体と安全

犬がチョコを食べたらどうなる?大学動物病院の156頭の記録では44頭に症状。量にかかわらず動物病院へ

約9分で読めます / 主役の研究: Weingartら 2021(ベルリン自由大学)

研究の確かさ ★★☆ 中論文2本と公的資料2件を照合
こちらを見る犬
Photo: Dktue / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文と公的機関の資料をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

犬の誤食は、チョコ製品を作る側にとっても、含有量の把握と注意書きにかかわる問題です。先に、いちばん大事なことを書きます。犬がチョコを食べたときは、食べた量や種類にかかわらず、すぐに動物病院へ電話して相談してください。この記事は、獣医学の論文と公的機関の資料をもとに、何が危ないのか、製品の側で何を把握し、どう伝えるかを整理したものです。診断や治療の代わりにはならず、法的な助言でもありません。

結論

  1. チョコの中で犬に害になるのは、テオブロミンとカフェイン(メチルキサンチン)。量はココアパウダー、製菓用チョコ、ダーク、ミルクの順に多く、ホワイトチョコはごくわずか。
  2. ドイツの大学動物病院の156頭の記録では、症状が出たのは44頭。多かったのは興奮・ふるえ・嘔吐・脈が速くなること。処置を受けた44頭のうち43頭が助かった。
  3. 症状は食べてから6〜12時間で出ることが多い。症状がなくても、食べた物・量・時刻・犬の体重を控えて動物病院へ連絡する。家で量を計算して「大丈夫」と決める方法はない。

01 どんな研究かチョコを食べた犬は、実際にどうなった?

ベルリン自由大学の小動物病院のWeingartらは、チョコを食べて来院した犬156頭の記録を振り返りました。112頭は症状がなく、44頭に症状が出て、そのうち43頭が処置を受けて助かりました。

Weingart C, Hartmann A, Kohn B / ベルリン自由大学 獣医学部 小動物病院(2021)[1]

2015〜2019年にチョコを食べて来院した犬156頭の症状・検査・治療・結果を調べた。症状のあった44頭のうち28頭は、ダークチョコやビターチョコを食べていた。来院の理由は興奮(33頭)、ふるえ(22頭)、嘔吐(21頭)、あえぎ呼吸(11頭)など。診察では、脈が速くなる洞性頻脈(28頭)が最も多かった。

対象: 1つの大学病院に来院した犬156頭 / 限界: 来院した犬だけの記録で、家で様子を見た犬は含まれない。成分の量は、チョコの種類と食べた量からの計算。

症状のあった犬は、胃の中の物を出す処置(吐かせる薬・活性炭)と、点滴や心拍を落ち着かせる薬などの治療を受けました[1]。亡くなったのは44頭のうち1頭で、著者らは、処置をすれば見通しは良いとまとめています。同時に、チョコの種類と量、食べた時刻が大事な手がかりだと書いています。

英国リバプール大学のNobleらは、英国の229の動物病院の電子カルテ約270万件から、チョコを食べて処置や経過観察を受けた386件(375頭)を見つけました[2]。ほかの時期と比べた起きやすさ(オッズ比)は、クリスマスの時期が4.74、イースターが1.97で、どちらもはっきり高くなっていました。8歳以上の犬は、4歳未満の犬より少なくなっていました。贈り物や買い置きのチョコが家に増える時期に、注意が要るということです。

02 わかった数字チョコの種類で、危ない成分の量はどれだけ違う?

獣医学の資料では、1gあたりのメチルキサンチンはココアパウダー28.5mg、ダークチョコ5.3〜5.6mg、ミルクチョコ2.3mg、ホワイトチョコ0.04mgです。体重1kgあたり20mgで軽い症状が出ることがあるとされます。

28.5mg/gココアパウダー1gあたりのメチルキサンチン(テオブロミンとカフェイン)の量(Merck獣医マニュアル)
20mg/kg嘔吐・下痢・水をよく飲むなど、軽い症状が出ることがある量(犬の体重1kgあたり)
6〜12時間食べてから症状が出ることが多い時間。重い例では72時間続くことも
44頭中43頭症状が出て処置を受け、助かった犬の数(ベルリン自由大学の156頭の記録)
種類1gあたりの量
ココアパウダー28.5mg
無糖の製菓用チョコ15.5mg
ダークチョコ(セミスイート・スイート)5.3〜5.6mg
ミルクチョコ2.3mg
ホワイトチョコ0.04mg

この表は、家で「この量なら大丈夫」と決めるためのものではありません。食べた量や種類にかかわらず、すぐに動物病院へ電話してください。

1gあたりの量はMerck獣医マニュアル(米国の獣医師向けの専門書、ASPCA動物中毒管理センターの獣医師が執筆、2024年9月に見直し)[3]。製品ごとに量は違う。

同じ資料では、体重1kgあたり40〜50mgで心臓への影響、60mg以上でけいれんが起きるとされています[3]。カカオ分の高いチョコほど成分も多いと考えられます。カカオ分と味の関係はカカオ分が高いほど苦い?で読めます。

ただし、目安より少ないから大丈夫とは言えません。Nobleらの記録で食べた量がわかった185件のうち、20mg/kg未満の量は75件(41%)でした[2]。それでも、そのうち34件では念のため吐かせる処置が行われていました。量の見積もりには誤りが入りやすく、判断は獣医師に任せるのが安全です。

03 開発への使い方犬の誤食について、製品の側で何を把握し、どう伝える?

製品ごとのメチルキサンチン(テオブロミンとカフェイン)の量を把握し、犬や猫に与えないよう伝える注意書きと、量を見積もれる包装の情報を考えることです。犬が食べてしまったときは、量にかかわらず動物病院に電話し、種類・量・時刻・体重を伝える、という案内は変わりません(家で吐かせようとしない)。

1

配合: カカオ分とココアパウダーの量で、成分の量が大きく変わる

1gあたりのメチルキサンチンは、ココアパウダー28.5mg、ダークチョコ5.3〜5.6mg、ミルクチョコ2.3mg、ホワイトチョコ0.04mgと、種類で100倍以上違います[3]。カカオ分を上げる、ココアパウダーを足すといった配合の変更は、製品1個あたりの量を大きく変えることを把握しておきます。

目安 配合を変えるたびに見直す

2

測定: テオブロミンとカフェインを分けて測り、1個あたりに直す

表の値は専門書の一般的な値で、製品ごとに量は違います[3]。自社の製品は、テオブロミンとカフェインを分けて測った値を持っておきます(専門書の目安が合計の値かどうかは明記されていません)。1枚・1個あたりの量に直しておくと、獣医師や購入者から聞かれたときに答えやすくなります。

目安 配合や原料の豆が変わるごと

3

表示・注意書き: 与えないことと、量を見積もれる情報

英国の記録では、誤食はクリスマスの時期にオッズ比4.74、イースターに1.97と高くなりました[2]。贈答の時期の製品ほど、犬や猫に与えない・手の届く所に置かない旨の注意書きが役に立つと考えられます。環境省のガイドラインも、買い置きのチョコを部屋に放置しないよう呼びかけています[4]。包み紙にカカオ分と内容量があると、獣医師が食べた量を見積もる手がかりになります。注意書きの義務や書き方のきまりは、この記事では原典を確かめていません。

目安 包装を作り直すときに確認

研究の条件は、ドイツの1つの大学病院に来院した犬156頭と、英国229病院の電子カルテの記録で、量の目安は獣医師向けの専門書の値です。自社製品の量は、配合からの計算でなく測った値で確かめます。人の体への話はカカオの健康効果はどこまで本当?とダークチョコの鉛やカドミウムは心配?で扱っています。

04 まだわからないことどこからが危ない量かは、どこまでわかっている?

20mg/kgなどの目安は獣医学の専門書の値ですが、犬ごとの差や、どの研究がもとかは今回たどれませんでした。家で安全な量を決められる研究は見つかりませんでした。

  • 20・40〜50・60mg/kgという目安は専門書の値で、そのもとになった研究を今回は原典までたどれていません。テオブロミンだけの値か、カフェインとの合計の値かも、資料には明記されていません。
  • Weingartらの記録は1つの大学病院のもので、要旨で確かめた範囲です。来院しなかった犬がどうなったかはわかりません。
  • 犬の年齢・持病・犬種によって、同じ量でも症状が違うかどうかは、今回の資料では確かめられませんでした。
  • 猫の中毒の量の目安は、今回の資料には見つかりませんでした。

テンパリング温度ガイド研究一覧を見る

05よくある質問

犬がチョコを少しだけ食べた。様子を見ていい?

量や種類にかかわらず、自分で判断せずに動物病院へ電話して相談するのが安全です。獣医学の資料では、症状は食べてから6〜12時間ほどで出ることが多く、症状がないうちに処置を始められることがあります。この記事は診断の代わりにはなりません。

犬にとってチョコの何が危ないの?

カカオに含まれるテオブロミンとカフェイン(メチルキサンチンと呼ばれる成分)です。環境省のガイドラインは、テオブロミンが原因で嘔吐・下痢・発熱・けいれんなどが起きると説明しています。

ミルクチョコやホワイトチョコなら大丈夫?

獣医学の資料では、成分の量はココアパウダー、製菓用のチョコ、ダーク、ミルクの順に多く、ホワイトチョコはごくわずかです。ただし少ないことは安全の保証ではありません。どの種類でも、食べた物と量を伝えて動物病院に相談してください。

チョコ製品に、犬への注意書きは要る?

表示の義務があるかは、この記事では原典を確かめていません。研究では、誤食はクリスマスとイースターの時期に増え、食べた量の見積もりには包み紙のカカオ分や重さが手がかりになります。注意書きをどう入れるかは、各社で表示の担当者と決めてください。

猫がチョコを食べても危ない?

環境省のガイドラインは、犬ほどではないものの、猫でも同じような症状が起きることがあると書いています。猫も同じように動物病院に相談してください。