ダークチョコの鉛やカドミウムは心配?米国72製品の測定では、1食分の中央値は厳しめの州の目安を下回った

「ダークチョコから鉛が検出」という見出しは、カカオ分の高い製品を作る開発者や品質管理の担当者にとっても気になる話です。研究を読むと、多くの製品の量は厳しめの目安より低い一方で、ばらつきが大きく、目安を超える製品もありました。この記事では、何が測られ、どんな基準と比べたのかを分けて読みます。
結論
- 米国の72製品の測定では、1日1食分の鉛とカドミウムの中央値は、カリフォルニア州の厳しめの目安を下回った。ただし鉛で43%、カドミウムで35%の製品はその目安を超えた。
- 鉛は72製品中70製品(97.2%)が、米国FDAの子ども向けの目安(1日2.2µg)より低かった。カドミウムはカカオ分が高いほど多い傾向があり、EUはカカオ分ごとに基準値を決めている。
- 1日1食分を超えて食べ続けたときや、ほかの食べ物と合わせたときの影響は、この測定ではわからない。日本ではチョコの基準値は設けられていない。
01 どんな研究かダークチョコの重金属は、どう測られた?
ジョージ・ワシントン大学のHandsらは、2014〜2022年に米国で買ったダークチョコやココアなど72製品の鉛・カドミウム・ヒ素を測り、1日1食分あたりの量を州と国の目安と比べました。
Hands JM, Anderson ML, Cooperman T, Balsky JE, Frame LA / ジョージ・ワシントン大学 医学部ほか(2024)[1]
2014・2016・2019・2022年の4回に分けて、カカオを含む市販品72製品を測定した。1食分あたりの量を、カリフォルニア州の警告表示の目安(1日あたり鉛0.5µg、カドミウム4.1µg、ヒ素10µg)と比べると、超えた製品は鉛43%、カドミウム35%、ヒ素0%だった。中央値はどの金属も目安より低く、一部の外れ値の製品が全体を押し上げていた。
対象: 米国で買った市販のダークチョコ・ココアなど72製品 / 限界: 1日1食分を食べると仮定した計算で、食事全体からの量は見ていない。測定は共著者3人が勤める試験会社が行った(研究への資金提供はなしと記載)。
鉛については、米国FDAが決めた暫定の目安とも比べています。FDAの目安は、子どもで1日2.2µg、出産できる年齢の女性で1日8.8µgです[6]。72製品中70製品(97.2%)が、子ども向けの2.2µgより低い値でした[1]。1食分の鉛の中央値は0.375µg、最も多い製品は3.136µgでした。
著者らは、平均的な人が1食分を食べる分には、半数以上の製品で目立ったリスクにはならないかもしれない、と書いています[1]。一方で、一部の製品を食べる場合や、1日に何食分も食べてほかの食べ物の分と合わさる場合は、目安を超えうるとも書いています。
02 わかった数字基準値と比べると、どのくらいの量なのか?
EUはカドミウムの上限を、カカオ分50%以上のチョコで0.80mg/kg、ミルクチョコ(カカオ分30%未満)で0.10mg/kgと決めています。米国の測定では、鉛の平均は年を追って下がっていました。
| EUのカドミウムの上限(2023/915) | mg/kg |
|---|---|
| ミルクチョコ(カカオ固形分30%未満) | 0.10 |
| チョコ(カカオ固形分50%未満)、ミルクチョコ(30%以上) | 0.30 |
| チョコ(カカオ固形分50%以上) | 0.80 |
| 消費者向けのココアパウダー・飲むココアの粉 | 0.60 |
EU規則2023/915の付属書の値[5]。同じ規則の鉛の表には、チョコやココアの項目は見つからなかった。
カカオ分との関係 米国FDAの研究者Abtらは、市販のココアパウダー・ダーク・ミルク・カカオニブを測りました[2]。カドミウムは0.004〜3.15mg/kg、鉛は検出できる下限未満〜0.38mg/kgでした。どちらもカカオ分と相関し、カドミウムは産地が中南米と書かれた製品の方が、アフリカの製品より多くなっていました。Abtらの総説は、カドミウムと鉛には自然由来と人の活動由来の両方があり、中南米の一部では土のカドミウムが多いことが要因の1つだとまとめています[3]。カカオ分の味への影響はカカオ分が高いほど苦い?、産地の違いは産地や品種でチョコの味は変わる?で読めます。
日本の基準 厚生労働省の資料では、食品衛生法でカドミウムの基準値があるのは米(玄米・精米、0.4ppm以下)と清涼飲料水(ミネラルウォーター類)で、チョコは挙げられていません[7]。食品安全委員会の耐容週間摂取量は体重1kgあたり週7µgで、体重50kgなら週350µgです。Handsらの1食分のカドミウムの中央値(約3µg)を毎日1食分食べると週約21µgで、その約6%にあたります(この記事での計算。製品によって大きく違います)。
鉛の割合 米国のコンサルティング会社に所属していた研究者らの計算モデルでは、米国での普通の食べ方で、チョコは鉛の摂取全体の約0.3〜0.8%でした[4]。小さな子どもの血中の鉛の違いには、土やほこりの方がずっと大きく関わっていました。資金の出どころは、今回読めた範囲では確かめられませんでした。
03 開発への使い方重金属を、原料・測定・表示でどう管理する?
原料の豆とカカオ分ごとにカドミウムと鉛を測り、販売先の基準値と照らし合わせ、外れ値のロットを出さない仕組みを作ることです。研究で平均を押し上げていたのは、一部の外れ値の製品でした。
配合・原料: カカオ分と産地を変えるたびに測る
カドミウムと鉛はカカオ分と相関し、カドミウムは産地が中南米と書かれた製品で多い傾向でした[2]。中南米の一部では土のカドミウムが多いことが要因の1つとされます[3]。カカオ分を上げる・産地を変えるといった配合の変更では、試作の段階で測ります。EUの上限はカカオ分の区分ごとに違うので(50%以上のチョコで0.80mg/kg[5])、輸出する製品はどの区分に入るかを確かめます。
目安 配合や原料の産地を変えるたび
測定: 原料・製品の両方で、平均でなく最大値も見る
原料の豆(またはカカオマス)と製品の段階で、鉛・カドミウム・ヒ素を測ります。値はmg/kgと、Handsらのように1食分あたりのµgの両方で持つと、EUの基準値とも米国の目安とも比べられます[1][5]。平均では目安を下回っても外れ値の製品があったので、ロットごとの最大値を管理の対象にします。
目安 原料の受け入れごと・製品のロットごと
品質管理・表示: 販売先の基準と、1食分の目安
厚生労働省の資料では、日本の食品衛生法でカドミウムの基準値があるのは米と清涼飲料水で、チョコは挙げられていません[7]。輸出先の基準(EU規則2023/915など)は別に確かめます。子ども向けの製品では、FDAの子ども向けの鉛の目安(1日2.2µg)が大人より低いことを踏まえます[6]。1食分の目安を包装に書くと、量の見積もりの基準になります。表示のきまりは、この記事では法的な助言ではありません。
目安 販売先を増やすときに基準を確認
Handsらの測定は米国で買った72製品(1回17〜21製品)、Abtらの測定も米国の市販品で、自社の原料の産地やロットとは違うため、自社の測定で確かめます。カカオ分の味への影響はカカオ分が高いほど苦い?、カカオの体への良い面についてはカカオの健康効果はどこまで本当?で整理しています。
04 まだわからないことチョコの重金属で、まだはっきりしないことは?
測定は米国で買った製品が中心で、日本で売られているチョコをまとめて測った査読論文は、今回の調べでは見つかりませんでした。食事全体の中でチョコがどれだけを占めるかも、日本の人では確かめられていません。
- Handsらの測定は1回に17〜21製品と少なく、量の多かった製品は後の回で外されたことがあり、年ごとの下がり方には偏りが入りうると読めます。
- オーガニック表示の製品でカドミウムが多い傾向は、分析の方法によって結果が揺れました。
- カリフォルニア州の目安は警告表示のための厳しめの値で、それを超えたことが体への害を意味するわけではありません。逆に、下回れば何食分でも良いという意味でもありません。
- 日本の人の食事で、チョコがカドミウムや鉛の何%を占めるかを計算した研究は、今回は見つかりませんでした。
05よくある質問
ダークチョコの製品で、鉛やカドミウムはどこまで気にすべき?
米国の72製品の測定では、1日1食分の中央値は、警告表示のためのカリフォルニア州の厳しめの目安を下回りました。一方で、目安を超える製品もあり、平均を押し上げていたのは一部の外れ値の製品でした。原料と製品を測り、外れ値のロットを出さないことが要点です。
カカオ分が高いほどカドミウムは多い?
米国FDAの研究者による市販品の測定では、カドミウムと鉛はカカオ分と相関していました。EUの基準値も、カカオ分50%以上のチョコは0.80mg/kgと、ミルクチョコより高く設定されています。
日本にはチョコのカドミウムの基準値がある?
厚生労働省の資料で食品衛生法のカドミウム基準値があるのは、米(玄米・精米)と清涼飲料水(ミネラルウォーター類)で、チョコは挙げられていません。EUにはカカオ分ごとの基準値があります。
オーガニックのチョコなら重金属は少ない?
米国の72製品の測定では、オーガニック表示の製品の方がカドミウムが多い傾向でした(1日1食分の平均6.09µgと3.18µg)。ただし著者らは、この関係は分析の方法によって揺れると書いています。表示だけで少ないとは言えません。
出典
- Hands JM, Anderson ML, Cooperman T, Balsky JE, Frame LA 2024. A multi-year heavy metal analysis of 72 dark chocolate and cocoa products in the USA. Frontiers in Nutrition, 11, 1366231.
- Abt E, Fong Sam J, Gray P, Robin LP 2018. Cadmium and lead in cocoa powder and chocolate products in the US Market. Food Additives & Contaminants: Part B, 11(2), 92–102.
- Abt E, Robin LP 2020. Perspective on Cadmium and Lead in Cocoa and Chocolate. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 68(46), 13008–13015.
- Thornton SA, Mincin TM, Adebambo OA, Kreider ML, Unice KM 2026. Probabilistic biokinetic lead modeling to quantify relative contribution of chocolate bar intake to blood lead levels. Food and Chemical Toxicology, 115979.
- Commission Regulation (EU) 2023/915 on maximum levels for certain contaminants in food(付属書 3.2.15).
- U.S. Food and Drug Administration. Lead in Food and Foodwares(2025年1月6日時点).
- 厚生労働省. カドミウム基準値を超えるコメの流通について(食品中のカドミウムに関するQ&Aを含む).


