感じ方

もう一度買いたくなるチョコは何で決まる?75人の試食では、包みより味の好き度が購入意向と結びついた

約8分で読めます / 主役の研究: Gunaratne ら 2019(メルボルン大学)

研究の確かさ ★★☆ 中論文4本を照合
アーモンド入りの板チョコ
Photo: Jebulon / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

新しいチョコを出すとき、包みのデザインや「カカオ分」「産地」の表示に力が入ります。でも、買った人が次も同じチョコを買うかどうかは、何で決まるのでしょうか。食べる人に点数を付けてもらう研究(官能評価)では、包みより味の好き度のほうが、買いたい気持ちと強く結びついていました。中身と包みのどちらに開発の手間をかけるかを決める人に向けて、何がわかっているかを整理します。

結論

  1. メルボルン大学の75人の実験では、包みの好き度より味の好き度のほうが、購入意向と強く結びついていた。包みが約束した味と中身が違うと、食べたあとの好き度は下がった。
  2. スペインのダークチョコの研究では、好き度の差は主に風味の好き嫌いから生まれた。銘柄を伏せて食べると、カカオ分の高いチョコは好まれにくく、高い銘柄と店の独自品は同じくらい好まれた。
  3. 何度も買い続けるかを、実際の購入で追った研究は今回見つからなかった。研究が測ったのは、その場の「買いたい気持ち」までである。

01 どんな研究かチョコを買いたい気持ちは、味と包みのどちらで決まる?

味のほうが強く効いていました。メルボルン大学の Gunaratne らは、同じダークチョコを6種類の包みに入れ、75人に味の好き度と購入意向を付けてもらいました。購入意向とのつながりは、味のほうがずっと強く出ました。

Gunaratne NM, Fuentes S, Gunaratne TM ほか / メルボルン大学 農学・食品学部(2019)[1]

3つの条件で同じチョコを評価してもらった。①包みなしで食べる、②包みだけを見る、③包みを見ながら食べる。包みは「大胆」「楽しい」「普段用」「特別」「健康」「高級」の6種類を新しく作った。どの包みでも、中身は同じ普通のダークチョコだった。購入意向を味の好き度と包みの好き度で説明すると、味の好き度の係数が大きかった。

対象: 消費者75人、1cm角のダークチョコ / 限界: 1回の試食での点数で、実際に買ったかは測っていない。包みは架空の新しい銘柄。研究はオーストラリア政府の研究評議会の資金で行われた。

包みと中身が合わないときの結果も出ています。包みには「唐辛子入り」「グミ入り」「ミルクチョコ」「ベリーやナッツ入り」と書かれていても、中身は普通のダークチョコでした。包みで生まれた期待が満たされないと、③で食べたあとの好き度が下がりました[1]。

同じチョコなのに、包みが好きな人ほど味も好きと答える傾向もありました。包みの好き度と味の好き度の相関は、包みによって r = 0.28〜0.59 でした[1]。見た目が味の感じ方を引っぱる、ということです。

02 わかった数字好き度は、購入意向とどれくらい結びつく?

0〜100点の味の好き度が1点上がると、0〜100点の購入意向は約0.73点上がる計算でした。包みの好き度では約0.03点でした。カカオ分の高さや表示は、思ったほど好き度を上げていませんでした。

0.73味の好き度1点あたりの購入意向の上がり方(0〜100点どうし、75人、Gunaratne ら 2019)
0.03包みの好き度1点あたりの購入意向の上がり方(同じ研究)
109人6種類のダークチョコを、銘柄を伏せて・表示だけ見て・表示を見て食べて評価(Torres-Moreno ら 2012)
約2倍ダーク好きの人が、ミルク好きの人より許せた苦味の量(チョコアイスでの実験、Harwood ら 2013)

表示の効き方. スペインのビック大学の Torres-Moreno らは、6種類のダークチョコを109人に評価してもらいました[2]。高い銘柄と店の独自品、普通・単一産地・カカオ分の高いものの組み合わせです。銘柄を伏せて食べると、好き度の差は種類から生まれ、カカオ分の高いものが好まれにくくなりました。表示だけを見ると、好き度は主に銘柄で決まりました。店の独自品は期待が低かったのに、食べると高い銘柄と同じくらい好まれました。「カカオ分が高い」「単一産地」の表示は、普通のダークチョコより期待を上げませんでした。

好き度を分けるもの. 同じ研究グループは、ガーナ産とエクアドル産の豆と、焙煎・練りの時間を変えたダークチョコを95人に評価してもらいました[3]。全体の好き度の差は、主に風味の好き嫌いから生まれていました。ガーナ産では焙煎が長いと好き度が下がり、エクアドル産では変わりませんでした。産地と焙煎の話は産地や品種でチョコの味は変わる?と焙煎の温度と時間でチョコの香りは変わる?で整理しています。

苦さの許せる量は人で違う. ペンシルベニア州立大学の Harwood らは、チョコアイスに苦味のある食品添加物を足していきました[4]。ミルクチョコが好きな人の組は、少しの苦味で足していないほうを選びました。ダークチョコが好きな人の組は、ほぼ2倍の量まで許せました。板チョコではなくアイスでの結果です。カカオ分と苦さはカカオ分が高いほど苦い?にまとめています。

03 開発への使い方「また買いたい」を試作の評価にどう入れる?

包みを外した試食で味の好き度と購入意向を測り、包みを見たときの期待とのずれも測ることです。研究では、購入意向を動かしていたのは包みより味でした。

1

配合・工程: 風味を決める条件を1つずつ動かす

好き度の差は主に風味の好き嫌いから生まれ、豆の産地によっては焙煎が長いと好き度が下がりました[3]。焙煎時間・練りの時間・カカオ分のうち1つだけを変えた試作を並べ、好き度の差を見ます。苦さの許せる量は、ダーク好きとミルク好きで約2倍違ったので[4]、狙う買い手の好みでパネルを分けます。

目安 1条件2〜3段階。ほかの条件は固定

2

評価: 包みなし・包みだけ・包みあり、の3条件で測る

Gunaratne らと同じく、①包みなしで食べる、②包みだけを見る、③包みを見ながら食べる、の3条件で、好き度と購入意向を0〜100点で付けてもらいます[1]。①で味の力を、②と③の差で期待と中身のずれを見られます。銘柄を伏せた評価と表示を見せた評価も分けます[2]。

目安 試料は1cm角程度。条件ごとに別の回にする

3

品質管理・表示: 包みが約束する味と中身をそろえる

包みが約束した味と中身が違うと、食べたあとの好き度は下がりました[1]。包みの言葉や絵は中身の風味どおりにし、「カカオ分が高い」「単一産地」の表示に期待を上げる力を頼りにしません[2]。量産ではロット間の風味のぶれが好き度を動かすので、官能評価の基準品を決めて定期的に比べます。

目安 基準品との比較をロットごと、または月1回

研究の条件は、オーストラリアの消費者75人とスペインの109人・95人で、1回の試食の点数です。自社の買い手や売り場とは違い、実際にまた買ったかも測っていないので、試作の段階で使う目安にとどめます。食べたあとに「もう一度食べたい」と思うかは別の問いで、もう一度食べたくなるチョコは何が違う?で扱っています。贈答用の箱の研究は箱の色や重さで味の感じ方は変わる?へ。社内の試食記録には食べ比べノートも使えます。

04 まだわからないこと「また買う」チョコは研究でどこまでわかっている?

その場での好き度と「買いたい気持ち」の関係はわかってきています。しかし、実際に何度も買い続けるかを追った研究は、今回見つかりませんでした。

  • 研究が測ったのは、試食のその場の購入意向です。実際に店でまた買ったかを追った研究は見つかりませんでした。
  • 味の好き度と購入意向の結びつきは、オーストラリアの75人、1種類のダークチョコでの結果です。ミルクチョコや日本の買い手で同じかはわかりません。
  • 口どけ・甘さ・香りなど、どの特性が購入意向を一番動かすかを、チョコで比べた研究は今回読めた範囲では見つかりませんでした。
  • 苦味の許せる量の研究はチョコアイスで、板チョコの数字ではありません。
  • 値段が「また買う」をどう変えるかは、今回の研究では調べられていません。

テンパリング温度ガイド研究一覧を見る

05よくある質問

購入意向は、包みと味のどちらで決まる?

メルボルン大学の75人の実験では、購入意向とのつながりは、包みの好き度より味の好き度のほうがずっと強く出ました。包みが約束した味と中身が違うと、食べたあとの好き度が下がりました。

銘柄の強さで、食べたときの好き度は変わる?

スペインの109人の研究では、表示だけを見ると高い銘柄の期待が高くなりました。しかし店の独自品も、銘柄を伏せて食べると高い銘柄と同じくらい好まれました。表示による期待と、食べたときの好き度は別のものとして測ります。

カカオ分が高いチョコほど好まれる?

研究では逆でした。銘柄を伏せて食べると、カカオ分の高いダークチョコは好まれにくくなりました。「カカオ分が高い」という表示も、期待を上げませんでした。ただし、苦味をどこまで許せるかは人によって違います。

出典

  1. Gunaratne NM, Fuentes S, Gunaratne TM, Torrico DD, Francis C, Ashman H, Gonzalez Viejo C, Dunshea FR (2019). Effects of packaging design on sensory liking and willingness to purchase: A study using novel chocolate packaging. Heliyon, 5(6), e01696. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2019.e01696
  2. Torres-Moreno M, Tarrega A, Torrescasana E, Blanch C (2012). Influence of label information on dark chocolate acceptability. Appetite, 58(2), 665–671. https://doi.org/10.1016/j.appet.2011.12.005
  3. Torres-Moreno M, Tarrega A, Costell E, Blanch C (2012). Dark chocolate acceptability: influence of cocoa origin and processing conditions. Journal of the Science of Food and Agriculture, 92(2), 404–411. https://doi.org/10.1002/jsfa.4592
  4. Harwood ML, Loquasto JR, Roberts RF, Ziegler GR, Hayes JE (2013). Explaining tolerance for bitterness in chocolate ice cream using solid chocolate preferences. Journal of Dairy Science, 96(8), 4938–4944. https://doi.org/10.3168/jds.2013-6715