一口目と三口目でおいしさは変わる?学生45人の実験では、間を詰めて食べると1個ごとの好き度の下がり方が約3倍に

試食で一口目は高く評価されたのに、三口目、四口目になると点数が落ちていく。これは気のせいではなく、研究で数字として測られています。一口目だけの評価では、製品1袋・1箱を食べ終えたときの印象は読めません。この記事では、1回の中で一口ごとにおいしさがどれだけ下がるのか、食べる間隔で下がり方が変わるのかに絞り、内容量と試食の組み方を決める人に向けて読みます。毎日食べ続けたときの変化はもう一度食べたくなるチョコは何が違う?で扱っています。
結論
- 米国の大学生45人が一口サイズのチョコ6個を食べた実験では、9点満点の好き度は食べ進めるほど下がった。下がり方は、200秒おきに食べた組で1個あたり約0.16点、自分で間を決めた組(平均約93秒)で約0.55点と、約3倍違った。
- 自分で間を決めた組は、食べ終わったあとの満足度も低かった(6.96点と5.77点)。人は「間をあければ飽きにくい」ことに気づきにくい、と著者らは考えている。
- おいしさは食べた直後に一番下がり、時間をおくと一部戻るという研究もある。一口ごとの下がり方を、チョコの種類ごとに比べた研究は見つからなかった。
01 どんな研究か一口ごとのおいしさは、どう測られた?
カーネギーメロン大学などの Galak らは、学生に同じチョコを6個、決まった間隔で1個ずつ食べてもらい、1個食べるたびに好き度を9点満点で付けてもらいました。間隔を自分で決める組と、200秒おきに固定する組を比べました。
Galak J, Kruger J, Loewenstein G / カーネギーメロン大学・ニューヨーク大学(2013)[1]
実験1Aでは、20分のアニメを見ながら一口サイズのミルクチョコを6個食べた。半分の人は「全体で一番楽しめるように」食べる間隔を10〜200秒の中から先に決め、残りの半分は200秒おきに食べた。1個ごとに「大嫌い(1)〜大好き(9)」で好き度を付け、最後に全体の満足度も付けた。
対象: 米国の大学のマーケティング入門の授業をとる学生45人(女性31人、平均19.9歳) / 限界: 1種類のチョコ、6個だけ、1回の実験。数字は著者が公開した原稿で確かめた。
アニメを流したのは、食べ終わるのを早めても実験が早く終わらないようにするためです。全員が20分の映像を最後まで見ることを知らされていました[1]。それでも、自分で間を決めた組は、平均で約93秒おきに食べました。200秒まで間をあけてよかったのに、半分以下の間隔を選んだのです。
同じ論文には、糖衣チョコ5粒を6回に分けて食べる別の実験(85人)もあります[1]。間を自由に決めた組(平均約45秒)だけ、回を追うごとに好き度がはっきり下がりました。80〜100秒の中から選ばせた組と、100秒おきに固定した組では、ほぼ下がりませんでした。
02 わかった数字三口目までに、好き度はどれだけ下がる?
好き度は1個食べるごとに平均で約0.16点(200秒おき)から約0.55点(自分で決めた間隔)下がりました。この傾きのとおりなら、三口目では一口目より約0.3点と約1.1点低くなる計算です。
三口目の数字は、論文の傾きから SEADICE が計算したもので、論文が三口目だけを取り出して示したものではありません。下がり方は人によって違い、一口目の点数も人ごとに違います。
食べる数も変わった 実験1Bでは、約100人に「やめたくなったらやめてよい」と伝えました[1]。自分で間を決めた組は平均約110秒おきに食べ、食べた数は平均3.46個でした。200秒おきの組は4.24個でした。速く食べると早く飽きて、少ない数でやめていたことになります。
間の大切さに気づきにくい 同じ論文では、オンラインで100人に「好きなチョコバーの一口サイズを6個、いろいろな間隔で食べたら、楽しさはどう変わると思うか」と聞きました[1]。続けて食べる、1分おき、10分おきでは、予想される飽き方はほぼ同じでした。差があると思われたのは、1時間・1日・1週間おきになってからでした。
チョコで「満腹を超えるまで」食べ続けた研究もあります。ノースウェスタン大学の Small らは、1かけ食べるごとに「どれだけおいしいか」「もう1かけほしいか」を答えてもらい、とてもおいしいときと、満腹なのに食べているときで、働く脳の場所が違うことを示しました[3]。
03 開発への使い方一口ごとの下がり方を、試作の評価にどう入れる?
一口目だけでなく、複数のかけらを決まった間隔で食べてもらい、1個ごとの好き度の傾きを見ることです。間隔を決めないと、パネルごとの食べる速さが結果に混ざります。
配合・工程: 1個の大きさと内容量を条件として扱う
研究では、速く食べた組ほど好き度が早く下がり、少ない数でやめました[1]。1個の大きさや1袋の個数は、配合と同じく食べ終わりの印象を動かしうる条件です。配合を変えた試作と、同じ配合で1個の大きさだけを変えた試作を分けて比べます。チョコで大きさを変えた研究ではないので、試作で確かめる価値がある条件として扱います。
目安 1個の大きさ2〜3段階。配合は固定
評価: 間隔を固定し、1個ごとに好き度を付ける
Galak らのように、同じ試料を4〜6個、決まった間隔で出し、1個ごとに9点の好き度を付けてもらいます[1]。自分で間を決めた人は、200秒まで許されても平均約93秒おきに食べました[1]。間隔をパネルに任せず、タイマーで決めます。比べるのは一口目の点数より、1個あたりの傾きと、食べ終わったあとの満足度です。
目安 1回4〜6個、間隔は全員同じ(例: 2〜3分)
品質管理・表示: 1個の重さのばらつきを管理する
1個の大きさが評価に関わるなら、量産での1個の重さのばらつきも管理項目に入れます。試食に使う試料は同じロットから、同じ温度で出します。食べすぎを促す書き方は避け、内容量と1個の重さを正しく示します。
目安 1個の重さをロットごとに抜き取りで測る
研究の条件は、米国の大学生45人、一口サイズのミルクチョコ1種類、6個だけの実験です。自社の製品や買い手とは違うので、自社のパネルで傾きを測り直します。一口ごとの下がり方が小さいと、最後の一口までおいしく食べ終えられます。研究で直接確かめられてはいませんが、究極のチョコの条件の1つ「食べたあとにもう一度食べたくなる」に近づく手がかりになりえます。最後の一口の記憶が「次にいつ食べたいか」に効くという研究は、また買いたくなるのは何を覚えているから?で読めます。社内の試食記録には食べ比べノートも使えます。
04 まだわからないことどんなチョコなら三口目も下がりにくい?
わかっていません。一口ごとの下がり方を、カカオ分・甘さ・口どけの違うチョコで比べた研究は、今回の調べでは見つかりませんでした。
- 実験は一口サイズのミルクチョコ1種類と糖衣チョコで、米国の学生や街で集めた人たちでした。ダークチョコや日本の食べ手で同じになるかはわかりません。
- 何秒あければ下がらなくなるかの境目は調べられていません。研究で比べたのは、約45〜110秒と100〜200秒の差です。
- 甘さや苦さの強いチョコほど早く飽きるかは、チョコでは確かめられていません。後味については後味の苦みや渋みは「また食べたい」を左右する?、甘さの好みは甘さはどこまでがちょうどいい?で整理しています。
- Small らの研究で、何かけ目からおいしさが下がったかの数字は、本文を読めず確かめられませんでした。
05よくある質問
チョコは一口目が一番おいしいのはなぜ?
研究では、同じものを食べ続けると、そのものの好ましさだけが下がることがわかっています。米国の学生45人の実験では、一口サイズのチョコの好き度が1個ごとに平均0.16〜0.55点(9点満点)下がりました。食べる間が短いほど、下がり方が大きくなりました。
試食で間隔をそろえないと、何が起きる?
1個ごとに200秒あけた組は、自分で間を決めた組(平均約93秒)より、好き度の下がり方が小さく、食べ終わったあとの満足度も高くなりました(6.96点と5.77点)。間隔がそろっていないと、試料の差でなく食べる速さの差が評価に出ます。ただし1種類のチョコ、6個だけの実験です。
少し時間をおけば、おいしさは戻る?
一部は戻るという研究があります。食べたものの好ましさは食べた2分後に一番下がり、一番好まれていた食べ物では1時間のうちに食感と味の好ましさが一部戻りました。チョコで同じことを確かめた研究は見つかりませんでした。
出典
- Galak J, Kruger J, Loewenstein G (2013). Slow Down! Insensitivity to Rate of Consumption Leads to Avoidable Satiation. Journal of Consumer Research, 39(5), 993–1009.(数字は著者公開の原稿 http://web-docs.stern.nyu.edu/pa/slowdown_kruger.pdf で確認) https://doi.org/10.1086/666597
- Hetherington M, Rolls BJ, Burley VJ (1989). The time course of sensory-specific satiety. Appetite, 12(1), 57–68. https://doi.org/10.1016/0195-6663(89)90068-8
- Small DM, Zatorre RJ, Dagher A, Evans AC, Jones-Gotman M (2001). Changes in brain activity related to eating chocolate: from pleasure to aversion. Brain, 124(9), 1720–1733. https://doi.org/10.1093/brain/124.9.1720


