チョコが白くなったら食べられる?カナダの食品検査庁は「害はない」とし、砂糖か油かは見分けられる

店頭や倉庫に置いたチョコの表面が、白っぽくなっていた。買った人からは「カビでは」と聞かれることもあります。この白さには名前があり、「ブルーム」と呼ばれます。油が浮いたものと、砂糖が浮いたものの2種類があり、特別な機器がなくても見分けられます。
結論
- カナダ食品検査庁は、チョコの白いくもり(ブルーム)は味が落ちることはあっても害はなく、そのまま食べても、お菓子作りに使ってもよいとしている。
- 米国・南フロリダ大学の研究では、白い部分に水を1滴2分のせて溶ければ砂糖の白さ(シュガーブルーム)、40℃に温めた金属を当てて溶ければ油の白さ(ファットブルーム)と見分けた。
- 油の白さは、温度が上がったり下がったりをくり返すと増えた。どの仕組みで白くなるかは、総説でも「まだ多くがわかっていない」とされている。
01 どんな研究か白くなったチョコは、油か砂糖か見分けられる?
南フロリダ大学の Heuler らは、白くなった市販のチョコ3種類を、水1滴と温めた金属の簡単な試験で見分け、携帯型の分析機器の結果と比べました。2つの試験で白さの種類を区別できました。
Heuler J, He S, Ambardar S, Voronine DV / 米国・南フロリダ大学ほか(2020)[1]
白くなったミルクチョコ2種類とダークチョコ1種類を調べた。水を1滴2分のせると、ミルクチョコ2種類の白さは溶けて色が濃くなり、砂糖の白さと判定された。ダークチョコの白さは水では溶けず、油の白さと判定された。
対象: 店で買った市販のチョコ3種類(製品名は書かない) / 限界: 試料は3種類だけ。研究の主な目的は、光を当てて成分を調べる携帯型の機器(ラマン分光計)で白さを見分けることだった。
もう1つの試験は熱です[1]。金属のへらの先を40℃の加熱板で20秒温め、白い部分に10秒当てました。溶けた白さは油の白さと判定しました。油は水に溶けず、砂糖は水に溶けるという、性質の違いを使った見分け方です。
この研究のミルクチョコの1つは、23〜29℃の部屋に1週間置いて白くしたものでした。それでも白さの正体は砂糖でした。研究は、1つのチョコに油と砂糖の白さが一緒に出ることもある、という報告も紹介しています。
02 わかった数字白くなったチョコは、食べても大丈夫?
カナダ食品検査庁は、ブルームは健康への害はなく、食べても焼き菓子に使ってもよいとしています。変わるのは味と見た目で、油の白さは温度の上下をくり返すほど増えました。
| 油の白さ(ファットブルーム) | 砂糖の白さ(シュガーブルーム) | |
|---|---|---|
| 主なきっかけ | 高い温度でカカオバターが溶けて分かれ、表面に出る | 湿気で砂糖が溶け、表面で結晶になる |
| 見た目(食品検査庁) | 白くくもった膜 | 白い斑点・まだら |
| 水1滴を2分 | 溶けない | 溶けて色が濃くなる |
| 40℃の金属を10秒 | 溶ける | (研究では油の判定に使った) |
| 食べられるか | 害はなく、食べても焼き菓子に使ってもよい(食品検査庁) | |
きっかけ・見た目・食べられるかはカナダ食品検査庁 [2]、見分け方は Heuler ら [1] より。
油の白さは、温度の上下で増えることが測られています。トロントのライアソン大学の Hodge と Rousseau は、ミルクチョコを20℃と32・33・34℃の間で何度も行き来させ、表面を細かい針でなぞる顕微鏡で調べました[3]。32℃まででは白さも結晶の形もあまり変わりませんでした。33℃では白さが少しずつ出て、いちばん安定なVI型の結晶が現れ始めました。34℃では広く白くなり、でこぼこは1回で373nm、3回で736nmに増えました。
テンパリングの失敗でも油の白さは出ます。テンパリングが足りないダークチョコは、表面も中の周りも白くなりました[4]。テンパリングしないチョコの白さを調べた研究では、油が表面へ移るのではなく、育つ結晶が周りの油を引き寄せて、油の少ない明るい部分ができる、と考えられています[5]。結晶の形についてはカカオバターの6つの結晶とV型にまとめています。
03 開発への使い方白くなった製品は、どう原因を切り分ける?
白くなった製品や保存試験の試料は、まず水1滴と温めた金属で油か砂糖かを分け、原因が温度の上下か湿気かを切り分けます。保存試験には温度を上下させる条件を入れると、差が早く出ます。
配合・工程: 白さの種類から、疑う工程を決める
油の白さなら、テンパリングの不足・冷やしすぎ・保存中の温度の上下を疑います。テンパリングが足りないダークチョコは、表面も中の周りも白くなりました[4]。砂糖の白さなら、湿気や結露を疑います。疑う工程が決まったら、その条件だけを1つ変えた試作を同じ保存条件に並べます。テンパリングの温度はテンパリングは何度で何をしている?の表を出発点にします。
目安 疑う条件1つ × 2〜3段階。ほかは固定
評価: 見分けの試験と、温度を行き来させる保存試験を組む
見分けは研究と同じく、水1滴を2分のせて溶ければ砂糖、40℃の金属を10秒当てて溶ければ油と判定します[1]。1つの製品に両方が出ることもあるので、場所を変えて複数か所で試します。保存試験は、Hodge と Rousseau のように20℃と32〜34℃の間を行き来させると、32℃ではほとんど白くならず、34℃で広く白くなるという差が出ました[3]。白さは同じ光で撮った写真の色で数値にし、研究では表面のでこぼこ(278→736nm)も測っています。
目安 試料ごとに3か所以上で見分け、写真は同じ光で
品質管理・表示: 問い合わせの答えと保存方法の書き方をそろえる
「白いのはカビでは」という問い合わせには、カナダ食品検査庁の整理(ブルームは味が落ちることはあっても害はない)を根拠に、油と砂糖の2種類があることを説明できます[2]。ただし、においの異常や毛のようなものはブルームとは別に扱います。保存方法は、同庁が勧める「涼しく乾いた場所」を出発点に、自社の保存試験で確かめて書きます。日本の食品表示法での保存方法の書き方は、この記事では原典を確かめていません。白くなった製品を作り直せるかは白くなったチョコは溶かせば戻る?、冷蔵の扱いはチョコは冷蔵庫に入れていい?で読めます。
目安 苦情品は見分けの結果と保存の経路を記録
見分け方は市販のチョコ3種類[1]、温度の行き来の試験はミルクチョコ[3]での結果です。自社の配合・包装・流通の温度とは条件が違うので、見分けの結果は自社の保存試験と照らして使います。社内の試食記録には食べ比べノートも使えます。
04 まだわからないことチョコが白くなる仕組みは、どこまでわかっている?
ブルームは何十年も研究されてきましたが、Lonchampt と Hartel の総説は、油の白さがどうやってできるかの細かい仕組みは「まだ大部分がわかっていない」としています[7]。
- 油の白さには、テンパリングの失敗・急な冷やしすぎ・保存中の温度の上下など、いくつもの型があると整理されています[6]。どの型がどれくらい起きるかは、チョコの成分や条件で変わります。
- V型の結晶になっていても白くなるチョコが報告されています[6]。結晶の形だけでは説明しきれません。
- 水1滴と温めた金属の見分け方は、市販のチョコ3種類で試されただけです。もっと多くの種類や配合で確かめた研究は見つかりませんでした。
- 白くなったチョコの味や口どけが、人の評価でどれだけ落ちるかを測った研究は、今回見つかりませんでした。
05よくある質問
チョコが白くなったら食べられる?
ブルーム(白いくもりや斑点)なら食べられます。カナダ食品検査庁は、ブルームは味が落ちることはあっても健康への害はなく、そのまま食べても焼き菓子に使ってもよいとしています。においがおかしいなど、ブルームと違う様子のものは別です。
ファットブルームとシュガーブルームの違いは?
ファットブルームは、温度が上がってカカオバターが溶けて分かれ、表面に出た油の白さです。シュガーブルームは、湿気でチョコの砂糖が溶け、表面で結晶になった白さです。米国の研究では、水1滴で溶ければ砂糖、40℃の金属で溶ければ油と見分けました。
白くなったチョコは溶かして使える?
油の白さ(ファットブルーム)は、カカオバターの結晶が崩れたり形が変わったりしたものと説明されているので、溶かしてテンパリングし直せば作り直せると考えられます。カナダ食品検査庁も、ブルームのあるチョコは焼き菓子に使ってよいとしています。
チョコが白くならないようにするには?
温度と湿気が上下しない場所に置くことです。カナダ食品検査庁は、いつも涼しく乾いた場所での保存を勧めています。ミルクチョコの試験では、20℃と34℃の間を行き来させると広く白くなりました。
出典
- Heuler J, He S, Ambardar S, Voronine DV (2020). Point-of-care detection, characterization, and removal of chocolate bloom using a handheld Raman spectrometer. Scientific Reports, 10, 9833. https://doi.org/10.1038/s41598-020-66820-1
- Canadian Food Inspection Agency. White coating on chocolate (chocolate bloom). 2020-07-27 更新. https://inspection.canada.ca/en/food-safety-consumers/fact-sheets/specific-products-and-risks/commonly-occurring-issues-food/chocolate-bloom
- Hodge SM, Rousseau D (2002). Fat bloom formation and characterization in milk chocolate observed by atomic force microscopy. Journal of the American Oil Chemists' Society, 79, 1115–1121. https://doi.org/10.1007/s11746-002-0613-4
- Afoakwa EO, Paterson A, Fowler MR, Vieira J (2008). Effects of tempering and fat crystallisation behaviour on microstructure, mechanical properties and appearance in dark chocolate systems. Journal of Food Engineering, 89(2), 128–136. https://doi.org/10.1016/j.jfoodeng.2008.04.021
- Kinta Y, Hatta T (2005). Composition and Structure of Fat Bloom in Untempered Chocolate. Journal of Food Science, 70(7), s450–s452. https://doi.org/10.1111/j.1365-2621.2005.tb11491.x
- Stobbs JA, Ghazani SM, Donnelly ME, Marangoni AG (2025). Chocolate Tempering: A Perspective. Crystal Growth & Design, 25(9), 2764–2783. https://doi.org/10.1021/acs.cgd.5c00269
- Lonchampt P, Hartel RW (2004). Fat bloom in chocolate and compound coatings. European Journal of Lipid Science and Technology, 106(4), 241–274. https://doi.org/10.1002/ejlt.200400938


