値段が高いとチョコはおいしく感じる?学生79人のチョコバー試食では、値段でおいしさの評価は変わらなかった

新しいチョコの試食会や値付けの検討で、値段の情報は味の評価を動かすのでしょうか。チョコバーで値段を知らせて試食した研究では、おいしさの評価は値段で変わらず、動いたのは買いたい気持ちでした。一方、同じワインに違う値段を付けた研究では、好ましさの評価が変わりました。食べ物とやり方で結果が分かれるので、評価のときは値段を外して測るのが安全です。
結論
- フィンランドの学生79人がチョコバーを食べた研究では、値段を知らせても、おいしさ(好ましさ)の評価は変わらなかった。値段が高いほど、買いたい気持ちと食べたい頻度は下がった。
- 同じワインに3ユーロ・6ユーロ・18ユーロと付けて飲んでもらった研究では、値段が好ましさを変えた。その差は、高い値段で上がるより、安い値段で下がることで生まれていた。
- 値段や表示を見ると「こういう味だろう」と期待が生まれ、その期待が感じ方を変えることがある。チョコでどんな条件のときに起きるかは、ほとんど調べられていない。開発では、味の評価は値段を伏せて取り、値段を見せた購入意向は別に測ると、配合の差と値段の効き目を分けられる。
01 どんな研究かチョコに値段を知らせると、おいしさの評価は変わる?
変わりませんでした。Di Monaco らは、フィンランドの学生79人にチョコバー3種類を、まず何も知らせずに、次に値段を知らせて食べてもらい、おいしさの評価と買いたい気持ちを比べました。
Di Monaco R, Ollila S, Tuorila H(2005)[1]
ふつうのチョコバー1種と、機能性の材料を加えた2種を、最初は何も知らせずに評価した。次に、40人のグループには健康の表示と値段を、39人のグループには値段だけを見せて評価した。値段も健康の表示も、おいしさの評価は変えなかった。値段が上がるほど、買いたい気持ちと、食べたい頻度は下がった。
対象: フィンランドの学生79人。チョコバー3種 / 限界: 学生だけで、人数は少ない。先に何も知らせずに食べてから値段を知らせる順番だった。値段の段階や金額は要旨で確かめられなかった。
値段は、買いたい気持ちに大きく効きました[1]。女性のほうが、男性より値段の影響を強く受けました。値段だけを見せたグループでは、チョコバーへの関心の高さも、買いたい気持ちを左右しました。別に行った6人のグループインタビューでは、チョコに健康の話はあまり関係がないかもしれない、という意見が出ています。
著者らは、値段と健康の表示は、このチョコバーへの好き嫌いを変えられなかったとまとめています。つまりこの研究では、値段は「味の感じ方」ではなく「買うかどうか」に効いていました。
02 わかった数字値段が味を変えた研究は、どれくらい変わった?
チョコバーでは変わりませんでした。同じワインに値段だけ変えて付けたドイツの研究では、3ユーロと聞くと、何も知らせない時より好ましさが下がりました。18ユーロでは、ほとんど上がりませんでした。
| 研究 | 食べ物 | やり方 | おいしさへの値段の影響 |
|---|---|---|---|
| Di Monaco ら 2005 [1] | チョコバー | 何も知らせず食べた後、値段を知らせて評価 | 変わらなかった(買いたい気持ちは下がった) |
| Plassmann ら 2008 [3] | ワイン | 違うと信じさせた同じワインを、違う値段で | 値段が高いほど好ましさが上がった |
| Schmidt ら 2017 [2] | ワイン | 同じ値段のワイン3種に、3・6・18ユーロの表示 | 主に安い表示で好ましさが下がった |
食べ物もやり方も違うので、数字どうしは比べられない。
ワインの研究 Plassmann らは、脳の働きを調べる装置(fMRI)の中でワインを飲んでもらいました[3]。実際には同じワインを、違うワインで値段も違うと信じさせました。値段を高くすると、おいしさの評価と、好ましさにかかわる脳の部位の活動が上がりました。
ボン大学などの Schmidt らは、店で12ユーロの同じ値段のワイン3種に、3・6・18ユーロの表示を入れかえて付けました[2]。54人を集め、30人分を分析しました。1週間後に何も知らせずに飲んでもらった評価と比べると、値段の効き目は、高い表示で上がるより、安い表示で下がることで生まれていました。自分でお金を払うかどうかは、結果を変えませんでした。
期待のしくみ Fernqvist と Ekelund は、2003〜2012年の研究をまとめました[4]。食べる人が自分で確かめられない情報(健康・有機・産地・ブランド・作り方・倫理・料理名や材料の書き方の7つ)が期待を作り、その期待が感じる品質や味わいを変えることがある、と整理しています。値段も、味を予想させる手がかりの1つと考えられます。
03 開発への使い方値段の影響を、評価と値付けでどう扱う?
味の評価は値段を伏せて取り、値段を見せたあとの購入意向は別に測るのが、研究と同じ組み方です。チョコバーの研究で値段が動かしたのは味ではなく買いたい気持ちだったので、配合の判断と値付けの判断は分けて行います。
配合の良し悪しは、値段を伏せた評価で決める
試作どうしを比べるときは、想定売価や価格帯を伝えず、記号だけ付けて出します。値段を知らせると、ワインの研究のように安い表示で好ましさが下がる可能性があり、配合の差と区別できなくなります。
目安 試作2〜3種、記号は意味のない3桁の数字
「何も知らせない評価」と「売価を見せた評価」の2段階で組む
研究と同じく、まず何も知らせずにおいしさを評価し、次に想定売価を見せて、おいしさ・買いたい気持ち・食べたい頻度を別々の尺度で答えてもらいます。研究は先に知らせない順だけだったので、順番の影響を見たいなら、先に売価を見せる組も作ります。
目安 同じパネルで2回。尺度の段階数はそろえる
値段で中身以上に見せず、値段に見合う中身かを確かめる
高い値付けで味の評価を上げることは狙いません。チョコバーでは値段が上がるほど買いたい気持ちが下がりました。売価を見せた評価で購入意向が保てるかを見て、下がるなら中身か値付けを見直します。産地や作り手の表示の効き目は産地の表示を見るとチョコはおいしく感じる?で読めます。
目安 売価の候補ごとに購入意向を記録
研究はフィンランドの学生79人がチョコバー3種を食べたもので、自社の社内パネルや想定する買い手、製品の種類とは条件が違います。結果をそのまま当てはめず、自社の評価で確かめる価値がある条件として使ってください。究極のチョコの条件「もう一度買いたくなる」を考えるなら、値段を伏せた味の評価と、売価を見せた購入意向の両方が手がかりになります。また買いたい理由の研究はもう一度買いたくなるチョコは何で決まる?、包装が感じ方を変える研究は箱の色や重さで味の感じ方は変わる?にまとめています。
04 まだわからないことチョコで、値段の思い込みはどこまで起きる?
ほとんどわかっていません。チョコで値段を知らせて味の評価を測った研究は少なく、今回確かめられた1本では、おいしさの評価は変わりませんでした。
- チョコバーの研究は、先に何も知らせずに食べてから値段を知らせる順番でした。食べる前に値段を知らせた場合に変わるかはわかりません。
- 値段が味の評価を変えた研究の多くはワインです。チョコで同じ大きさの効き目が出るかは確かめられていません。
- 安い表示で好ましさが下がった結果は、ドイツの30人の研究1本です。
- 贈り物として受け取ったときに値段の情報がどう効くかは、この記事の研究からは言えません。贈るチョコの研究は箱の色や重さで味の感じ方は変わる?へ。
05よくある質問
高いチョコほどおいしく感じるのは本当?
チョコでは、そう示した研究は見つかりませんでした。フィンランドの学生79人の研究では、値段を知らせてもチョコバーのおいしさの評価は変わらず、値段が高いほど買いたい気持ちが下がりました。値段で好ましさが変わった研究の多くはワインです。
値段で味の感じ方が変わるのはなぜ?
値段や表示を見ると「こういう味だろう」と期待が生まれ、その期待が感じ方を変えることがあると考えられています。同じワインに違う値段を付けた研究では、値段で好ましさの評価と、好ましさにかかわる脳の部位の活動が変わりました。
試食会で想定売価を伝えてもいい?
味の評価を取るときは伏せるのが安全です。チョコバーの研究では値段で味の評価は変わりませんでしたが、同じワインに3ユーロと18ユーロの表示を付けた研究では、安い表示で好ましさが下がりました。売価を見せた評価は、購入意向を見るための別の段階として取ります。
出典
- Di Monaco R, Ollila S, Tuorila H 2005. Effect of price on pleasantness ratings and use intentions for a chocolate bar in the presence and absence of a health claim. Journal of Sensory Studies, 20(1), 1–16.
- Schmidt L, Skvortsova V, Kullen C, Weber B, Plassmann H 2017. How context alters value: The brain's valuation and affective regulation system link price cues to experienced taste pleasantness. Scientific Reports, 7, 8098.
- Plassmann H, O'Doherty J, Shiv B, Rangel A 2008. Marketing actions can modulate neural representations of experienced pleasantness. Proceedings of the National Academy of Sciences, 105, 1050–1054.
- Fernqvist F, Ekelund L 2014. Credence and the effect on consumer liking of food – A review. Food Quality and Preference, 32, 340–353.


