もう一度買いたくなるチョコは何で決まる?75人の試食では、包みより味の好き度が購入意向と結びついた

新しいチョコを出すとき、包みのデザインや「カカオ分」「産地」の表示に力が入ります。でも、買った人が次も同じチョコを買うかどうかは、何で決まるのでしょうか。食べる人に点数を付けてもらう研究(官能評価)では、包みより味の好き度のほうが、買いたい気持ちと強く結びついていました。中身と包みのどちらに開発の手間をかけるかを決める人に向けて、何がわかっているかを整理します。
結論
- メルボルン大学の75人の実験では、包みの好き度より味の好き度のほうが、購入意向と強く結びついていた。包みが約束した味と中身が違うと、食べたあとの好き度は下がった。
- スペインのダークチョコの研究では、好き度の差は主に風味の好き嫌いから生まれた。銘柄を伏せて食べると、カカオ分の高いチョコは好まれにくく、高い銘柄と店の独自品は同じくらい好まれた。
- 何度も買い続けるかを、実際の購入で追った研究は今回見つからなかった。研究が測ったのは、その場の「買いたい気持ち」までである。
01 どんな研究かチョコを買いたい気持ちは、味と包みのどちらで決まる?
味のほうが強く効いていました。メルボルン大学の Gunaratne らは、同じダークチョコを6種類の包みに入れ、75人に味の好き度と購入意向を付けてもらいました。購入意向とのつながりは、味のほうがずっと強く出ました。
Gunaratne NM, Fuentes S, Gunaratne TM ほか / メルボルン大学 農学・食品学部(2019)[1]
3つの条件で同じチョコを評価してもらった。①包みなしで食べる、②包みだけを見る、③包みを見ながら食べる。包みは「大胆」「楽しい」「普段用」「特別」「健康」「高級」の6種類を新しく作った。どの包みでも、中身は同じ普通のダークチョコだった。購入意向を味の好き度と包みの好き度で説明すると、味の好き度の係数が大きかった。
対象: 消費者75人、1cm角のダークチョコ / 限界: 1回の試食での点数で、実際に買ったかは測っていない。包みは架空の新しい銘柄。研究はオーストラリア政府の研究評議会の資金で行われた。
包みと中身が合わないときの結果も出ています。包みには「唐辛子入り」「グミ入り」「ミルクチョコ」「ベリーやナッツ入り」と書かれていても、中身は普通のダークチョコでした。包みで生まれた期待が満たされないと、③で食べたあとの好き度が下がりました[1]。
同じチョコなのに、包みが好きな人ほど味も好きと答える傾向もありました。包みの好き度と味の好き度の相関は、包みによって r = 0.28〜0.59 でした[1]。見た目が味の感じ方を引っぱる、ということです。
02 わかった数字好き度は、購入意向とどれくらい結びつく?
0〜100点の味の好き度が1点上がると、0〜100点の購入意向は約0.73点上がる計算でした。包みの好き度では約0.03点でした。カカオ分の高さや表示は、思ったほど好き度を上げていませんでした。
表示の効き方. スペインのビック大学の Torres-Moreno らは、6種類のダークチョコを109人に評価してもらいました[2]。高い銘柄と店の独自品、普通・単一産地・カカオ分の高いものの組み合わせです。銘柄を伏せて食べると、好き度の差は種類から生まれ、カカオ分の高いものが好まれにくくなりました。表示だけを見ると、好き度は主に銘柄で決まりました。店の独自品は期待が低かったのに、食べると高い銘柄と同じくらい好まれました。「カカオ分が高い」「単一産地」の表示は、普通のダークチョコより期待を上げませんでした。
好き度を分けるもの. 同じ研究グループは、ガーナ産とエクアドル産の豆と、焙煎・練りの時間を変えたダークチョコを95人に評価してもらいました[3]。全体の好き度の差は、主に風味の好き嫌いから生まれていました。ガーナ産では焙煎が長いと好き度が下がり、エクアドル産では変わりませんでした。産地と焙煎の話は産地や品種でチョコの味は変わる?と焙煎の温度と時間でチョコの香りは変わる?で整理しています。
苦さの許せる量は人で違う. ペンシルベニア州立大学の Harwood らは、チョコアイスに苦味のある食品添加物を足していきました[4]。ミルクチョコが好きな人の組は、少しの苦味で足していないほうを選びました。ダークチョコが好きな人の組は、ほぼ2倍の量まで許せました。板チョコではなくアイスでの結果です。カカオ分と苦さはカカオ分が高いほど苦い?にまとめています。
03 開発への使い方「また買いたい」を試作の評価にどう入れる?
包みを外した試食で味の好き度と購入意向を測り、包みを見たときの期待とのずれも測ることです。研究では、購入意向を動かしていたのは包みより味でした。
配合・工程: 風味を決める条件を1つずつ動かす
好き度の差は主に風味の好き嫌いから生まれ、豆の産地によっては焙煎が長いと好き度が下がりました[3]。焙煎時間・練りの時間・カカオ分のうち1つだけを変えた試作を並べ、好き度の差を見ます。苦さの許せる量は、ダーク好きとミルク好きで約2倍違ったので[4]、狙う買い手の好みでパネルを分けます。
目安 1条件2〜3段階。ほかの条件は固定
評価: 包みなし・包みだけ・包みあり、の3条件で測る
Gunaratne らと同じく、①包みなしで食べる、②包みだけを見る、③包みを見ながら食べる、の3条件で、好き度と購入意向を0〜100点で付けてもらいます[1]。①で味の力を、②と③の差で期待と中身のずれを見られます。銘柄を伏せた評価と表示を見せた評価も分けます[2]。
目安 試料は1cm角程度。条件ごとに別の回にする
品質管理・表示: 包みが約束する味と中身をそろえる
包みが約束した味と中身が違うと、食べたあとの好き度は下がりました[1]。包みの言葉や絵は中身の風味どおりにし、「カカオ分が高い」「単一産地」の表示に期待を上げる力を頼りにしません[2]。量産ではロット間の風味のぶれが好き度を動かすので、官能評価の基準品を決めて定期的に比べます。
目安 基準品との比較をロットごと、または月1回
研究の条件は、オーストラリアの消費者75人とスペインの109人・95人で、1回の試食の点数です。自社の買い手や売り場とは違い、実際にまた買ったかも測っていないので、試作の段階で使う目安にとどめます。食べたあとに「もう一度食べたい」と思うかは別の問いで、もう一度食べたくなるチョコは何が違う?で扱っています。贈答用の箱の研究は箱の色や重さで味の感じ方は変わる?へ。社内の試食記録には食べ比べノートも使えます。
04 まだわからないこと「また買う」チョコは研究でどこまでわかっている?
その場での好き度と「買いたい気持ち」の関係はわかってきています。しかし、実際に何度も買い続けるかを追った研究は、今回見つかりませんでした。
- 研究が測ったのは、試食のその場の購入意向です。実際に店でまた買ったかを追った研究は見つかりませんでした。
- 味の好き度と購入意向の結びつきは、オーストラリアの75人、1種類のダークチョコでの結果です。ミルクチョコや日本の買い手で同じかはわかりません。
- 口どけ・甘さ・香りなど、どの特性が購入意向を一番動かすかを、チョコで比べた研究は今回読めた範囲では見つかりませんでした。
- 苦味の許せる量の研究はチョコアイスで、板チョコの数字ではありません。
- 値段が「また買う」をどう変えるかは、今回の研究では調べられていません。
05よくある質問
購入意向は、包みと味のどちらで決まる?
メルボルン大学の75人の実験では、購入意向とのつながりは、包みの好き度より味の好き度のほうがずっと強く出ました。包みが約束した味と中身が違うと、食べたあとの好き度が下がりました。
銘柄の強さで、食べたときの好き度は変わる?
スペインの109人の研究では、表示だけを見ると高い銘柄の期待が高くなりました。しかし店の独自品も、銘柄を伏せて食べると高い銘柄と同じくらい好まれました。表示による期待と、食べたときの好き度は別のものとして測ります。
カカオ分が高いチョコほど好まれる?
研究では逆でした。銘柄を伏せて食べると、カカオ分の高いダークチョコは好まれにくくなりました。「カカオ分が高い」という表示も、期待を上げませんでした。ただし、苦味をどこまで許せるかは人によって違います。
出典
- Gunaratne NM, Fuentes S, Gunaratne TM, Torrico DD, Francis C, Ashman H, Gonzalez Viejo C, Dunshea FR (2019). Effects of packaging design on sensory liking and willingness to purchase: A study using novel chocolate packaging. Heliyon, 5(6), e01696. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2019.e01696
- Torres-Moreno M, Tarrega A, Torrescasana E, Blanch C (2012). Influence of label information on dark chocolate acceptability. Appetite, 58(2), 665–671. https://doi.org/10.1016/j.appet.2011.12.005
- Torres-Moreno M, Tarrega A, Costell E, Blanch C (2012). Dark chocolate acceptability: influence of cocoa origin and processing conditions. Journal of the Science of Food and Agriculture, 92(2), 404–411. https://doi.org/10.1002/jsfa.4592
- Harwood ML, Loquasto JR, Roberts RF, Ziegler GR, Hayes JE (2013). Explaining tolerance for bitterness in chocolate ice cream using solid chocolate preferences. Journal of Dairy Science, 96(8), 4938–4944. https://doi.org/10.3168/jds.2013-6715


