口どけと保存

チョコは何℃で溶ける?カカオバターは35〜36℃で溶けきり、7人の試食では29℃に置くと口で溶け出すのが早まった

約7分で読めます / 主役の研究: Dicolla ら 2019(ペンシルベニア州立大学ほか)

研究の確かさ ★★☆ 中論文4本を照合
溶かしたチョコと温度計
Photo: Roozitaa / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文と公的機関の資料をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

チョコは手のひらではなかなか溶けないのに、口に入れるとすっと溶けます。夏の売り場や配送では形が崩れ、冷えたまま食べると口の中でなかなか溶けません。チョコは何℃で溶け始めて、何℃で溶けきるのか。機械で測った数字と、人が食べて測った数字を並べて読みます。結晶の形(V型)の話はチョコはなぜパキッと割れて口で溶ける?で扱っているので、ここでは温度の数字に絞ります。

結論

  1. トルコの大学の測定では、3つの産地のカカオから取ったカカオバターは14〜15℃台で溶け始め、35〜36℃ですべて溶けた。チョコの中のふつうの結晶(V型)が溶ける範囲は約30.0〜34.5℃とされ、口の中の温度に近い。
  2. 米国の訓練された7人の試食では、評価の基準にした試作のミルクチョコを24℃・29℃・38℃に置いて食べると、舌で溶け出すまでの評価は5.9・3.7・1.8と短くなり、パキッと割れる強さは12.7・4.7・1.9と弱くなった。
  3. 食べる人の口の中で、チョコが何秒で何%溶けるかを温度ごとに測った研究は見つからなかった。冷たいものを食べると舌の表面は27℃台まで下がるという研究もあり、口の温度は一定ではない。

01 どんな研究かチョコの温度で、口どけはどれだけ変わる?

大きく変わりました。ペンシルベニア州立大学と菓子会社の研究所のチームは、訓練された7人に、同じミルクチョコを24℃・29℃・38℃の部屋で食べてもらい、割れる強さや舌で溶け出すまでの時間を点数にしました。温度が上がるほど、溶け出すのが早くなりました。

Dicolla CB, Evans JL, Hainly LL, Celtruda SL, Brown BD, Anantheswaran RC / ペンシルベニア州立大学 食品科学科・菓子会社の技術センター(2019)[1]

暑さに強いミルクチョコ6種類と、ふつうのミルクチョコを、温度と湿度を調えた部屋で評価した。24℃は店で売られ食べられるふつうの温度、29℃は扱える上限、38℃は暑い夏の日や熱帯を想定した。指で押した硬さ、割れる音、歯で噛んだ硬さ、舌で溶け出すまでの時間など13項目を、基準の食品で目盛りを合わせた点数で付けた。

対象: 2〜10年の経験がある訓練された評価者7人 / 限界: 下の数字は、評価の基準にした試作のミルクチョコ(ふつうのミルクチョコにグリセリンを4%加え、暑さに強くしたもの。どの項目も中くらいの値だったため基準に選ばれた)の点数。研究の一部は菓子会社の支援で、評価者もその会社の技術センターの人。

「舌で溶け出すまでの時間」は、チョコを舌で転がしたり押しつけたりしたとき、溶け始めるまでの長さを表す点数です[1]。秒数ではなく、基準の食品と比べた点数です。24℃での基準は、ホイップしたバターが0.6、ふつうのミルクチョコが4.5、ダークチョコが6.2でした。ダークチョコはミルクチョコより溶け出すのに時間がかかる、と評価者たちが目盛りを合わせていたことになります。

論文の序論では、チョコは室温(20〜23.5℃)では固く、体温(約37℃)ではすべて溶けるものとして説明されています[1]。この研究の目的は暑い国でも形が崩れにくいチョコを作ることで、ふつうのチョコと比べながら、温度でどう変わるかを細かく記録しました。

02 わかった数字何℃で溶け始め、何℃で溶けきる?

機械の測定では、カカオバターは15℃前後から少しずつ溶け始め、35〜36℃ですべて溶けました。人の試食では、チョコを24℃から29℃にするだけで、舌で溶け出すまでの点数が5.9から3.7に下がりました。

35〜36℃3つの産地のカカオバターがすべて溶けた温度(機械の測定)[2]
約30.0〜34.5℃チョコの中のふつうの結晶(V型)が溶ける範囲(総説の表)[3]
5.9→3.7→1.8舌で溶け出すまでの点数(24℃→29℃→38℃、基準のミルクチョコ)[1]
12.7→4.7→1.9パキッと割れる強さの点数(同じ温度と試料)[1]
項目(基準のミルクチョコ)24℃29℃38℃
舌で溶け出すまでの時間5.93.71.8
パキッと割れる強さ12.74.71.9
舌で押したときの硬さ15.012.52.1
指へのくっつき0.85.810.6

出典: Dicolla ら 2019 の表5。点数は基準の食品で目盛りを合わせたもので、秒数や重さではない。

機械で測った溶け方 トルコのチュクロバ大学の Ozdemir らは、エクアドル・ガーナ・コートジボワールのカカオから取ったカカオバターを、温度を少しずつ上げながら熱の出入りで測りました[2]。溶け始めはエクアドル産が14.24℃、ガーナ産が15.46℃、コートジボワール産が15.04℃で、どれも35〜36℃ですべて溶けました。この測り方では、いったん溶かして急に冷やした状態から温めるので、テンパリングしたチョコの結晶とは同じではありません。

口の温度に近いV型 カナダのゲルフ大学の Stobbs らの総説では、チョコの中で目指す結晶(V型)の溶ける範囲は約30.0〜34.5℃とされています[3]。体温より少し低いので、口の中では溶け、手で持つ短い時間なら形を保ちやすい、という説明です。テンパリングの温度との関係はテンパリングは何度で何をしている?へ。

口の中の温度は一定ではありません。ノッティンガム大学の研究で、凍ったカスタードを食べたときの舌の表面は27.1℃、温かいものでは37.3℃でした[4]。冷えたチョコを口に入れた直後は、舌もいっしょに冷えて、溶け出すまで時間がかかると考えられます。食べる温度と甘さの関係は冷やして食べるか常温か?にまとめています。

03 開発への使い方製品の溶け方は、試作と評価でどう確かめる?

機械で溶け始めと溶けきりの温度を測り、訓練した評価者に、置く温度を変えたチョコを点数で評価してもらう、の2本立てにします。研究と同じように、売り場のふつうの温度・扱える上限・暑い流通を想定した温度で並べると、暑さへの強さと口どけの釣り合いが見えます。

1

配合・工程: 暑さへの対策は、その条件だけを変えて口どけと比べる

Dicolla らの研究の目的は暑さに強いミルクチョコで、ふつうのものと、暑さ対策をした試作6種類を比べました[1]。暑さへの対策を入れるときは、その条件だけを変えた試作と元の配合を並べ、溶け出しまでの点数と割れの強さがどう変わるかを見ます。

目安 元の配合と試作を同じ日に評価

2

評価: 機械の溶け方と、温度を変えた官能評価を組む

機械では、温度を少しずつ上げて熱の出入りを測り、溶け始めと溶けきりの温度を出します[2]。人の評価は、研究のように24℃・29℃・38℃の部屋に置いた試料を、基準の食品で目盛りを合わせた点数で付けます[1]。評価の人数はチョコの官能評価は何人に頼めばいい?にまとめています。

目安 試料は評価の前に決めた温度で30分以上置く

3

品質管理・表示: 売り場と流通の温度を、評価の結果と結ぶ

基準のミルクチョコでは、29℃に置くだけで割れる強さの点数が12.7から4.7に下がりました[1]。売り場・配送の温度の上限と、保存方法の書き方は、この評価の結果と保存試験から決めます。冷えたまま食べると舌も冷えて溶け出しが遅れると考えられるので、試食や提供の温度をそろえます(冷やして食べるか常温か?)。日本の食品表示法での保存方法の書き方は、この記事では原典を確かめていません。

目安 夏の前に、流通の温度で評価をやり直す

試食の数字は訓練された7人による、グリセリン入りの試作のミルクチョコ1種類の点数で、機械の測定はカカオバターだけです[1][2]。自社の配合・形・包装とは条件が違うので、温度ごとの点数は自社の製品で取り直します。溶け出しの早さが「もう一度食べたくなる」につながるかは確かめられていないので、好き度は別に評価します。社内の試食記録には食べ比べノートも使えます。

04 まだわからないこと口の中で何秒で溶けるかは、わかっている?

温度ごとの秒数はわかっていません。食べる人の口の中で、チョコが何秒でどれだけ溶けるかを、チョコの温度を変えて測った研究は、今回の調べでは見つかりませんでした。

  • 試食の数字は、評価の基準にした、グリセリン入りの試作のミルクチョコの点数です。ふつうのチョコで同じ点数になるかはわかりません。研究の一部は菓子会社の支援です。
  • 機械の測定はカカオバターだけで、砂糖や粉乳の入ったチョコの溶け方とは同じではありません。
  • 20回噛んだあとに約7〜8割が溶けていたという研究はありますが(口どけの速さで香りの感じ方は変わる?)、温度との関係は調べられていません。
  • 溶け出しの早さが「おいしい」「また食べたい」とどう結びつくかは、確かめられていません。粒の大きさと口あたりはなめらかさは粒の大きさで決まる?で整理しています。

テンパリング温度ガイド研究一覧を見る

05よくある質問

チョコは何度で溶ける?

カカオバターだけを機械で測った研究では、15℃前後から少しずつ溶け始め、35〜36℃ですべて溶けました。チョコの中のふつうの結晶(V型)が溶ける範囲は約30.0〜34.5℃とされています。体温より少し低いため、口の中で溶けます。

夏にチョコが溶けやすいのはなぜ?

チョコの油の結晶は30℃前後から溶け始めるためです。訓練された7人の試食では、ミルクチョコを29℃に置くだけで、パキッと割れる強さの点数が24℃のときの12.7から4.7に下がり、38℃では指にくっつきやすくなりました。

ダークチョコとミルクチョコ、どちらが早く溶ける?

評価の基準では、ミルクチョコのほうが早く溶け出すとされていました。舌で溶け出すまでの点数は、24℃でふつうのミルクチョコが4.5、ダークチョコが6.2でした。中身によって違うので、自社の製品は同じ条件で評価して確かめます。

出典

  1. Dicolla CB, Evans JL, Hainly LL, Celtruda SL, Brown BD, Anantheswaran RC (2019). Descriptive sensory analysis of heat-resistant milk chocolates. Food Science & Nutrition, 7(9), 2806–2816. https://doi.org/10.1002/fsn3.1047
  2. Ozdemir O, Keskin-Cavdar H, Polat S, Unal MU (2026). Influence of Cocoa Liquor Origin on Cocoa Butter Composition and Color, Texture, and Rheological Properties of Milk and Dark Chocolates: A Preliminary Study. Food Science & Nutrition, 14(8), e72130. https://doi.org/10.1002/fsn3.72130
  3. Stobbs JA, Ghazani SM, Donnelly ME, Marangoni AG (2025). Chocolate Tempering: A Perspective. Crystal Growth & Design, 25(9), 2764–2783. https://doi.org/10.1021/acs.cgd.5c00269
  4. McNeill H, Ford R, Fisk I, Thibodeau M, Liu G, Doyennette M, Yang Q (2025). It tastes sweeter when melted: Exploring the impact of food temperature on tongue temperature and perceived sweetness/vanilla. Science Talks, 13, 100424. https://doi.org/10.1016/j.sctalk.2025.100424