冷やして食べるか常温か?38人の研究では、4℃の水で口を冷やすとダークチョコの甘さと好き度が下がった

夏は冷やして食べる人が増え、冷やして食べる前提の製品もあります。一方で、冷えたチョコは甘さや香りが弱く感じる、とも言われます。チョコそのものの温度を変えて食べ比べた研究は見つかりませんでしたが、「口の中を冷やすと、そのあとのチョコの感じ方がどう変わるか」を調べた研究はありました。試食の温度と口すすぎの水を決める人、食べる温度を想定して配合を決める人に向けて、舌の温度と甘さの研究とあわせて読みます。
結論
- 米国の研究で38人が4℃・20℃・50℃の水で5秒口をすすいでからダークチョコを食べると、4℃のあとだけ、甘さ・チョコの風味・クリーミーさが弱く感じられ、好き度も下がった。チーズでは変わらなかった。
- 英国の22人の研究では、温かいカスタードを食べたときは舌の表面が37.3℃、凍ったものでは27.1℃になり、甘さの評価は温かいほうが高かった。甘さを感じる仕組みは15〜35℃で温かいほど強く働くことが、マウスの実験で示されている。
- 冷蔵庫で冷やしたチョコと常温のチョコを、同じ人が食べ比べた研究は見つからなかった。冷えたチョコの感じ方は、ここからの推測にとどまる。
01 どんな研究か口を冷やすと、チョコの味は変わる?
変わりました。アーカンソー大学などの Mony らは、38人に冷たい水・室温の水・熱い湯で口をすすいでもらい、すぐあとにダークチョコを食べて、甘さや風味の強さと好き度を付けてもらいました。冷たい水のあとだけ、甘さも好き度も下がりました。
Mony P, Tokar T, Pang P, Fiegel A, Meullenet JF, Seo HS / アーカンソー大学(米国)ほか(2013)[1]
4℃・20℃・50℃の水で5秒口をすすいだあと、カカオ分70%のダークチョコとチェダーチーズを食べ、味や風味の強さと全体の好き度を付けた。チョコでは、4℃の水のあとに甘さ・チョコの風味・クリーミーさの強さが、20℃や50℃のあとより弱かった。好き度も4℃のあとで低かった。チーズでは、こうした変化は見られなかった。
対象: 北米の38人 / 限界: 変えたのは口をすすぐ水の温度で、チョコの温度ではない。人数が少なく、市販のダークチョコ1種類での結果。参加者の人数・カカオ分・苦みの結果は、業界紙の記事で確かめた。
この研究の出発点は、食事のときに飲む水の温度が国によって違うことでした[1]。北米では氷水を飲む人が多く、ヨーロッパでは常温の水、アジアでは温かいお茶が好まれます。著者らは、氷水を飲み慣れた北米の人が甘いものを好む理由の候補の1つとして、この結果を挙げています。
業界紙の記事によると、苦みの強さは水の温度で変わりませんでした。弱まったのは甘さ・風味・クリーミーさの3つでした。冷たい水のあとのチョコは、甘さが引いて苦みが相対的に目立つ味わいになっていた、と読めます。ただし論文はそこまで言っていません。
02 わかった数字舌の温度で、甘さはどれだけ変わる?
温かいものを食べると舌の表面は約37℃、凍ったものでは約27℃になり、甘さの評価は温かいほうが約1.5倍高くなりました。ただ、舌の温度と甘さの結びつきは弱いものでした。
舌の温度を測った研究 ノッティンガム大学の McNeill らは、22人にカスタードを温かい(約59℃)・室温(約24℃)・冷やした(約5℃)・凍った(約−3℃)の4通りで食べてもらい、赤外線カメラで舌の表面の温度を測りました[2]。温かいカスタードのときは舌が37.3℃で甘さの評価は20.5、凍ったときは27.1℃で13.3でした。舌の温度と甘さの相関は r = 0.234 と弱く、温度だけで甘さが決まるわけではありません。冷えた舌は、温まった舌より早く元の温度に戻りました。共著者に食品会社の研究所の所属者がいます。
甘さが温度で変わる仕組み ルーヴェン大学(ベルギー)の Talavera らは、舌で甘さなどを伝えるたんぱく質の1つ TRPM5 が、温度にとても敏感なことを示しました[3]。15〜35℃の間で温度を上げると、この働きが急に強まりました。マウスでは、同じ範囲で温度を上げると甘いものへの神経の反応が大きくなりました。人で「温かいと甘く感じる」理由の1つと考えられていますが、チョコで確かめたものではありません。
03 開発への使い方食べる温度を、試作と評価にどう入れる?
試食の試料温度と口すすぎの水の温度を決めてそろえること、そして買う人が食べる温度でも評価することです。冷たい水のあとだけ、ダークチョコの甘さと好き度が下がりました。
配合・工程: 想定する食べる温度で、甘さを確かめる
温かいものほど甘く評価され[2]、甘さを伝えるたんぱく質は15〜35℃で温かいほど強く働きました[3]。冷やして食べる前提の製品は、冷えた状態で甘さと好き度を評価し、常温での評価だけで砂糖の量を決めないようにします。チョコそのものの温度を変えた研究ではないので、試作で確かめる価値がある条件として扱います。甘さの配合の決め方は甘さはどこまでがちょうどいい?へ。
目安 想定温度(冷蔵・常温)の2条件で同じ試作を評価
評価: 口すすぎの水と試料の温度を固定する
Mony らの研究では、4℃の水で5秒すすいだあとだけ、甘さ・チョコの風味・クリーミーさと好き度が下がりました[1]。試食の間に冷たい水を出すと、試料の差より水の差が評価に出ます。口すすぎの水は室温にし、試料は同じ温度にそろえて記録します。冷蔵庫から出した試料は、結露しないよう袋のまま戻します。
目安 すすぎの水は室温、試料温度を毎回記録
品質管理・表示: 保存と食べる温度の案内を、評価した条件に合わせる
保存の温度は、ブルームや香りの変化にも関わります(チョコは冷蔵庫に入れていい?)。食べる温度を案内するなら、実際に評価した温度に合わせます。溶け方は温度で大きく変わるので(チョコは何℃で溶ける?)、流通と売り場の温度も管理の条件に入れます。保存方法の表示の決まりは、この記事では確かめていません。
目安 案内する温度で官能評価をした記録を残す
研究の条件は、北米の38人と市販のダークチョコ1種類、英国の22人とカスタード、細胞とマウスの実験です。自社の製品や買い手とは違うので、自社の試作と自社のパネルで確かめ直します。食べる温度と甘さの関係は、研究で直接確かめられてはいませんが、究極のチョコの条件の1つ「食べたあとにもう一度食べたくなる」に近づく手がかりになりえます。社内の試食記録には食べ比べノートも使えます。
04 まだわからないこと冷やしたチョコは、おいしくなくなる?
わかっていません。冷蔵庫で冷やしたチョコと常温のチョコを、同じ人が食べ比べて好き度を比べた研究は、今回の調べでは見つかりませんでした。
- 主役の研究で冷やしたのは口の中で、チョコの温度ではありません。冷えたチョコは溶けるのも遅くなるので、味の変化は別の理由でも起こりえます。
- 甘さと温度の研究は、カスタードや細胞・マウスでの結果が中心です。
- 夏の暑い日に冷えたチョコが「おいしい」と感じられるかどうかは、気温や体の状態も関わり、研究されていません。
- 香りの立ち方が食べる温度でどれだけ変わるかを、チョコで測った研究は見つかりませんでした。溶け方と香りの関係は口どけの速さで香りの感じ方は変わる?で整理しています。
05よくある質問
冷やして食べる製品は、甘さが弱く感じられる?
冷やしたチョコそのものを食べ比べた研究は見つかりませんでした。38人の研究では、4℃の水で口を冷やしてからダークチョコを食べると、甘さ・チョコの風味・クリーミーさが弱く感じられ、好き度も下がりました。冷えると甘さを弱く感じる可能性があるので、想定する温度で評価します。
試食の口すすぎの水は、何℃がいい?
最適な温度を決めた研究は見つかりませんでした。4℃の水で5秒口をすすいでからダークチョコを食べると、20℃や50℃の水のあとより、甘さと好き度が低くなりました。チーズでは差がありませんでした。北米の38人の結果です。冷たい水は避け、温度をそろえるのが安全です。
温かいと甘く感じるのはなぜ?
甘さを舌から伝えるたんぱく質の1つ TRPM5 が、15〜35℃の間では温度が上がるほど強く働くことが、細胞とマウスの実験で示されています。人でも、温かいカスタードは凍ったものより甘く評価されました。
出典
- Mony P, Tokar T, Pang P, Fiegel A, Meullenet JF, Seo HS (2013). Temperature of served water can modulate sensory perception and acceptance of food. Food Quality and Preference, 28(2), 449–455.(参加者数・カカオ分・苦みの結果は業界紙 https://www.confectionerynews.com/Article/2013/02/05/Why-do-Asians-eat-fewer-sweet-foods/ で確認) https://doi.org/10.1016/j.foodqual.2012.12.002
- McNeill H, Ford R, Fisk I, Thibodeau M, Liu G, Doyennette M, Yang Q (2025). It tastes sweeter when melted: Exploring the impact of food temperature on tongue temperature and perceived sweetness/vanilla. Science Talks, 13, 100424. https://doi.org/10.1016/j.sctalk.2025.100424
- Talavera K, Yasumatsu K, Voets T, Droogmans G, Shigemura N, Ninomiya Y, Margolskee RF, Nilius B (2005). Heat activation of TRPM5 underlies thermal sensitivity of sweet taste. Nature, 438, 1022–1025. https://doi.org/10.1038/nature04248


