感じ方

つやのあるチョコはおいしそうに見える?チョコ本体のつやと好みを調べた研究は見つからなかった

約6分で読めます / 主役の研究: De Kerpel et al. 2020

研究の確かさ ★☆☆ 低論文5本を照合
テンパリングしたつやのあるチョコの見本
Photo: SKopp / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文と公的機関の資料をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

チョコのつやは、製造の出来を見る目安としてよく使われます。化学の研究では、カカオバターがうまく結晶した印だと説明されています。ところが「つやがあるほど好まれる」ことをチョコで確かめた研究は、今回の調べでは見つかりませんでした。逆に、包装のつやは味の評価を下げていました。つやを品質の指標と好みの手がかりのどちらとして扱うかで、確かめ方が変わります。

結論

  1. チョコのつやは、カカオバターが安定した結晶(V型)でそろい、表面がなめらかになった印とされる。白くくもるブルームは、表面の大きな結晶が光を散らすために起こる。
  2. ベルギーのゲント大学の店頭での研究では、同じチョコをつやのある包装で出すと「脂肪が多そう」と思われ、試食後の味の評価も7段階で5.07と、つや消しの包装(5.92)より低かった。
  3. チョコ本体のつやが好みや「また食べたい」を上げるかは、直接の研究が見つからない。つやは、うまく作れた・新しいと伝える手がかりとして、②あげたくなる見た目に効く可能性がある、という段階。開発では、まずテンパリングと保存の品質を見る目安として使うのが確かな使い方。

01 どんな研究かつやは、チョコの味の印象を変えるのか?

ゲント大学のチームが、ヨーロッパの大手スーパーの店頭で、同じ新しいチョコをつやのある包装とつや消しの包装で出し、買い物客178人に中身の印象と試食後の味を聞きました。

De Kerpel L, Kobuszewski Volles B, Van Kerckhove A / ゲント大学(2020)[1]

つやのある包装は「中のチョコは脂肪が多そう」と思わせ、健康そう・質が高そう・高そうという印象も下げた。試食したあとの味の評価も、つや消しの包装より低かった。

対象: 店頭の買い物客178人(18歳以上、平均52.4歳)。まだ売られていない試作品のチョコ。包装はつや2通り×形2通り(袋と筒) / 限界: 時間帯ごとに包装を入れ替えた準実験で、無作為の割り付けではない。つやは包装のもので、チョコ本体のつやではない。

この研究は、チョコ本体ではなく包装のつやを調べたものです。それでも主役に選んだのは、つやとチョコの味の評価を、試食まで含めて調べた研究が、今回の調べではこれしか見つからなかったからです。

買い物客はまず包装を見て触り、中のチョコについて答えました[1]。そのあと試食し、「まずい〜おいしい」「食欲がわかない〜わく」の2項目で味を評価しています。店頭の客が時間帯で偏らないよう、包装は1時間ごとに入れ替え、3日間で順番をずらしました。研究は外部の資金を受けておらず、利益相反はないとされています。

一方、チョコ本体のつやは、作り方の質を映すものとして研究されています。カナダのゲルフ大学のチームは展望論文(総説)で、テンパリングはつや・パキッと割れる性質・ブルームの起こりにくさを生む工程だと説明しています[2]。同じチームの実験論文は、きちんとテンパリングしたチョコは表面がなめらかでつやが高く、白くくもるブルームは表面の大きな結晶が光を散らすために起こる、と書いています[3]。結晶の話はチョコはなぜパキッと割れて口で溶ける?へ。

02 わかった数字つやのある包装で、評価はどれだけ変わった?

つやのある包装では、試食後の味の評価が7段階で5.07、つや消しでは5.92でした。質の高さの評価も5.09と5.99で、つやのある包装のほうが低くなりました。

5.07 対 5.92つやのある包装とつや消しの包装で、試食後の味の評価(7段階)
5.09 対 5.99同じく、質が高そうという評価(7段階)
3.89 対 3.21「脂肪が多そう」の評価。つやのある包装のほうが高い(7段階)
178人ヨーロッパの大手スーパーの店頭で、3日間に参加した買い物客

つや一般については、人はつやのあるものを好む、という研究があります。ゲント大学などの6つの研究では、大人だけでなく幼い子どもも、つやのあるものを好みました[4]。著者らは、きれいな水を求める性質から来ているのではないかと考えています。ただし対象は食べ物ではありません。

食べ物の見た目のつやは、新しさの手がかりにもなります。農研機構 食品総合研究所(当時)と慶應義塾大学などのチームは、アジの目を3.29時間にわたって撮影し、11人に新しく見えるほうを選んでもらいました[5]。時間がたつほど新しくないと判断され、その判断は画像の明るさの散らばりと偏り(つやに関わる手がかり)でよく説明できました。チョコではなく魚の目の研究です。

何のつやわかったことチョコで確かめたか
チョコ本体テンパリングの成功の印。ブルームはつやを失わせる [2][3]物の測定のみ。好みは未確認
チョコの包装つやがあると脂肪が多そうと思われ、味の評価が低い [1]確かめた(店頭178人)
食べ物以外人はつやのあるものを好む [4]していない
魚の目つやに関わる手がかりで新しさを判断 [5]していない

03 開発への使い方つやを、品質管理と評価にどう使う?

つやは、まずテンパリングと保存の品質を見る目安として使い、好みへの効き目は「見た目の評価」と「食べた評価」を分けて確かめます。包装のつやは、店頭の研究では味の評価を下げる側に働きました。

1

テンパリングの条件を1つだけ変えて、つやを比べる

同じ配合で、テンパリングの温度か冷やし方だけを変えた試作を作り、同じ照明・角度で表面を撮るか、光沢計があれば光沢を測ります。つやは割れ方・口どけと一緒に変わるので、同じ試料で割れ方と口どけも記録します。温度の考え方はテンパリングの温度の記事へ。

目安 条件2〜3、同じ日に作って同じ日に測る

2

見た目の評価と、見た目を隠した試食を分ける

パネルには先に見た目だけで「おいしそうか」を評価してもらい、別の回に、表面が見えない条件で食べてもらいます。両方で同じ試作が選ばれるかを比べると、つやが期待に効いたのか、中身の差なのかを分けられます。

目安 2回に分ける。出す順番は人ごとに入れ替える

3

保存試験につやの持ちを入れ、包装は中身の印象とずれないか見る

流通や店頭で想定される保存温度で、つやが消えて白くなるまでの日数を記録します(仕組みはチョコが白くなったら食べられる?、保存温度はチョコは冷蔵庫に入れていい?)。包装は、店頭の研究ではつやのある包装で「脂肪が多そう」と思われ、味の評価も低くなりました。包装を決めるときは試食つきで、買う人の期待と中身がずれないかを確かめます。

目安 保存条件2つ以上、決めた間隔で同じ角度から撮る

包装の研究はヨーロッパの1つのスーパーで買い物客178人が試作品を食べたもの、つやの化学の研究はカカオバターやチョコの物の測定で、自社の製品・照明・売り場とは条件が違います。つやで中身以上に見せるのではなく、つやが「うまく作れた」ことを正しく伝える状態を保つために使ってください。箱の重さや色の研究は箱の色や重さで味の感じ方は変わる?にまとめました。

04 まだわからないことつやとおいしさの関係は、どこまでわかっている?

チョコ本体のつやの強さを変えて、おいしそうに見えるか・食べて好まれるかを人で調べた研究は、今回の調べでは見つかりませんでした。

  • チョコ本体のつやと、見た目の評価や好みとの関係を、人で直接調べた研究は見つかりませんでした。
  • テンパリングしたチョコは、つやだけでなく割れ方や口どけも変わります。好みに差が出ても、つやの効果だけとは分けられません。
  • 包装のつやの研究は1つの店での準実験で、包装の材料や印刷の違いが影響した可能性があります。
  • 人がつやを好むという研究は食べ物以外、新しさの研究は魚の目で、チョコに当てはまるかは不明です。
  • つやが「あげたい」「もう一度買いたい」につながるかは測られていません。

テンパリング温度ガイド研究一覧を見る

05よくある質問

チョコにつやが出るのはなぜ?

カカオバターが安定した結晶(V型)でそろい、表面がなめらかになると、光がきれいに反射してつやが出ると説明されています。テンパリングは、このつやとパキッと割れる性質を生む工程とされます。

つやのあるチョコのほうがおいしい?

つやが強いチョコほど好まれるかを、人で直接調べた研究は見つかりませんでした。つやはテンパリングがうまくいった印なので、口どけなどほかの性質と一緒に変わります。つやだけで味が決まるとはいえません。

チョコの包装はつやがあるほうがいい?

ゲント大学の店頭の研究では、つやのある包装のチョコは脂肪が多そうと思われ、試食後の味の評価も7段階で5.07と、つや消しの包装(5.92)より低くなりました。1つの店での研究なので、ほかの条件でも同じかは確かめられていません。