チョコを食べると目がさえる?24人の試験では、食品の量のテオブロミンだけでは気分も注意力も変わらず

「チョコを食べると目がさえる」と言われます。それはカカオに入っているテオブロミンのせいでしょうか、それともカフェインでしょうか。研究では、食品に含まれる量(100〜400mg)のテオブロミンだけでは、気分や注意力ははっきり変わりませんでした。一方、チョコ50gに入る量のカフェインとテオブロミンを組み合わせた試験では、元気さの気分と反応の速さが良くなりました。目がさえる感じの手がかりは、テオブロミン単独より、少量のカフェインを含めた組み合わせと考えられます。チョコに入っているカフェインはコーヒーより少なめです。この記事は体への効き方を整理したもので、病気の予防や治療の話ではありません。妊娠中の人、カフェインに敏感な人、持病のある人は、チョコを食べる量や時刻について医師に相談してください。
結論
- 米国の大学の試験では、男性24人がテオブロミン100・200・400mg入りのココア飲料を飲んでも、気分や2時間の注意力の課題ははっきり変わらなかった。カフェイン100mgでは、だるさが減り、元気さが上がった。
- 米国農務省の食品成分表では、カカオ分70〜85%のダークチョコ100gに、テオブロミン802mgとカフェイン80mg。欧州食品安全機関の目安では、板チョコ1枚(50g)のカフェインは約25mgで、コーヒー1杯(約90mg)より少ない。
- チョコを食べて実際に眠りがどう変わるかを直接測った研究は、今回の調べでは見つからなかった。寝る前のカフェイン100mgで眠りに影響が出る人がいる、というのが公的機関の見方。
01 どんな研究かテオブロミンだけで、目はさえる?
カリフォルニア州立大学フラートン校のJudelsonらは、男性24人にテオブロミンの量だけを変えた飲み物を飲んでもらい、気分と注意力を測りました。食品に入っている量のテオブロミンでは、どちらもはっきり変わりませんでした。
Judelson DA, Lieberman HR ら / カリフォルニア州立大学フラートン校ほか(2013)[1]
テオブロミン100・200・400mgをココアの飲み物に入れ、テオブロミンなし・テオブロミン400mg・カフェイン100mgはココアでない飲み物に入れて、6回に分けて飲んでもらった。どの量でも、テオブロミンでは気分と注意力の課題に一貫した変化はなかった。比べるために入れたカフェイン100mgでは、だるさ・疲れが減り、元気さが上がった。
対象: 23歳前後の男性24人、二重盲検(本人も配る人もどれかわからない)の6回の試験 / 限界: 男性だけで人数が少ない。共著者にはチョコメーカーの研究者が含まれる(論文データベースの所属情報で確認)。要旨で照合。
テオブロミンはカフェインと形が似ていて、脳の中で同じ受け手(アデノシン受容体)にくっつきます。だから効き方も似ているはず、と考えられてきました。この試験は、その考えを食品の量で確かめたものです。だ液の中のテオブロミンは、飲んだ量に応じてきちんと増えていました[1]。それでも、目がさえる方向の変化は出ませんでした。
ほかの試験も、テオブロミンとカフェインの効き方が違うことを示しています。食品会社の研究所のMitchellらは、女性24人にテオブロミン700mg、カフェイン120mg、その両方、偽の薬を飲んでもらいました[2]。カフェインでは1〜3時間後に「頭がすっきりした」という答えが増えました。テオブロミンだけでは3時間後に「落ち着いている」という答えが減り、1時間後の血圧が偽の薬より低くなりました。著者らは、カフェインは主に脳に、テオブロミンは主に体のほうに効くのかもしれない、と控えめにまとめています。
シカゴ大学のBaggottらは、80人にテオブロミン250・500・1000mgとカフェイン200mgを飲んでもらいました[3]。テオブロミンは250mgでは気分への影響が小さく、量が多いと気分を悪くする方向に働き、量に応じて心拍が上がりました。
02 わかった数字チョコには、どれだけ入っている?
米国農務省の成分表では、ダークチョコ(カカオ分70〜85%)100gにテオブロミン802mg、カフェイン80mgです。テオブロミンはカフェインの約10倍入っていますが、テオブロミンだけでは目がさえる変化は出ず、変化が出た試験はカフェインとの組み合わせでした。
| 食品(100gあたり) | テオブロミン | カフェイン |
|---|---|---|
| 無糖のココアパウダー | 2,057mg | 230mg |
| ダークチョコ(カカオ分70〜85%) | 802mg | 80mg |
| ダークチョコ(カカオ分60〜69%) | 632mg | 86mg |
| ミルクチョコ | 205mg | 20mg |
| ホワイトチョコ | 0mg | 0mg |
米国農務省 FoodData Central(SR Legacy)の値[5]。製品ごとに量は違う。日本の製品の値ではない。
ブリストル大学のSmitらは、ダークチョコ50gに入っている量のカフェイン19mgとテオブロミン250mgを組み合わせて飲んでもらうと、ココアパウダーを飲んだときと同じように、「元気さ」の気分と反応の速さの課題が、偽の薬より良くなったと報告しました[4]。20人と22人の2つの試験です。テオブロミン単独では変化が出ないという[1]の結果と合わせると、チョコの「目がさえる感じ」は、少量のカフェインとテオブロミンの組み合わせで起きている可能性があります。ただし、組み合わせのどちらがどれだけ効いたかは、この試験では分けられていません。
03 開発への使い方カフェインとテオブロミンを、配合と表示でどう扱う?
量はカカオ分とココアパウダーで大きく変わるので、製品の量を測り、1食分あたりで把握することです。「目がさえる」「集中力が上がる」とうたう根拠は、研究にはありません。
配合: カカオ分で量が約4倍変わる
米国農務省の成分表では、100gあたりのテオブロミンとカフェインは、ミルクチョコ205mgと20mg、ダークチョコ(70〜85%)802mgと80mg、無糖のココアパウダー2,057mgと230mgです[5]。ミルクとダークで約4倍違うので、カカオ分やココアパウダーの量を変える配合は、1食分の量も変えることを把握しておきます。
目安 配合を変えるたびに見直す
測定: 2つの成分を分けて測り、1食分あたりに直す
成分表は日本の製品の値ではなく、製品ごとに量は違います。自社の製品でテオブロミンとカフェインを分けて測り、1枚・1食分あたりに直しておくと、購入者や取引先から聞かれたときに答えやすくなります。体への効き方を調べた試験は、偽の飲み物と比べる二重盲検で行われたもので[1]、製品の官能評価とは別の設計が要ります。
目安 原料の豆や配合が変わるごと
表示: 量を伝え、効き目をうたわない
欧州食品安全機関は、寝る前のカフェイン100mgで一部の大人の眠りに影響が出ることがあるとしています[6]。カフェインに気をつける人が選べるよう、1食分の量を示すかを表示の担当者と決めます。「集中力が上がる」「頭が良くなる」とは書きません。表示のきまりは、この記事では原典を確かめておらず、法的な助言でもありません。
目安 包装・商品説明を作るときに確認
言えないこと: チョコで「集中力が上がる」「頭が良くなる」こと。チョコを食べると眠れなくなるかどうか(チョコで眠りを測った研究は見つからなかった)。
研究の条件は、飲み物やカプセルで量だけを変えた少人数の試験(男性24人・女性24人・80人など)で、チョコを食べた試験ではありません。自社製品の量は測定で確かめます。カカオの成分と健康の話はカカオの健康効果はどこまで本当?で、子どもが食べる製品の話は子ども向けのチョコ製品でカフェインは何に気をつける?で、犬にとって危ない理由は犬がチョコを食べたらどうなる?で扱っています。
04 まだわからないことチョコと目覚めで、答えが出ていないことは?
チョコそのものを食べて眠りを測った研究は見つかりませんでした。テオブロミンの試験も少人数で、性別や量によって結果が違います。
- チョコを食べたあとの寝つきや眠りの質を、機械で測った研究は今回の調べでは見つかりませんでした。
- テオブロミンの試験は、男性だけ(24人)、女性だけ(24人)、80人と、どれも少人数で、量も対象も違います。
- カフェインに敏感な人・妊娠中の人・持病のある人で、チョコの量がどう効くかは、この記事の研究ではわかりません。
- 日本で売られているチョコのテオブロミンとカフェインの量を、製品ごとにまとめた公的な表は、今回は確かめられませんでした。
05よくある質問
チョコを食べると目がさえるのは本当?
カカオに多いテオブロミンだけでは、食品に含まれる量(100〜400mg)で気分や注意力ははっきり変わりませんでした(男性24人の試験)。一方、チョコ50gに入る量のカフェインとテオブロミンを組み合わせた試験では、元気さの気分と反応の速さが良くなりました。板チョコ1枚のカフェインは約25mgで、コーヒー1杯の約90mgより少なめです。
寝る前にチョコを食べてもいい?
チョコで眠りを測った研究は見つかりませんでした。欧州食品安全機関は、寝る前のカフェイン100mgで一部の大人の眠りに影響が出ることがあるとしています。製品で伝えるなら、1食分のカフェインの量を示すのが、気にする人が選ぶ手がかりになります。
テオブロミンとカフェインは何が違うの?
形は似ていますが、効き方が違うという研究があります。カフェインは「頭がすっきりした」という答えを増やし、テオブロミンは量が多いと心拍を上げ、気分を悪くする方向に働きました。食品に入っている量のテオブロミンだけでは、はっきりした変化は出ませんでした。
子どもにチョコをあげるときも同じ?
子どもで調べた研究はとても少なく、「この量なら安全」という線はわかっていません。くわしくは子ども向けのチョコ製品でカフェインは何に気をつける?で整理しています。
出典
- Judelson DA, Preston AG, Miller DL, Muñoz CX, Kellogg MD, Lieberman HR 2013. Effects of theobromine and caffeine on mood and vigilance. Journal of Clinical Psychopharmacology, 33(4), 499–506.
- Mitchell ES, Slettenaar M, van der Meer N, Transler C, Jans L, Quadt F, Berry M 2011. Differential contributions of theobromine and caffeine on mood, psychomotor performance and blood pressure. Physiology & Behavior, 104(5), 816–822.
- Baggott MJ, Childs E, Hart AB, de Bruin E, Palmer AA, Wilkinson JE, de Wit H 2013. Psychopharmacology of theobromine in healthy volunteers. Psychopharmacology, 228(1), 109–118.
- Smit HJ, Gaffan EA, Rogers PJ 2004. Methylxanthines are the psycho-pharmacologically active constituents of chocolate. Psychopharmacology, 176(3-4), 412–419.
- U.S. Department of Agriculture. FoodData Central (SR Legacy): Chocolate, dark, 70-85% cacao solids (170273) ほか、60-69% (170272)、milk chocolate (167587)、cocoa dry powder unsweetened (169593)、white chocolate (167571).
- European Food Safety Authority (EFSA). Caffeine(2015年の科学的意見の解説ページ).


