産地の表示を見るとチョコはおいしく感じる?スペイン109人の試食では、単一産地の表示は期待を上げなかった

「エクアドル産カカオだけを使用」のような産地の表示は、買う人の期待をどこまで動かすのでしょうか。スペインの研究で確かめると、産地の表示は、ふつうのダークチョコより期待を上げませんでした。期待を大きく動かしたのはブランドの表示で、カカオ分の表示では期待と食べた評価が大きくずれました。表示と味の関係を、研究の数字で見ていきます。
結論
- スペインのビック大学のチームが、ダークチョコ6種を109人に、何も知らせずに食べる・表示だけ見る・表示を見て食べるの3通りで評価してもらった。「エクアドル産カカオだけ」という表示は、ふつうのダークチョコより期待を上げなかった。
- 表示だけを見たときの期待を動かしたのはブランドで、プレミアムブランドの表示は期待を上げた。カカオ85%の表示は、表示だけの期待(6.46)がふつうのダーク(6.87)を上回らず、食べると評価がさらに大きく下がった(9段階で6.46から4.06)。
- 作り手の話(ストーリー)をチョコで直接調べた研究は見つからなかった。著者らは、期待と味のずれが③もう一度買いたくなる気持ちに関わると考えているが、実際に買い直したかは測られていない。
01 どんな研究か表示を見せる・見せないで、何を比べた?
スペインのビック大学のチームが、市販のダークチョコ6種を、何も知らせずに食べる、包装の表示だけを見る、表示を見ながら食べるの3通りで、ふだんダークチョコを食べる109人に評価してもらいました。
Torres-Moreno M, Tarrega A, Torrescasana E, Blanch C / ビック大学 食品科学研究グループ(2012)[1]
6種は、高価格帯のプレミアムブランドと店のプライベートブランドの2つ×種類3つ(ふつうのダークチョコ、エクアドル産カカオだけのもの、カカオ85%のもの)。産地とカカオ分の表示は、ふつうのダークチョコより期待を上げなかった。表示だけを見たときの期待は、主にブランドで決まった。
対象: ふだんダークチョコを食べる18〜70歳の109人(女性60%)。好みは9段階、買いたい気持ちは5段階で評価。何も知らせない試食の1か月後に、表示を見る・表示を見て食べる回を行った / 限界: スペインの1地域。産地はエクアドル1つだけで、ブランドの違いと一緒に変わっている。
チョコは1cm角に切り、白い皿で15〜20℃で出されました[1]。口直しには水とクラッカー。順番による偏りが出ないよう、出す順番は統計的に組み合わせを決めてあります。
1回目は、何も知らせずに食べます(ブラインド)。2回目は1か月後で、まず包装の写真だけを見て「どのくらい好きそうか」を答え、そのあと包装と一緒に食べて答えました。3つの点数を比べると、表示が期待をどう動かし、味の評価にどこまで残るかがわかります。
02 わかった数字産地の表示で、点数はどう変わった?
エクアドル産の表示は、ふつうのダークチョコと同じくらいの期待しか生みませんでした。店のブランドのエクアドル産は、表示を見て食べると、何も知らずに食べたときより評価が下がりました。
| チョコ | 表示だけ | 何も知らず食べる | 表示を見て食べる |
|---|---|---|---|
| プレミアム・ふつう | 6.87 | 6.78 | 7.12 |
| プレミアム・エクアドル産 | 6.59 | 6.87 | 7.05 |
| プレミアム・カカオ85% | 6.46 | 4.06 | 4.37 |
| 店・ふつう | 5.19 | 6.59 | 6.45 |
| 店・エクアドル産 | 5.16 | 6.61 | 6.14 |
| 店・カカオ85% | 5.48 | 3.83 | 3.86 |
109人の好みの平均(9段階、1=とても嫌い、9=とても好き)。論文の表2から。
何も知らずに食べると、ブランドによる差はほとんどなく、店のブランドのチョコもプレミアムブランドと同じくらい好まれました[1]。表示だけを見ると、店のブランドは期待が低くなりました。表示を見て食べたときの評価が、何も知らずに食べたときと統計的に違ったのは、店のブランドのエクアドル産だけです(0.47点下がった)。著者らは、表示の印象に味の評価が引き寄せられたと解釈しています。
カカオ85%は、表示だけの期待もふつうのダークを上回らず、食べるとさらに大きく評価が下がりました。著者らは、こうしたチョコは最初は手に取られても、味が期待に届かないので1回しか買われないかもしれない、と考えています。カカオ分と苦さの話はカカオ分が高いほど苦い?へ。
チョコ以外では、表示が味そのものの感じ方を変えた例もあります。スウェーデンの研究では、同じコーヒーを2杯出し、片方を「環境にやさしい」と伝えると、その杯のほうが好まれ、払ってよい金額も上がりました[2]。とくに、環境に配慮した買い物を大事にする人で強く出ました。米国のチョコレートミルクの研究では、脂肪分の表示とブランドが好みと買いたい気持ちに影響しましたが、有機の表示は買う判断に影響しませんでした[3]。
03 開発への使い方表示の効き目を、評価でどう分ける?
表示を見て食べると、評価が表示の印象に引き寄せられたチョコがありました。配合の評価は表示を伏せて行い、表示の効き目は「表示だけ」「表示を見て食べる」を別に測ると、期待と中身のずれが見えます。
産地を変えた試作は、産地名を伏せて比べる
産地や品種の違う豆で試作を比べるときは、産地名を伝えず記号で出します。この研究では、何も知らずに食べるとブランドの差もほとんど出ませんでした。産地で味がどこまで変わるかは産地や品種でチョコの味は変わる?で整理しています。
目安 同じ大きさに切り、同じ温度で出す(研究は1cm角・15〜20℃)
研究と同じ3通りで評価を組む
何も知らせずに食べる回と、包装の表示だけを見て期待を答える回、表示を見ながら食べる回を分けます。「表示だけの期待」と「何も知らずに食べた評価」の差が大きい試作は、表示が中身と違う期待を作っています。出す順番は人ごとに組み合わせを変えます。
目安 何も知らせない回と表示の回は日をあける(研究は1か月)
表示で期待を上げるより、表示と中身をそろえる
カカオ85%は表示だけで6.46、何も知らずに食べると4.06でした。著者らは、期待に味が届かないと1回しか買われないかもしれないと考えています。表示は、中身の味が想像できる書き方になっているかを確かめます。産地やカカオ分の表示のきまり(食品表示法や、チョコレート類の表示に関する公正競争規約)は、この記事では原典を確かめていないので、表示を決めるときはそれぞれの原典で確認してください。
目安 表示の案ごとに「表示だけの期待」と試食の点数を並べる
研究はスペインの1地域で、ふだんダークチョコを食べる109人が市販品6種を評価したもので、産地はエクアドル1つだけ、しかもブランドの違いと一緒に変わっています。自社の製品・買い手とは条件が違うので、自社の評価で確かめる価値がある条件として使ってください。値段の情報の扱い方は値段が高いとチョコはおいしく感じる?、もう一度買いたくなる気持ちと味の関係はもう一度買いたくなるチョコは何で決まる?にまとめています。
04 まだわからないこと産地や作り手の話の効果は、どこまでわかっている?
作り手の話(ストーリー)を聞かせてチョコの味の評価が変わるかを、直接調べた研究は今回の調べでは見つかりませんでした。産地の表示の研究も、チョコでは少数です。
- 作り手の話や作り方の物語を添えて、チョコの好みが変わるかを調べた研究は見つかりませんでした。
- 産地の表示はエクアドルの1例だけで、ブランドの違いと一緒に変わっています。ほかの産地の名前で同じになるかは不明です。
- この研究はスペインの消費者で、日本で同じ結果になるかは確かめられていません。
- コーヒーの「環境にやさしい」表示の効果が、チョコの産地や公正な取引の表示にも当てはまるかは不明です。
- 実際にもう一度買ったかどうかは測られていません。買いたい気持ちは答えた点数です。
05よくある質問
単一産地(シングルオリジン)のチョコはおいしく感じる?
スペインの109人の試食研究では、「エクアドル産カカオだけ」という表示は、ふつうのダークチョコより期待を上げませんでした。何も知らずに食べたときの好みも、ふつうのダークチョコとほぼ同じでした。産地1つだけの研究なので、ほかの産地でも同じかはわかっていません。
ブランドの表示で味は変わる?
同じ研究では、表示だけを見たときの期待は主にブランドで決まりました。一方、何も知らずに食べると、店のプライベートブランドもプレミアムブランドと同じくらい好まれました。表示を見て食べたときに評価が変わったのは6種のうち1種だけでした。
カカオ85%と書いてあるとおいしそうに見える?
表示だけでは9段階で6.46と期待されましたが、何も知らずに食べると4.06まで下がり、表示を見て食べても4.37でした。著者らは、期待に味が届かないと、1回しか買われないかもしれないと考えています。
出典
- Torres-Moreno M, Tarrega A, Torrescasana E, Blanch C 2012. Influence of label information on dark chocolate acceptability. Appetite, 58(2), 665–671.
- Sörqvist P, Hedblom D, Holmgren M, Haga A, Langeborg L, Nöstl A, Kågström J 2013. Who needs cream and sugar when there is eco-labeling? Taste and willingness to pay for “eco-friendly” coffee. PLoS ONE, 8(12), e80719.
- Kim MK, Lopetcharat K, Drake MA 2013. Influence of packaging information on consumer liking of chocolate milk. Journal of Dairy Science, 96(8), 4843–4856.


