感じ方

フェアトレードの表示で味の感じ方は変わる?同じチョコの食べ比べで、38人は表示のある方をおいしいと評価

約8分で読めます / 主役の研究: Enax et al. 2015

研究の確かさ ★★☆ 中論文5本と公正競争規約を照合
収穫したカカオの実
Photo: Aitokhuehi / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文と公的機関の資料をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

認証を受けたカカオに切り替えるとき、気になるのは「表示を付けると評価が変わるのか」です。ドイツのボン大学の実験では、まったく同じチョコでも、フェアトレードと聞かされた方がおいしいと評価されました。認証がよいかどうかは論じず、研究が測ったことだけを見ていきます。

結論

  1. ボン大学の Enax ら(2015)は、同じミルクチョコを2皿に分け、片方を「フェアトレード」、もう片方を「ふつうの生産」と伝えて38人に食べてもらった。おいしさ(7段階)の中央値は6対5、味の強さは5.5対5で、表示のある方が高かった。
  2. Lotz ら(2013)の3つの研究でも、フェアトレードの表示があると味がよいと評価された。前もって「表示で味は変わらない」と答えた人でも、表示のあるチョコを高く評価した。
  3. 表示の効き目は、倫理的な買い物を大事にする人で強く出た研究がある。味の評価が実際に買い続けることにつながるかは、どの研究でも測られていない。

01 どんな研究か同じチョコを、どう食べ比べてもらった?

Enax らは、40人に脳の画像を撮りながら食品の写真に値を付けてもらったあと、チョコの試食をしてもらいました。2皿のチョコは同じ市販のミルクチョコで、伝えた生産のしかただけが違いました。試食の答えがそろった38人を分析しています。

Enax L, Krapp V, Piehl A, Weber B / ボン大学 経済学と神経科学センターほか(2015)[1]

食べる前の期待と、食べたあとのおいしさ・味の強さを7段階で答えてもらった。同じチョコなのに、フェアトレードと伝えた方が、おいしさも味の強さも高く評価された。写真に値を付ける課題でも、フェアトレードの印がある食品の方に高い値が付いた。

対象: 19〜33歳の40人(女性21人)。試食の分析は38人。市販のミルクチョコ1種を4つに切り分けて2皿に / 限界: 1回の実験で人数は少ない。表示なしの皿と比べたので、色のついた印が目立つこと自体の影響と分けられていないと著者らは書いている。資金はドイツの公的な研究助成で、利益相反はないと記載。

試食の手順はこうです[1]。まず片方の皿について、どのくらい味が強く、おいしいと思うかを答えます。食べてから、感じた味の強さとおいしさを答え、水で口をすすいで、もう片方で同じことをくり返します。どちらを先に食べるかは人ごとに入れ替えました。参加者には、2皿が同じチョコだとは知らせていません。

脳の画像では、フェアトレードの印がある食品に値を付けるとき、報酬や注目に関わる場所の働きが強まっていました。この記事では、開発に関わる試食の結果だけを扱います。

02 わかった数字表示で、評価はどれだけ変わった?

同じチョコで、おいしさの中央値は表示ありが6、なしが5でした(7段階、38人)。食べる前の期待では、味の強さには差が出ましたが、おいしさの差ははっきりしませんでした。

6 対 5食べたあとのおいしさの中央値。フェアトレードと伝えた皿と、ふつうと伝えた皿(7段階)[1]
5.5 対 5食べたあとの味の強さの中央値(同じ比べ方)[1]
38人試食の分析に使った人数。2皿は同じミルクチョコ [1]
3つの研究コーヒー1つ・チョコ2つ。どれも表示のある方が味がよいと評価された [2]
聞いたこと表示あり表示なし差
食べる前の味の強さの期待65あり
食べる前のおいしさの期待65はっきりしない
食べたあとの味の強さ5.55あり
食べたあとのおいしさ65あり

38人の中央値(1=まったくない〜7=とても)。Enax ら 2015 の表5から。

面白いのは、期待と実際の評価の結びつきです[1]。ふつうと伝えた皿では、期待が高い人ほど食べたあとの評価も高い関係が見られましたが、フェアトレードと伝えた皿では、その関係ははっきりしませんでした。表示の効き目は、単に「おいしそうに思った分だけ高くなった」だけでは説明しきれない、ということです。

Lotz らの研究では、チョコの2つの研究の参加者の多くが、前もって「倫理的な表示の商品の味は変わらない」と答えていました[2]。それでも、その人たちも表示のあるチョコをおいしいと評価しました。3つ目の研究では、食べたときのよい気分がこの差をつないでいる可能性が示されています。

Bratanova ら(2015)の4つの研究は、倫理的な食品を食べる満足感が味の期待を上げ、それが実際の味の評価と買いたい気持ちを上げる、という流れを示しました[3]。この流れは、産地や生産のしかたに関わる価値観を大事にする人で主に見られました。一方、スウェーデンの Sörqvist ら(2015)では、環境ラベルの効き目は食品によって違い、水では味の評価は変わりませんでした[4]。

03 開発への使い方認証の原料に替えるとき、評価をどう組む?

認証の表示は、同じ中身でも味の評価を上げることがあります。配合の判断は表示を伏せた評価で行い、表示の効き目は同じ品に表示だけ変えて別に測ります。表示が約束するのは取引のしかたで、味ではないことを前提に組みます。

1

原料の切り替えは、表示を伏せて新旧を比べる

認証のカカオに替えると、豆の産地や発酵・焙煎の条件も変わりえます。まず表示を伏せて、旧原料と新原料の試作の味を比べます。表示を見せると、中身の差と表示の差が混ざってしまいます。豆による味の違いは産地や品種でチョコの味は変わる?へ。

目安 新旧2品、記号だけ付けて評価

2

表示の効き目は、同じ品に表示だけ変えて測る

Enax らと同じく、同じチョコを2皿に分け、表示だけを変えて出します。順番は人ごとに入れ替えます。倫理的な買い物を大事にするかを先に聞いておくと、効き目がどんな人に出るかもわかります。人数の考え方はチョコの官能評価は何人に頼めばいい?へ。

目安 期待と食べたあとの評価を、同じ7段階で

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表示で中身以上に見せず、割合と根拠を持っておく

規約では、特定の原産地のものや有機農産物など特色のある原材料を使った旨を書くとき、その割合を書くと決まっています(第4条第4項)。有機と書くなら有機JASに従います。認証の表示がこの条項に当たるかは条文だけでは判断できないので、公正取引協議会に確かめます。フェアトレードと書くと低カロリーと受け取られた研究もあり [5]、健康の印象と混ざらないかも見ておきます。

目安 表示の案ごとに、規約の条項を確認

研究はヨーロッパの少人数の実験が中心で、自社の製品や想定する買い手とは条件が違います。表示で味の評価を上げることを狙うのではなく、評価のときに外す条件、買う人の期待と中身をずらさないための知識として使ってください。健康のように受け取られる表示の扱いは「高カカオ=体にいい」と表示していい?に、産地の表示の研究は産地の表示を見るとチョコはおいしく感じる?にまとめています。

04 まだわからないこと認証の表示の研究で、わかっていないことは?

チョコで認証の表示を調べた試食研究は少なく、どれも1回の試食でした。表示の効き目が何度食べても続くか、実際に買い続けることにつながるかはわかっていません。

  • 何度も食べたあとでも、表示による評価の差が続くかを調べた研究は見つかりませんでした。
  • 実際の売り場で、認証の表示が買い直しを増やすかは測られていません。研究が測ったのはその場の評価と、払ってよい金額までです。
  • 日本の買い手で同じ結果になるかは確かめられていません。研究はヨーロッパの参加者です。
  • Enax らの研究では、表示なしの皿と比べたので、目立つ印そのものの影響と、フェアトレードという意味の影響を分けられていません。
  • Lotz らの研究は要旨で照合し、点数や人数は確かめていません。

テンパリング温度ガイド研究一覧を見る

05よくある質問

フェアトレードのチョコはおいしいの?

中身の味がよいかは研究では確かめられていません。ボン大学の Enax ら(2015)の実験では、同じミルクチョコでも、フェアトレードと伝えた方が38人においしく味が強いと評価されました。表示が評価を動かした結果で、中身の差ではありません。

表示で味が変わると知っていても、評価は上がる?

Lotz ら(2013)のチョコの研究では、参加者の多くが前もって「倫理的な表示で味は変わらない」と答えていましたが、その人たちも表示のあるチョコを高く評価しました。

認証の表示を包装に書くときのルールは?

チョコレート類の表示に関する公正競争規約には、認証マークそのものを定めた条文は見当たりませんでした。特定の原産地や有機など特色のある原材料を使った旨を書くときは、その割合を書くと決まっています(第4条第4項)。当てはまるかは全国チョコレート業公正取引協議会に確かめてください。

出典

  1. Enax L, Krapp V, Piehl A, Weber B (2015). Effects of social sustainability signaling on neural valuation signals and taste-experience of food products. Frontiers in Behavioral Neuroscience, 9, 247. https://doi.org/10.3389/fnbeh.2015.00247
  2. Lotz S, Christandl F, Fetchenhauer D (2013). What is fair is good: Evidence of consumers’ taste for fairness. Food Quality and Preference, 30(2), 139–144. https://doi.org/10.1016/j.foodqual.2013.05.010
  3. Bratanova B, Vauclair CM, Kervyn N, Schumann S, Wood R, Klein O (2015). Savouring morality. Moral satisfaction renders food of ethical origin subjectively tastier. Appetite, 91, 137–149. https://doi.org/10.1016/j.appet.2015.04.006
  4. Sörqvist P, Haga A, Langeborg L, Holmgren M, Wallinder M, Nöstl A, Seager PB, Marsh JE (2015). The green halo: Mechanisms and limits of the eco-label effect. Food Quality and Preference, 43, 1–9. https://doi.org/10.1016/j.foodqual.2015.02.001
  5. Schuldt JP, Muller D, Schwarz N (2012). The “fair trade” effect: Health halos from social ethics claims. Social Psychological and Personality Science, 3(5), 581–589. https://doi.org/10.1177/1948550611431643
  6. 全国チョコレート業公正取引協議会. チョコレート類の表示に関する公正競争規約・同施行規則(令和6年10月1日施行の変更を含む版). 一般社団法人 全国公正取引協議会連合会 掲載. https://www.jfftc.org/DATA/Kiyaku_pdf/e01_H_choco.pdf