香りと味

後味の苦みや渋みは「また食べたい」を左右する?ダークチョコ11種の研究では、その関係はまだわからない

約8分で読めます / 主役の研究: Oberrauter ら 2018(ウィーン大学)

研究の確かさ ★☆☆ 低い論文7本を照合
割ったチョコ
Photo: SKopp / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文と公的機関の資料をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

チョコは、食べている途中と食べ終わった後で、口に残る味が変わります。ダークチョコ11種を調べた研究では、飲み込む前は苦み、飲み込んだ後は渋みが目立ちました。ただ、その後味が「また食べたい」を左右するかを、チョコで直接確かめた研究は見つかりませんでした。試食で後味をどう測るか、配合で何を動かすかを決める人に向けて整理します。

結論

  1. ウィーン大学の研究では、産地を限ったダークチョコ5種は、カカオ分に関係なく、飲み込むまでの約75%の時間で苦みが主役だった。飲み込んだ後は渋みが目立った。
  2. カカオ分54.5〜60%の一般的なダークでは、最初から最後まで甘さが主役だった。カカオ分が上がるほど苦みが主役になる割合が増えた。
  3. 好きの気持ちは食べている間に変わることが、チーズの研究で示されている。後味の苦みや渋みが次の1かけを食べたい気持ちを変えるかは、チョコではまだ調べられていない。

01 どんな研究かダークチョコの味は、口の中でどう移り変わる?

ウィーン大学の研究チームは、ダークチョコ11種を、食べている間ずっと「今一番目立つ味」を選び続ける方法(TDS法)で調べ、苦み・渋み・甘さが主役になる時間を比べました。

Oberrauter LM ほか / ウィーン大学(2018)[1]

産地を限った市販ダーク5種(カカオ分66.8〜80.1%)と、産地を限らない市販ダーク6種(54.5〜80.0%)を食べ、苦み・渋み・甘さのどれが主役かを時間を追って記録した。産地を限ったダークは、カカオ分に関係なく、飲み込む前のほとんどの時間で苦みが主役で、飲み込んだ後は渋みが目立った。

対象: 市販のダークチョコ11種 / 限界: 評価した人数と経験は要旨で確かめられなかった。好き嫌いや「また食べたい」は調べていない。

TDS法は、食べている間、いくつかの言葉の中から「今一番目立つもの」を選び続けてもらう方法です。何%の人がその瞬間にその味を選んだかを「主役の割合」として、時間ごとの線にします。強さではなく、どの味が前に出ているかの順番がわかります。

研究チームは、ダークチョコに多いポリフェノールが苦みと渋みのもとになり、カカオ分の高いチョコが受け入れられにくい理由になりうると考え、この調べを行いました[1]。苦みは食べている間、渋みは食べ終わりに出るという、時間の役割分担が見えました。

02 わかった数字苦み・渋み・甘さは、いつ主役になった?

産地を限ったダークでは、飲み込むまでの約75%の時間で苦みが主役になり、その割合は最大60〜80%でした。カカオ分54.5〜60%のダークでは甘さが最後まで主役で、最大90〜95%でした。

約75%産地を限ったダーク5種で、苦みが主役だった時間(飲み込む前)[1]
60〜80%そのとき苦みを主役に選んだ人の最大の割合 [1]
90〜95%カカオ分54.5〜60%のダークで、甘さを主役に選んだ人の最大の割合 [1]
6.7%→11.4%同じダークを噛まずに溶かすと、苦みが主役だった時間の割合が増えた(16人、別の研究)[2]
時間産地を限ったダーク(66.8〜80.1%)一般的なダーク(54.5〜60%)
食べ始め〜飲み込む前苦みが主役甘さが主役
飲み込んだ後渋みが目立つ(多くは統計的な差なし)終わりに渋みが目立つ

Oberrauter ら 2018 の要旨から作成。一般的なダークでも、カカオ分が上がるほど苦みが主役になる割合が増えた。

産地を限らないダークでは、カカオ分が味の流れを大きく左右しました[1]。一方、産地を限ったダークでは、カカオ分の影響は小さいか、見られませんでした。著者らは、豆の品種や育った土地、収穫後の処理も効いていると考えています。カカオ分と苦さの関係はカカオ分が高いほど苦い?でくわしく読めます。

苦みが残る時間は、食べ方でも変わりました。フランスの研究で16人が同じダークを噛まずに溶かすと、口にある時間は約52秒から約110秒に延び、苦みが主役の時間も長くなりました[2]。くわしくは口どけの速さで香りの感じ方は変わる?にまとめています。

何口も食べたとき ブラジルの大学などの研究では、23人の評価者がチョコを3口続けて食べ、1口ごとの味の流れを記録しました[4]。要旨によると、カカオの多いチョコで主役になった味が、好きの評価の高さと結びつきました。渋みについては、ワインの研究があります。タンニンを足した白ワインを3口続けて飲むと、渋みの続く時間が長くなりました[5]。チョコでも同じように渋みが積み重なるかは、確かめられていません。

03 開発への使い方後味は、試作の評価にどう入れる?

1かけ目の好き度に加えて、味の流れを時間で記録し、飲み込んだあとの渋みと次の1かけを食べたい気持ちを別に測ることです。後から「始め・中・終わり」を選ぶ簡単な方法でも、食べながら記録した結果とほぼ同じ違いが出ました。

1

配合・工程: カカオ分か豆のどちらか1つを動かす

一般的なダークではカカオ分が上がるほど苦みが主役になる割合が増え、産地を限ったダークではカカオ分の影響は小さいか見られませんでした[1]。後味を動かしたいときは、同じ豆でカカオ分だけを変えるか、同じカカオ分で豆の産地だけを変えるかの、どちらか1つにします。研究は市販品の比較で、豆・発酵・焙煎も同時に違っています。

目安 1条件2〜3段階。ほかの条件は固定

2

評価: 時間を追う方法と、飲み込んだ後の点数を組み合わせる

一番目立つ味を時間で追う方法(TDS法)が組めないときは、食べ終わってから「始め・中・終わり」の味を1語ずつ選ぶ方法を使えます。フランスの研究では、計129人で両者がほぼ同じ違いを示しました[6][7]。飲み込んだ1分後に、残る渋さと次の1かけを食べたい気持ちを点数にし、3口続けたときの変化も見ます[4][5]。食べ方は指定します(口どけの速さで香りの感じ方は変わる?)。

目安 1回3種類まで、1かけ約4g、間に口をすすぐ

3

品質管理・表示: 後味の基準品を持ち、カカオ分の表示と味をそろえる

苦みや渋みは豆や処理で変わるので[1]、ロットが変わったときは基準品と後味を比べます。カカオ分の数字だけでは味の流れは決まらないので、表示する苦さの目安と実際の味がずれないかも確かめます。カカオ分の表示の決まりは、この記事では確かめていません。

目安 豆のロットが変わるたびに基準品と比較

研究の条件は、市販のダーク11種(評価した人数は要旨で確かめられず)と、フランスの129人です。自社の配合やパネルとは違うので、自社のパネルで確かめ直します。後味の心地よさを知ることは、究極のチョコの条件「食べたあとにもう一度食べたくなる」と「もう一度買いたくなる」に近づく手がかりになりえますが、その関係はまだ研究されていません。甘さで苦みを包む考え方は甘さはどこまでがちょうどいい?、続けて食べて飽きる話はもう一度食べたくなるチョコは何が違う?で読めます。

04 まだわからないこと後味が「また食べたい」を変えるかは、わかっている?

わかっていません。チョコの後味の苦みや渋みと、次の1かけを食べたい気持ちや、また買いたい気持ちを結びつけて測った研究は、今回の調べでは見つかりませんでした。

  • 好きの気持ちが食べている間に変わることは、フランスの研究で68人がフレッシュチーズ6種を食べて示しました[3]。ふつうの好きの点数は、飲み込む前に決まっているかもしれない、とも述べています。チョコで同じことが言えるかは確かめられていません。
  • ウィーン大学の研究で、飲み込んだ後の渋みの多くは、統計的にはっきりした差になりませんでした。後味の強さを測った研究ではありません。
  • 渋みが口に積み重なる研究は、タンニンを足したワインのものです。
  • 後味が長いチョコと短いチョコで、どちらが好まれるかは調べられていません。

テンパリング温度ガイド研究一覧を見る

05よくある質問

ダークチョコを食べた後に残る渋みは何?

ウィーン大学の研究では、産地を限ったダークチョコで、飲み込んだ後に渋みが主役になりました。著者らは、ダークチョコに多いポリフェノールが苦みと渋みのもとになると説明しています。

カカオ分が高いと、後味も苦くなる?

同じ研究では、産地を限らない一般的なダークで、カカオ分が上がるほど苦みが主役になる割合が増えました。カカオ分54.5〜60%では、最初から最後まで甘さが主役でした。

後味がいいチョコほど、また食べたくなる?

そう示した研究は見つかりませんでした。好きの気持ちが食べている間に変わることはチーズの研究で示されていますが、チョコの後味と食べたい気持ちの関係は、まだ確かめられていません。