形で甘さの感じ方は変わる?24人の試食では、丸いチョコのほうが甘いと評価された

丸いチョコと、星のようにとがったチョコ。型だけを変えて中身が同じでも、味の評価は変わるのでしょうか。日本の研究チームが3Dプリンターで形だけを変えたチョコを作って試すと、丸い形のほうが少し甘く感じられました。ただし、別の研究では食べたあとの差は出ておらず、結論はまだ分かれています。
結論
- 京都工芸繊維大学などのチームが、同じカカオ74%のチョコを丸い形と角ばった形に作り、24人が口で溶かして評価した。甘さは丸い形が約39点、角ばった形が約29点(100点満点の推定平均)だった。
- 苦さと酸っぱさは、形による差がはっきりしなかった。オックスフォード大学などの研究では、形は「食べる前の予想」を変えたが、食べたあとの評価は変えなかった。
- 目で見た形の効果か、舌で触れた形の効果かは、まだ分けられていない。形は「甘くやさしそう」という印象を伝える手がかりになりうる(②あげたくなる)が、味そのものを大きく変える証拠は弱い。型を変えた試作では、重さ・溶け方・食べる順番をそろえないと、形の効果と区別できない。
01 どんな研究か形だけを変えたチョコで、何を確かめた?
京都工芸繊維大学と企業の研究所のチームが、同じチョコを3Dプリンターで丸い形2種・角ばった形2種に作り、24人が1つずつ口で溶かして、甘さ・酸っぱさ・苦さを0〜100で評価しました。
緒方一洋・額見怜央ら / 京都工芸繊維大学、企業の研究所、京都大学(2023)[1]
丸い形を「ブーバ」、とがった形を「キキ」と結びつけやすいという、よく知られた現象(ブーバ・キキ効果)をチョコで試した。丸い形のほうが角ばった形より甘く感じられた確率は98.7%と計算された。一方、角ばった形のほうが酸っぱい・苦いという予想は支持されなかった。
対象: 日本人24人(22〜47歳、男女12人ずつ)。市販のカカオ74%のクーベルチュールを、幅24mm・高さ3〜4mmの輪の形に、重さをそろえて作った / 限界: 少人数。参加者は食べる前に形を見ていたため、目で見た効果か、舌で触れた効果かは分けられていない。
試食は静かな部屋で行われました。チョコはスプーンにのせて渡され、噛まずに口の中で溶かします。飲み込んでから30秒待って後味まで感じ、タブレットで3つの味を評価しました。1つ食べるごとに常温の水で口をすすぎ、3分休みます。食べる順番は、人によって入れ替えてありました[1]。
形を「輪」にしたのには理由があります。先に行われたオックスフォード大学などの研究では、形の違うチョコを食べても味の評価に差が出ませんでした[2]。著者らは、食べる量が多すぎて、チョコそのものの味が形の効果を上回ったのではないかと考えました。そこで中を空けた輪の形にして、量を減らしたまま形の違いだけが伝わるようにしています[1]。
研究は国の研究費(JST・JSPS)で行われました。統計にはベイズ法を使い、「差がある確率」で結果を示しています。
02 わかった数字丸いチョコは、どのくらい甘く感じた?
同じ基本形どうしで比べると、甘さは丸い形が約39点、角ばった形が約29点でした。苦さは約54点と約55点で、ほとんど差がありませんでした。
ほかの研究も合わせると、形の効果は「いつも出る」とはいえません。今回確かめた4本を並べます。
| 研究 | だれが・何を | 食べたあとの結果 |
|---|---|---|
| 緒方ら 2023 [1] | 日本の大人24人。丸い輪と角ばった輪 | 丸いほうが甘い。苦さ・酸っぱさは差がはっきりしない |
| Wang ら 2017 [2] | オックスフォード大学などのチーム。丸いチョコと角ばったチョコ | 食べる前の予想は形で変わったが、食べたあとの評価は変わらなかった |
| Lenfant ら 2013 [3] | 大手食品メーカーの研究所。同じ配合の10種類の形を、訓練を受けた評価者が噛まずに評価 | 溶け方・なめらかさに差。カカオ感・後味にも小さな差 |
| 山﨑ら 2023 [4] | 中国学園大学の学生。星形とハート形、六芒星と丸 | 苦さに有意な差なし。最初に食べたほうを苦く感じる傾向 |
結果の欄は各論文の要旨・本文から。Wang ら・Lenfant らは要旨で照合したため、人数などの数字は書いていません。
注目したいのはこの研究の細かい結果です。丸いチョコは、食べる前に予想したほど甘くなく、予想より苦く、好みも予想を下回りました[2]。丸い形は「甘いはず」という期待を上げますが、中身が期待に届かないと、その差がかえって目立つのかもしれません。
中国学園大学の調査は、苦さだけを聞いた小さな試みです[4]。カカオ37.7%の星形とハート形(各7g)では、37人のうち17人が星形、20人がハート形を苦いと答え、差はありませんでした(p=0.622)。かわりに、形に関係なく「最初に食べたほう」を苦く感じる傾向が見られました。
03 開発への使い方型を変えた試作は、どう評価する?
形が味の評価を変える力は小さく、研究で結果も分かれています。型を変えた試作は配合と重さをそろえ、溶け方の差と食べる順番の影響を外して比べます。形が作る「甘そう」という期待と、中身の味がずれないかも確かめます。
型を変えるときは配合を固定し、重さと厚みをそろえる
同じ配合でも、形の違いで溶け方・なめらかさに差が出た研究があり、角ばった形が早く溶けたという声もありました。型を変えた試作では1粒の重さと厚みをそろえ、溶け方の差が出ていないかも記録します。溶け方と香りの関係は口どけの速さで香りの感じ方は変わる?へ。
目安 型2種、1粒の重さを記録してそろえる
食べる順番を入れ替え、見えない条件の回も作る
パネルの半分は丸から、半分は角ばった形から食べてもらいます。最初に食べたほうを苦く感じる傾向が報告されています。見えない条件で食べる回を作ると、目で見た効果と口の中の形の効果を少し分けられます。研究のように、噛まずに溶かし、飲み込んでから30秒後に評価する方法があります。
目安 評価は飲み込んで30秒後、次の1粒まで3分(研究の条件)
形で甘さを約束しすぎない
丸いチョコは、食べる前に予想したほど甘くなく、好みも予想を下回った研究があります。カカオ分の高い苦めのチョコを丸い形にすると、期待とのずれが出るかもしれません。形は中身の印象とそろえる方向で使い、形で甘く見せて中身以上の期待を作る使い方は勧めません。カカオ分と甘さはカカオ分が高いほど苦い?、甘さの量は甘さの至福点で読めます。
目安 同じ型で、カカオ分の違う2種類の期待と試食の点数を並べる
日本の研究は24人が3Dプリンターで作った幅24mmの小さな輪を食べたもので、型で作る一般的な製品の形・大きさ・量とは条件が違います。形は味を変える道具というより、買う人に伝わる印象の道具と考えるのが研究に近い読み方です。見た目と期待の話は箱の色や重さで味の感じ方は変わる?にまとめています。
04 まだわからないこと形と甘さの関係は、どこまで確かめられている?
丸い形で甘さが上がった研究と、差が出なかった研究があり、結果は分かれています。どの条件で効くのかは、まだわかっていません。
- 目で見た形の効果か、舌で触れた形の効果かは分けられていません。著者らも、見ない条件と比べる実験が必要だと書いています。
- 角ばった形は崩れやすく早く溶けた、という参加者の声がありました。甘さの差は、形でなく溶け方の違いから来た可能性があります。
- 使われたのは3Dプリンターで作った小さな輪で、型で作る一般的な形とは違います。表面が大きくなると差は小さくなる、と著者らは推測しています。
- ミルクチョコやホワイトチョコでは確かめられていません。
- 「おいしい」「また食べたい」は測られていません。甘く感じることが、好みにつながるかは不明です。
05よくある質問
丸いチョコは甘く感じるって本当?
日本の24人の試食研究では、同じチョコでも丸い形のほうが角ばった形より甘いと評価されました(100点満点の推定平均で約39点と約29点)。ただしオックスフォード大学などの研究では、食べたあとの評価に差は出ていません。結果は分かれています。
ハート形のチョコは味が違う?
中国学園大学の調査では、星形とハート形のチョコのどちらを苦く感じるかに有意な差はありませんでした。甘さは聞いていません。形よりも、最初に食べたほうを苦く感じる傾向のほうが目立ちました。
形で味が変わるのはなぜ?
丸い形と甘さ、とがった形と苦さ・酸っぱさを結びつけやすい、という感覚どうしの対応(クロスモーダル対応)があるためと考えられています。ただし、チョコで食べたあとまで効くかは、研究によって結果が違います。
出典
- Ogata K, Gakumi R, Hashimoto A, Ushiku Y, Yoshida S 2023. The influence of Bouba- and Kiki-like shape on perceived taste of chocolate pieces. Frontiers in Psychology, 14, 1170674.
- Wang QJ, Reinoso Carvalho F, Persoone D, Spence C 2017. Assessing the effect of shape on the evaluation of expected and actual chocolate flavour. Flavour, 6, 2.
- Lenfant F, Hartmann C, Watzke B, Breton O, Loret C, Martin N 2013. Impact of the shape on sensory properties of individual dark chocolate pieces. LWT - Food Science and Technology, 51, 545–552.
- 山﨑真未, 飯田梨奈, 草信麻由, 小坂春稀, 田中徹也 2023. 味覚受容体の刺激以外が味に及ぼす影響の検討 ~チョコレートの形の違いが苦味の感じ方に与える影響~. 中国学園紀要, 22, 21–26.


