カカオ分が高いほど苦い?市販ダークチョコの試食では、85%で苦みが目立った

高カカオのチョコは苦い、とよく言われます。カカオ分をどこに置くかは、配合を決めるときの最初の判断の1つです。英国の大学の試食では、85%のチョコで苦みが、36%のチョコで甘さが目立ち、85%は最も好まれませんでした。ただ、苦みをどこまで好むかは人で大きく違います。米国の大学の試験では、ダークチョコ好きの群は、ミルクチョコ好きの群の約2.6倍の苦み成分まで「足していない方がいい」と言いませんでした。
結論
- 英国のアバテイ大学のWagnerら(2023)が市販のダークチョコ36%・70%・85%を試食してもらうと、85%で苦み、36%で甘さが目立った。好まれたのは70%と36%で、85%は最も好まれなかった。
- ペンシルベニア州立大学のHarwoodら(2012)の試験では、苦み成分を足したチョコ風味の菓子を「足していない方がいい」と言われるまでの量が、ダーク好きの群でミルク好きの群の約2.58倍だった。
- 同じチームのチョコミルクの試験では、苦みに気づける最低の量は両群で同じだった。違うのは苦みを感じる力でなく、苦みを好むかどうかだと考えられる。カカオ分だけを細かく変えた研究は少ない。
01 どんな研究か苦みに強い人と弱い人は、どう比べた?
ペンシルベニア州立大学のHarwoodら(2012)は、85人に、苦み成分を少しずつ足したチョコ風味の菓子と足していない物を選んでもらい、どこから「足していない方がいい」と言われるかを、ミルク好きとダーク好きで比べました。
Harwood ML, Ziegler GR, Hayes JE / ペンシルベニア州立大学 感覚評価センター(2012)[1]
足していない方を選ぶ人がはっきり多くなる量(拒否の閾値)は、ダーク好きの群がミルク好きの群の約2.58倍だった(p=0.01)。かんで食べる派と口で溶かす派では、差は見られなかった(p=0.14)。
対象: 18〜45歳のチョコを食べる85人(男性22人)。ミルク好き43人・ダーク好き42人(自己申告)。試料はミルクチョコ風味のコーティング用菓子に、食品に使える苦み成分(ショ糖オクタアセテート)を加えたもの / 限界: カカオ分を変えたのではなく、苦み成分を足した試験。著者の1人はペンシルベニアの菓子製造業者の団体から資金を受けている。
「拒否の閾値」は、「どこまでなら気にならないか」を測る考え方です[1]。苦みに気づけるかではなく、苦みのせいで好みが逆転する所を探します。2つの試料を並べ、苦み成分を少しずつ増やしながら、どちらが好きかを選んでもらいます。
同じチームは、チョコミルクでも同じ試験をしています[2]。ダーク好きの拒否の閾値は、ミルク好きの約2.3倍でした。一方で、苦みに気づける最低の量(検出閾値)は、両群でほぼ同じでした。著者らは、苦みが好みに与える影響の違いは、苦みを感じ取る力の違いではないと考えています。
ただし、どの苦みでも同じとは限りません。同じチームは、発酵の浅い豆から作ったココアパウダーを増やした、セミスイートのチョコ風の菓子でも試しました[3]。99人(男性37人)が参加し、ミルク好き53人・ダーク好き46人でした。脂肪以外のカカオ分のうち80.7%をそのココアパウダーに置き換えた所で、全体の拒否の閾値に達しました。こちらでは、ミルク好きとダーク好きの差は見られませんでした(p=0.6235)。著者らは、カカオのポリフェノールが苦みと渋みを生み、発酵や焙煎がそれを減らすと説明しています。
02 わかった数字カカオ分を上げると、苦さと好みはどう変わる?
英国の大学の試食では、85%のチョコで苦み、36%で甘さが目立ち、好まれたのは70%と36%でした。苦みをどこまで許すかは、ダーク好きとミルク好きの群で約2〜3倍違いました。
英国のアバテイ大学のWagnerらは、訓練していない一般の人に、市販のダークチョコを食べてもらいました[4]。1つ目の試験では、36%と85%のチョコで、口の中で今いちばん目立つ感覚を、時間を追って選んでもらいました。85%では苦みが、36%では甘さが目立ちました。2つ目の試験では、36%・70%・85%を食べる間の顔の筋肉の動きを測りました。最も好まれたのは70%と36%、最も好まれなかったのは85%でした。
この研究で面白いのは、85%が好きな人の群と36%が好きな人の群とで、36%を食べたときの顔の動きが違ったことです[4]。好みは、全員がそろって同じ向きではありませんでした。なお、今回は原典の本文を開けず、参加者の人数は確かめられていません。
カカオ分は、チョコに入っているカカオ由来の原料の割合です。カカオ分が上がれば、そのぶん砂糖などほかの原料の割合は下がります。苦みが増えるのに加えて、甘さが減ることも、高カカオの「苦い」という印象に関わっていると考えられます(この点を分けて調べた研究は、今回見つかりませんでした)。
03 開発への使い方カカオ分と苦さを、配合と評価でどう扱う?
カカオ分は苦さの目安になりますが、苦さは豆の発酵や焙煎でも変わり、苦みをどこまで好むかは買い手の群で大きく違いました。配合はカカオ分と豆の条件を分けて試し、評価は苦さ・甘さ・好みを別に取り、狙う買い手に近いパネルで確かめます。
カカオ分と、豆の条件を分けて変える
カカオ分を上げると砂糖などの割合が下がるので、苦みが増えたのか甘さが減ったのかが混ざります。豆を固定してカカオ分だけを変える試作と、カカオ分を固定して豆や発酵・焙煎を変える試作を分けます。発酵の浅い豆のココアに置き換えた試験では、80.7%で好みが逆転しました。豆の発酵は発酵しないとチョコの香りは出ない?、焙煎は焙煎の温度と時間でチョコの香りは変わる?へ。
目安 1回の試作で変える条件は1つ
苦さ・甘さ・好みを別の尺度で取り、ミルク好きとダーク好きで分けて集計する
苦みを許す量は群で約2.3〜2.6倍違い、苦みに気づける量は同じでした。訓練したパネルが付ける苦さの強さと、一般の買い手の好みは別の結果として扱います。研究のように、2つの試料を並べて苦みを少しずつ増やし、好みが逆転する所(拒否の閾値)を探す方法は、苦さの上限を決める手がかりになります。
目安 パネルを自己申告のミルク好き・ダーク好きに分ける
カカオ分の表示が作る期待と、中身の苦さをそろえる
スペインの研究では、カカオ85%は表示だけでは期待されたのに、食べると評価が大きく下がりました(産地の表示を見るとチョコはおいしく感じる?)。表示の数字が伝える苦さと、中身がずれないかを確かめます。同じカカオ分でも豆のロットで苦さが変わりうるので、ロットごとに苦さを確かめます。カカオ分の表示のきまり(食品表示法や、チョコレート類の表示に関する公正競争規約)は、この記事では原典を確かめていません。
目安 豆のロットが変わるたびに、基準品と並べて苦さを比べる
Harwoodらの試験は米国の大学の周りの18〜45歳が対象で、カカオ分ではなく苦み成分を足した菓子、Wagnerらは市販品どうしの比較です。自社の配合・豆・買い手とは条件が違います。香りの成分はチョコの香りは何でできている?、もう一度食べたくなる理由はチョコがやめられないのは依存?で整理しています。
04 まだわからないことカカオ分と苦さの関係は、どこまで確かめられている?
カカオ分だけを細かく変えて、苦さと好みを測った研究は、今回の調べではあまり見つかりませんでした。市販品の比較では、カカオ分以外の違いも混ざっています。
- Wagnerらは市販品を使っていて、産地・焙煎・配合などカカオ分以外の条件も違います。カカオ分だけの効果とは言えません。
- 同じカカオ分でも、カカオマスとカカオバターの割合で苦さは変わると考えられますが、確かめた研究は見つかりませんでした。
- Harwoodらの試験は、米国の大学の周りの18〜45歳で、好みは自己申告です。日本の人や子ども・高齢の人で同じかはわかりません。
- 苦みを好むかどうかが、慣れで変わるのか、生まれつきなのかは、今回の研究からはわかりません。
05よくある質問
カカオ分が高いチョコほど苦い?
英国の大学で市販のダークチョコを食べ比べた研究では、85%で苦みが、36%で甘さが目立ちました。ただし市販品の比較で、カカオ分以外の条件も違います。発酵の浅い豆のココアで苦みが増えるという研究もあり、カカオ分だけで苦さが決まるとは言えません。
高カカオが苦手な人は、苦みに敏感なの?
そうとは限りません。米国の大学のチョコミルクの試験では、苦みに気づける最低の量はミルク好きとダーク好きで同じでした。違ったのは、苦みをどこまで許せるかで、ダーク好きは約2.3倍まで許しました。試食パネルは、好みの群を分けて集計すると違いが見えます。
ダークチョコ好きとミルクチョコ好きでは何が違う?
苦み成分を足したチョコ風味の菓子の試験では、ダーク好きの人はミルク好きの人の約2.58倍の量まで、足していない方を選びませんでした。ただし発酵の浅い豆のココアを増やした試験では、両群に差は見られませんでした。
出典
- Harwood ML, Ziegler GR, Hayes JE 2012. Rejection thresholds in solid chocolate-flavored compound coating. Journal of Food Science, 77, S390–S393.
- Harwood ML, Ziegler GR, Hayes JE 2012. Rejection thresholds in chocolate milk: Evidence for segmentation. Food Quality and Preference, 26, 128–133.
- Harwood ML, Ziegler GR, Hayes JE 2013. Tolerance for high flavanol cocoa powder in semisweet chocolate. Nutrients, 5, 2258–2267.
- Wagner J, Wilkin JD, Szymkowiak A, Grigor J 2023. Sensory and affective response to chocolate differing in cocoa content: A TDS and facial electromyography approach. Physiology & Behavior, 270, 114308.


