焙煎が強いほどおいしい?砂糖なしチョコ145人の試食では強めが好まれたが、豆によっては逆だった

深く焙煎した豆ほど香ばしく、おいしいチョコになる。焙煎の条件を決めるとき、そう考えて強めに振りたくなることがあります。食べる人に評価してもらった研究を見ると、答えは「豆と条件による」でした。米国の145人の試食では、砂糖を入れないチョコは強めの焙煎ほど好まれました。一方、スペインの95人の試食では、ガーナ産の豆だけは長い焙煎で好まれなくなりました。
結論
- McClureら(2022)は、3産地の豆を24〜171℃・0〜80分の範囲で焙煎し、砂糖なしのチョコを145人に食べてもらった。好まれたのは171℃20分・135℃80分・151℃54分などの強めの焙煎で、生や弱い焙煎は好まれなかった。
- ただし砂糖なしのため、好き度の平均は9段階の3.2〜3.7(「やや嫌い」より下)だった。スペインの95人の試食では、ガーナ産の豆は長い焙煎で好まれなくなり、エクアドル産の豆では差がなかった。
- 強い焙煎では焦げのにおいの成分もできる。豆の分析では、焦げ臭く苦い成分が出たのは170℃40分と190℃だけだった。どこまで強くしてよいかは、豆と配合ごとに確かめるしかない。
01 どんな研究か何人が、どんな焙煎のチョコを食べた?
McClureら(2022)は、マダガスカル・ガーナ・ペルー産の豆を、温度と時間を組み合わせた9通りで焙煎しました。合わせて27種類の砂糖なしのチョコを、チョコをよく食べる145人に食べてもらい、好き度と苦み・酸味・渋みの強さを付けてもらいました。
McClure AP ほか / チョコ製造会社・ペンシルベニア州立大学・ミズーリ大学(2022)[1]
強めの焙煎ほど苦み・酸味・渋みが下がり、好き度が上がった。最も好まれたのは171℃20分、135℃80分、151℃54分。生(24℃0分)や弱い焙煎(105℃11分、64℃55分)のチョコは最も好まれなかった。
対象: 月1回以上チョコを食べる18〜65歳の145人(うち男性38人)。0.3gほどの小さな円盤を口に入れて評価 / 限界: 砂糖・カカオバターを足さない「カカオ100%」のチョコだけ。花や果物のような香りは評価していない。
好き度は9段階(1が「とても嫌い」、9が「とても好き」)で付けてもらいました。平均はガーナ産3.7、ペルー産3.4、マダガスカル産3.2で、どれも「かなり嫌い」と「やや嫌い」の間でした[1]。砂糖が入っていないので、低いのは予想どおりだと著者らは書いています。
それでも焙煎の効き方ははっきりしていました。とくにガーナ産の豆は、焙煎の条件によって「受け入れられる」と答えた人の割合が30%未満から70%超まで動きました[1]。著者らは、好き度を上げるという目的では、生や弱い焙煎の豆を使う根拠はないとまとめています。
この研究の第一著者はチョコ製造会社の社員で、豆は2つのチョコ会社が提供しました。研究費は菓子製造業者の団体が出しています(団体は研究の設計や分析に関わっていないと書かれています)。
02 わかった数字強い焙煎は、どこまでよくて、どこから悪い?
砂糖なしのチョコでは、試した範囲で強めの焙煎ほど好まれました。ただ、別の豆の分析では、170℃40分と190℃で焦げ臭い成分が出ました。ダークチョコの試食では、豆によって長い焙煎が裏目に出ました。
焦げの成分 ペンシルベニア州立大学のStanleyらは、ドミニカ共和国産の豆を100〜190℃・10〜40分で焙煎し、香りの成分を測りました[3]。カラメルやココアのようなピラジンは、焙煎を強めるほど増えました。一方、焦げ臭く苦い味のフルフリルアルコールは、170℃40分と190℃の焙煎でだけ見つかりました。ゴムや玉ねぎのようなにおいのジメチルトリスルフィドは、150℃30分以上で見つかりました。人が食べた試験ではなく、成分の測定だけの結果です。
豆による違い スペインのヴィック大学のTorres-Morenoらは、ガーナ産とエクアドル産の豆で、焙煎の時間と練る時間を変えてダークチョコを作り、95人に評価してもらいました[2]。チョコの配合と焙煎の時間は、要旨では確かめられていません。長い焙煎は、ガーナ産のチョコでは好まれる度合いを下げ、エクアドル産では影響がありませんでした。多くの人がこの傾向でしたが、違いを細かく見分ける人のグループは、産地ごとに特定の焙煎と練る時間の組み合わせを好みました。
渋みの多い豆 マレーシアのMisnawiらは、120℃で15〜45分焙煎したカカオマスを、訓練された8人で評価しました[4]。ポリフェノールが1kgあたり58〜143gの試料では、焙煎を長くするほどチョコらしい風味が強くなりました。170gと多い試料では逆に弱くなりました。
03 開発への使い方焙煎の強さの上限を、どう決める?
温度を決めて時間を3段階以上に振り、製品と同じ配合(砂糖入り)のチョコにして比べることです。強いほど良いと決めつけず、焦げのにおいの成分と官能評価の焦げが出たところを上限の候補にします。
配合・工程: 同じ豆を弱・中・強に振り、製品の配合で試作する
McClureらの好き度は砂糖なしのチョコでの結果で、砂糖を入れたチョコで同じとは限りません[1]。ガーナ産の豆では長い焙煎で好まれなくなり、エクアドル産では差がなかったので[2]、豆の産地ごとに別々に振ります。ポリフェノールの多い豆では、長い焙煎でチョコらしい風味が弱くなった例もあります[4]。
目安 温度は1つに固定、時間を3段階
評価: 好き度は消費者パネル、焦げは成分と訓練パネルで見る
好き度は、McClureらのように9段階の尺度で、チョコをよく食べる人に付けてもらいます(145人、1回0.3gほど[1])。焦げの上限は、フルフリルアルコール(170℃40分・190℃でだけ検出)やジメチルトリスルフィド(150℃30分以上で検出)を測る方法があります[3]。成分が出た条件で人が焦げを感じるかは研究で空いているので、訓練したパネルの「焦げ」の強さと並べて確かめます。
目安 試料は番号で伏せ、日を分けて評価
品質管理: 豆が変わったら上限を見直す
好まれる焙煎の強さは豆によって逆になったので[2]、豆の産地やロットを替えたら、焙煎の上限も試し直します。違いを細かく見分ける人のグループは、産地ごとに特定の焙煎と練る時間の組み合わせを好んだので[2]、狙う買い手によって基準を分けることも考えます。
目安 豆のロット・産地が変わるごと
研究の条件は、米国145人の砂糖なしチョコ、スペイン95人のダークチョコ、ドミニカ共和国産の豆の成分測定で、自社の豆・焙煎機・配合とは違うため、試作で確かめる価値がある範囲として使います。マレーシア産の豆で150℃30分の評価がよかった研究は焙煎の温度と時間でチョコの香りは変わる?、焙煎で香ばしさができる仕組みは焙煎するとなぜ香ばしくなる?で読めます。カカオ分と苦みの関係はカカオ分が高いほど苦い?へ。社内の試食記録には食べ比べノートも使えます。
04 まだわからないこと「強い焙煎ほどおいしい」は、どこまで言える?
言えるのは「砂糖なしのチョコでは、試した範囲で強めが好まれた」までです。ダークチョコの試食では豆によって逆になり、焦げが出始める強さを人の評価で確かめた研究は見つかりませんでした。
- McClureらの研究で最も強い条件は171℃20分でした。それより強い焙煎で好き度が下がり始める点は試されていません。著者らは、ガーナ産の最適はさらに外にあるかもしれないと書いています。
- 焦げの成分が出た条件(170℃40分・190℃)は成分の測定だけで、人が焦げを感じるかは確かめられていません。
- 研究によって豆・配合・練る時間が違い、焙煎の強さだけの効果を比べることはできません。
- 花や果物のような香りが強い豆で、強い焙煎がその香りを消してしまうかを、人の評価で確かめた研究は見つかりませんでした。
05よくある質問
カカオ豆は深く焙煎するほどおいしい?
砂糖なしのチョコを145人が食べた研究では、試した範囲(最高171℃)で強めの焙煎ほど好まれました。ただ、ダークチョコを95人が食べた研究では、ガーナ産の豆は長い焙煎で好まれなくなりました。豆と配合によって変わります。
焙煎しすぎると何が起きる?
ドミニカ共和国産の豆の分析では、焦げ臭く苦い成分のフルフリルアルコールが170℃40分と190℃の焙煎でだけ見つかりました。人が食べて確かめた結果ではありません。
生のカカオ(ローカカオ)のチョコはおいしい?
砂糖なしのチョコの試食では、生(焙煎なし)や弱い焙煎のチョコは最も好まれませんでした。苦み・酸味・渋みが強く残ったためと考えられています。
出典
- McClure AP, Hopfer H, Grün IU (2022). Optimizing consumer acceptability of 100% chocolate through roasting treatments and effects on bitterness and other important sensory characteristics. Current Research in Food Science, 5, 167–174. https://doi.org/10.1016/j.crfs.2022.01.005
- Torres-Moreno M, Tarrega A, Costell E, Blanch C (2012). Dark chocolate acceptability: influence of cocoa origin and processing conditions. Journal of the Science of Food and Agriculture, 92, 404–411. https://doi.org/10.1002/jsfa.4592
- Stanley TH, Van Buiten CB, Baker SA, Elias RJ, Anantheswaran RC, Lambert JD (2018). Impact of roasting on the flavan-3-ol composition, sensory-related chemistry, and in vitro pancreatic lipase inhibitory activity of cocoa beans. Food Chemistry, 255, 414–420. https://doi.org/10.1016/j.foodchem.2018.02.036
- Misnawi, Jinap S, Jamilah B, Nazamid S (2004). Sensory properties of cocoa liquor as affected by polyphenol concentration and duration of roasting. Food Quality and Preference, 15, 403–409. https://doi.org/10.1016/S0950-3293(03)00097-1


