覧を見る

05よくある質問

同じチョコを食べ続けると飽きるのはなぜ?

研究では「感覚特異的満腹」と呼ばれます。食べたものと同じ味や見た目のおいしさだけが下がり、ほかの食べ物のおいしさはあまり下がらない現象です。色だけが違うチョコでも、食べた色のおいしさの評価が大きく下がりました。

食べ飽きは、試食の評価でどう測ればいい?

研究では2通りでした。1回の中で1かけごとに「おいしさ」と「もう1かけほしいか」を付けてもらう方法と、同じチョコを毎日食べてもらい日を追って評価を比べる方法です。リバプール大学の実験では、食べた量は日を追って増えたのに評価は下がったので、量ではなく評価の点数で比べます。

ダークチョコとミルクチョコ、どちらが飽きにくい?

飽きにくさを直接比べた研究は見つかりませんでした。男性16人の実験では、カカオ分70%のダークチョコのあとのほうが、甘いものを食べたい気持ちが低く、2時間後の食事も17%少なくなりました。ただし2つはカカオ分・脂肪・砂糖が同時に違い、どれが効いたかは分けられません。満足しやすいとは言えますが、また食べたくなるかは別の問いです。

出典

  1. Hetherington MM, Pirie LM, Nabb S (2002). Stimulus satiation: effects of repeated exposure to foods on pleasantness and intake. Appetite, 38(1), 19–28. https://doi.org/10.1006/appe.2001.0442
  2. Small DM, Zatorre RJ, Dagher A, Evans AC, Jones-Gotman M (2001). Changes in brain activity related to eating chocolate: from pleasure to aversion. Brain, 124(9), 1720–1733. https://doi.org/10.1093/brain/124.9.1720
  3. Rolls BJ, Rowe EA, Rolls ET (1982). How sensory properties of foods affect human feeding behavior. Physiology & Behavior, 29(3), 409–417. https://doi.org/10.1016/0031-9384(82)90259-1
  4. Sørensen LB, Astrup A (2011). Eating dark and milk chocolate: a randomized crossover study of effects on appetite and energy intake. Nutrition & Diabetes, 1(12), e21. https://doi.org/10.1038/nutd.2011.17
  5. Weijzen PLG, Zandstra EH, Alfieri C, de Graaf C (2008). Effects of complexity and intensity on sensory specific satiety and food acceptance after repeated consumption. Food Quality and Preference, 19(4), 349–359. https://doi.org/10.1016/j.foodqual.2007.11.003