食べ慣れると苦いチョコが好きになる?95人が2週間毎日食べた研究では、70%チョコの好き度は変わらなかった

新しいダークチョコを試食会に出すと、「苦い」という声で点数が伸びないことがあります。食べ慣れれば好きになるのなら、1回の試食で落とすのは早すぎるかもしれません。デンマークの研究では、95人が2週間毎日チョコを食べても、70%のダークを含むどのチョコでも好き度は変わりませんでした。ただ、チョコ以外の苦い飲み物では1週間で好き度が上がったという研究もあり、結果は分かれています。
結論
- デンマークの95人が5種類のチョコのうち1種類を2週間毎日食べた研究では、70%のダークチョコを含むどの群でも、食べる前と後の好き度に意味のある差はなかった。著者らは「繰り返し食べさせる試験は、チョコの長い目で見た好き度を予測するのに役立たなかった」と結論した。
- チョコ以外の研究では、市販のほろ苦い飲み物を家で1日1回、7日間飲むと、好き度の評価が68%上がった。一方、チョコを15日間毎日食べた別の研究では、味の好ましさは下がった。
- 新しいチョコ2種類と定番1種類を4週間あいだに食べた研究では、新しい1種類だけ好き度がはっきり上がった。どんなチョコなら食べ慣れて好きになるのかは、まだわかっていない。
01 どんな研究かチョコを毎日食べ続けると、好き度は変わる?
デンマークの Sørensen らは、95人の消費者に5種類のチョコのうち1種類を2週間毎日食べてもらい、始めと終わりの好き度を比べました。目的は、新製品の長い目で見た好き度を、繰り返し食べさせる試験で予測できるかを確かめることでした。
Sørensen JG, Wæhrens SS, Byrne DV(2015)[1]
新しいチョコ3種類(シナモンとカルダモン入り、市販のビーツ風味入り、手作りのビーツ風味入り)と、すでにあるチョコ2種類(カカオ70%のチョコ、リコリス入りのチョコ)を用意した。参加者は1種類を2週間毎日食べ、3日目と10日目には別のサンプルをはさんだ。好き度、気持ちの高まり(覚醒度)、複雑さを付けてもらったが、どの群でも食べる前と後の好き度に意味のある差は出なかった。
対象: デンマークの消費者95人、5種類のチョコ、2週間 / 限界: 要旨で確かめた範囲で、1群の人数・好き度の点数・研究者の所属は確かめられなかった。苦さだけを変えた比較ではない。
リコリス入りとシナモン・カルダモン入りでは、覚醒度と複雑さの評価が途中で下がり、終わりにかけて戻りました[1]。好き度は最後まで動きませんでした。著者らは、チョコの好き度が安定していたのは、チョコがもともと「ごほうび」になる食べ物だからではないかと考えています。そのうえで、ほかの食品では、繰り返し食べさせる試験に余分な費用をかける意味があるかもしれない、とも書いています。
02 わかった数字食べ慣れると、好き度はどれくらい動く?
チョコの研究では「変わらない」「下がる」「新しい1種類だけ上がる」と結果が分かれました。好き度がはっきり上がったのは、チョコ以外の苦い飲み物の研究で、7日間で68%でした。
| 研究 | 食べたもの・期間 | 好き度の変化 |
|---|---|---|
| Sørensen ら 2015 [1] | チョコ5種類(70%を含む)・2週間毎日 | どの群も差なし |
| Næs ら 2015 [4] | 定番1種類・新しい2種類・4週間 | 定番はほぼ同じ(少し下がった)、新しい1種類が上がった |
| Hetherington ら 2000 [3] | チョコかフライドポテト・15日間毎日 | チョコだけ下がった |
| Stein ら 2003 [2] | ほろ苦い飲み物(チョコではない)・7日間 | 68%上がった |
どれも要旨で確かめた結果です。研究ごとに人数・尺度・食べる場所が違うので、数字どうしを直接は比べられません。
米国のモネル化学感覚研究所の Stein らの研究では、参加者は好きな場所で飲み物を飲み、研究室でだけ味わった比べる用のサンプルの評価は変わりませんでした[2]。健康に関する情報を伝えても、感じ方の変化には効かず、飲む量にだけ少し効く傾向がありました。
Hetherington らの研究では、チョコを食べ続けた人は、研究室の外でチョコを食べる回数も減りました。ただ、研究室で好きなだけ食べてもらった量は変わりませんでした[3]。日をまたいだ食べ飽きはもう一度食べたくなるチョコは何が違う?で詳しく扱っています。
03 開発への使い方新製品を1回の試食で決めてもいい?
定番に近いチョコなら、1回の試食と2週間後の好き度が変わらなかった研究があります。見慣れない味の新製品は、4週間で好き度が上がった例があるので、1回で落とす前に繰り返しの評価を検討する価値があります。
配合・工程: 苦さを決める条件を1つだけ動かす
カカオ分を上げると、苦みだけでなく香りや後味もいっしょに変わります。食べ慣れの影響を見たいときは、同じ豆で配合だけを2段階にした試作を用意します。苦みの感じ方とカカオ分の関係はカカオ分が高いほど苦い?で整理しています。
目安 1条件2段階。豆・焙煎・練りは固定
評価: 1回目の点数と、繰り返したあとの点数を両方とる
研究の型にならい、同じ人に初日と最終日に好き度を付けてもらいます。間は家で毎日1かけ食べてもらい、3口続けたときの下がり方も見ます。研究で使われた期間は2週間と4週間でした[1][4]。苦い飲み物の研究では、研究室でだけ味わった比べる用のサンプルの評価は変わらなかったので[2]、繰り返さない群も置きます。
目安 試作1種類に1群。2〜4週間、初日と最終日に評価
品質管理・表示: 繰り返しの試験に使う試作はロットをそろえる
2週間のあいだに試作のロットが変わると、食べ慣れの変化なのか中身の変化なのか区別できません。1回分を小分けにして同じ条件で保存し、ブルームが出ていないかを毎回見ます(チョコは冷蔵庫に入れていい?)。
目安 期間中は同じロット。保存温度を記録
研究の条件は、デンマーク・ノルウェー・米国の消費者で、研究ごとにチョコの種類も期間も違います。自社の製品と食べる人で確かめ直します。食べ慣れて好き度が上がるチョコは、究極のチョコの条件「食べたあとにもう一度食べたくなる」に近づく手がかりになりえますが、どんな配合ならそうなるかは研究されていません。
04 まだわからないこと苦いチョコは、何回食べれば好きになる?
わかっていません。カカオ分の高いダークチョコだけを選び、苦さの違う試作で食べ慣れの効果を比べた研究は、今回の調べでは見つかりませんでした。
- 70%のチョコの結果は、デンマークの1つの研究の1群だけです。苦いチョコに慣れていない人だけを集めた研究は見つかりませんでした。
- 68%上がったのはチョコではなく飲み物で、飲んだ人の人数は要旨で確かめられませんでした。チョコで同じことが起きるかはわかりません。
- Næs らの研究で、好き度が上がった新しいチョコが、どんな味だったか、どれだけ上がったかは要旨に書かれておらず、確かめられませんでした。ブランド名を知らせたうえでの評価でした。
- 食べ慣れて好き度が上がった人が、実際にまた買うかを追った研究は見つかりませんでした。
05よくある質問
苦いダークチョコは食べ慣れると好きになる?
チョコでははっきりしません。デンマークの95人が2週間毎日食べた研究では、70%のチョコを含むどの群でも、食べる前と後の好き度に意味のある差はありませんでした。チョコ以外のほろ苦い飲み物では、7日間で好き度の評価が68%上がった研究があります。
チョコを毎日食べると飽きる?
飽きたという研究があります。21人がチョコを15日間毎日食べた研究では、味の好ましさの評価が下がり、研究室の外でチョコを食べる回数も減りました。同じ期間、フライドポテトでは下がりませんでした。
新しいチョコの評価は1回の試食で決めていい?
定番に近いチョコは、1回の試食と繰り返し食べたあとの好き度が変わらなかった研究があります。一方、新しいチョコ2種類のうち1種類は、4週間で好き度がはっきり上がりました。見慣れない味の新製品は、繰り返しの評価を検討する価値があります。
出典
- Sørensen JG, Wæhrens SS, Byrne DV (2015). Predicting and Understanding Long-Term Consumer Liking of Standard Versus Novel Chocolate: A Repeated Exposure Study. Journal of Sensory Studies, 30(5), 370–380.(要旨で確認) https://doi.org/10.1111/joss.12164
- Stein LJ, Nagai H, Nakagawa M, Beauchamp GK (2003). Effects of repeated exposure and health-related information on hedonic evaluation and acceptance of a bitter beverage. Appetite, 40(2), 119–129.(要旨で確認) https://doi.org/10.1016/s0195-6663(02)00173-3
- Hetherington MM, Bell A, Rolls BJ (2000). Effects of repeat consumption on pleasantness, preference and intake. British Food Journal, 102(7), 507–521.(要旨で確認) https://doi.org/10.1108/00070700010336517
- Næs T, Segtnan A, Granli BS, Menichelli E, Hersleth M (2015). Stability in consumer responses to familiar and new chocolates during a period of exposure. Food Quality and Preference, 39, 176–182.(要旨で確認) https://doi.org/10.1016/j.foodqual.2014.07.015
- Hong JH (2025). How we learn to like: the role of perceptual learning in development of liking, quality perception, and appreciation. Food Science and Biotechnology, 34, 3453–3472.(要旨で確認) https://doi.org/10.1007/s10068-025-01857-4


