感じ方

箱の色や重さで味の感じ方は変わる?学生78人の実験では、箱が50g重いと味が濃いと評価された

約6分で読めます / 主役の研究: Kampfer et al. 2017

研究の確かさ ★★☆ 中論文4本を照合
包み紙に包まれたハート形のチョコ
Photo: F_A from Ostwestfalen, Germany / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文と公的機関の資料をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

中身が同じチョコでも、箱が変わると味の評価は変わるのでしょうか。研究で確かめると、箱の重さは「味の濃さ」の評価を変えました。一方で、箱の色を変えて実際に食べてもらった研究では、好みの差は出ませんでした。試作の評価や包装の検討で、包装がどこまで評価に混ざるのかを整理します。

結論

  1. ドイツのバンベルク大学などのチームが、チョコの箱に見えないおもりを入れて50g重くすると、学生78人の評価で味の濃さが7段階で4.74から5.46に上がった。
  2. 「おいしい」という評価は、重さで直接は変わらなかった。ただ、味が濃いと感じた人ほど評価が高く、もう1個食べたい気持ちや払ってよい金額も上がる、という間接の流れが統計で示された。
  3. 米国の36人の研究では、箱の色(白と紫)で好みは変わらず、部屋にチョコの香りを足すとかえって好みが下がった。開発では、中身の評価は包装の条件をそろえて行い、包装は買う人の期待と中身がずれないかを確かめる対象として扱う。

01 どんな研究か箱の重さだけを変えて、何を確かめた?

ドイツのバンベルク大学とオックスフォード大学などのチームが、見た目も手触りも同じチョコの箱に鉛のおもりを隠して入れ、重い箱と軽い箱で、同じチョコの味の評価が変わるかを学生78人で比べました。

Kampfer K, Leischnig A, Ivens BS, Spence C / バンベルク大学、ロンドン大学クイーン・メアリー校、オックスフォード大学(2017)[1]

箱の重さ(184gと234g)だけを変えた。重い箱から食べた人は、チョコの味を「濃い」と評価した。おいしさの評価そのものは重さで直接は変わらなかったが、「濃い」と感じたことを通じて、もう1個食べたい気持ちと払ってよい金額が上がる流れが示された。

対象: 大学生78人(女性62%、平均23.8歳)。1粒10gのチョコ12粒入りの箱。1人は重い箱か軽い箱のどちらか一方だけを試した / 限界: 1回の試食で、国も1つ。払ってよい金額は答えた金額で、実際に買ったかではない。

参加者は箱を利き手で持ち、30秒ほど眺めて手になじませてから、箱を開けて1粒食べました[1]。おもりは箱の中敷きの裏に貼られ、粒の数も見た目も同じです。

どのくらい重くするかは、事前に30人で試して決めています。30g足した箱は16.67%の人が重さの順を間違えたため、全員が正しく見分けられた50g(約27%増し)が選ばれました[1]。「気づけるが目立たない」差です。同じチームは缶入りの飲み物でも試し、重い缶のほうが味が濃いと評価されました。

この研究は特定の研究費を受けておらず、著者らは利益相反はないと書いています。

02 わかった数字包装で変わったのは、どの評価?

箱の重さで変わったのは「味の濃さ」でした。箱の色では好みは変わらず、香りを足すと好みは下がりました。包装のつやは、店頭の試食で味の評価を下げる側に働きました。

4.74 → 5.46軽い箱と重い箱で、味の濃さの評価(7段階、学生78人)
+50g重い箱に足したおもり。184gの箱が234gに(約27%増し)
差なし白と紫の箱で、同じチョコの好み(36人の試食)
5.07 対 5.92つやのある包装と、つや消しの包装で、試食後の味の評価(7段階、店頭の178人)

米国のベントレー大学などのチームは、色・手触り・開け方・香りを組み合わせた箱を作りました[2]。中身はすべて同じ海塩キャラメル入りのダークチョコ1粒です。36人が6種類の箱を開けて食べました。箱の色(白と紫)・手触り・開け方では、チョコの好みに差は出ませんでした。開け方の違いでは、箱の魅力や予想価格の評価が変わりました。

意外だったのは香りです。部屋にチョコの香りを吹きつけた組は、高級感と買いたい気持ちは上がったのに、チョコの好み(7段階)は下がりました。95%信頼区間は、香りなしの組が4.95〜6.05、香りありの組が4.03〜5.14です。「もう1個食べたい」気持ちも下がりました[2]。著者らは、刺激が多すぎてかえって快さが落ちた可能性を挙げています。

京都橘大学の調査では、大学生250人に9色のうち1色のチョコの箱の絵を見せました[4]。茶色の箱はおいしそうと感じられやすく、青は高級感や風味を、白と赤はなじみ深さを感じさせて、買いたい気持ちを高めたと報告されています。ただし、これは食べていない「見た目の印象」の調査です。

ベルギーのゲント大学の店頭での研究では、同じチョコをつやのある包装とつや消しの包装で並べました[3]。つやのある包装は「脂肪が多そう」と思われ、試食後の味の評価も低くなりました。つやの話はつやのあるチョコはおいしそうに見える?で詳しく書いています。

03 開発への使い方包装の効き目を、評価でどう外し、どう確かめる?

箱の重さや香りは、中身が同じでも評価を動かすことがあります。配合の評価では包装をそろえるか外し、包装の評価では「見た・持った印象」と「食べた後の評価」を分けて取ります。包装で中身を濃く見せる使い方はしません。

1

配合の比較は、同じ包装か包装なしで行う

ある試作だけ本番の箱、別の試作は簡易の袋、という出し方をすると、重さや見た目の差が「味の濃さ」の評価に混ざります。箱の重さだけで濃さの評価が4.74から5.46に動いた研究があります。

目安 全試作で同じ容器、または皿に出して記号だけ付ける

2

包装の評価は、食べる前と食べた後を別の項目で取る

包装の候補を比べるときは、見た・持った段階の印象(高級感・予想価格・買いたい気持ち)と、食べた後の好み・もう1個食べたい気持ちを分けて聞きます。「濃さ」と「おいしさ」も別の項目にします。見ただけの調査で出た色の効果は、食べた研究では出ませんでした。値段の情報の扱い方は値段が高いとチョコはおいしく感じる?へ。

目安 包装の候補ごとに、食べる前と後で1回ずつ

3

包装が作る期待と、中身の味をずらさない

重い箱は味が濃いと期待させ、払ってよい金額も上げる流れが示されました。箱を重くして濃く感じさせる手は勧めません。包装を変えたら、食べた後の評価が包装の印象に見合うかを確かめます。部屋に香りを足した組では好みと「もう1個」が下がったので、香りの強い資材や売り場でチョコの香りが混ざらないかも確認項目に入れます。チョコ自体の香りはチョコの香りは何でできている?で読めます。

目安 包装資材を変えるたびに、においと試食で確認

研究はドイツの大学生78人が1回試食したものや、米国の36人を6組に分けた小さな実験で、自社の製品・買い手・売り場とは条件が違います。研究で「もう1個食べたい」と強く結びついていたのは、包装ではなく中身の味でした。もう一度買いたくなる気持ちと味の関係はもう一度買いたくなるチョコは何で決まる?にまとめています。

04 まだわからないこと包装の効果は、どこまで確かめられている?

箱の重さとチョコの味を調べたのは、今回の調べでは1つのチームの1回の実験だけでした。日本で同じ結果になるかは確かめられていません。

  • 箱の重さの研究はドイツの大学生78人の1回だけです。くり返し確かめた研究は見つかりませんでした。
  • 色の効果は、見ただけの調査では出ましたが、食べた研究では出ませんでした。どちらが日常に近いかは決められません。
  • 香りの研究は36人を6人ずつに分けた小さな実験で、香りは箱でなく部屋に吹きつけたものです。
  • 店頭のつやの研究は、時間帯で包装を入れ替えた準実験で、無作為の割り付けではありません。
  • 実際にもう一度買ったかどうかは、どの研究も測っていません。

テンパリング温度ガイド研究一覧を見る

05よくある質問

箱が重いとチョコはおいしく感じる?

ドイツの学生78人の実験では、同じチョコでも箱を50g重くすると「味が濃い」と評価されました(7段階で4.74から5.46)。「おいしい」という評価は重さで直接は変わらず、濃いと感じたことを通じて間接に上がる流れが示されました。試作の評価では、包装の重さをそろえておくと配合の差を見やすくなります。

チョコの箱は何色がいい?

大学生250人に箱の絵を見せた調査では、茶色はおいしそう、青は高級感、白と赤はなじみ深さを感じさせました。ただし実際に食べた米国の研究では、白と紫の箱で好みに差はありませんでした。食べる前の印象と、食べたあとの評価は分けて考える必要があります。

包装や売り場にチョコの香りを足すと評価は上がる?

米国の36人の研究では、部屋にチョコの香りを足すと高級感と買いたい気持ちは上がりましたが、チョコの好みと「もう1個食べたい」気持ちは下がりました。香りを足せばよいとはいえません。