バニラやスパイスを足すとチョコの香りはどう変わる?バニラ3産地の比較では、チョコの中で産地の差が小さくなった

チョコの配合にバニラやシナモンを足すと、香りはどう変わるのでしょうか。3つの産地のバニラを白とミルクのチョコに入れた研究では、産地による香りの違いは、砂糖水の中よりチョコの中で小さくなり、ミルクより白いチョコで目立ちました。足した香りは、チョコの中で別の香りに変わることもあります。
結論
- マダガスカル・インドネシア・パプアニューギニアのバニラを白とミルクのチョコに入れて比べると、パプアニューギニアのものだけがアーモンドやアニスのような香りで違っていた。マダガスカルとインドネシアの違いは、チョコの中では小さくなった。
- インドネシアのバニラは、砂糖水では木のような香りだったが、チョコの中ではその香りが弱まり、乳の香りが引き立った。消費者の好みには、平均すると産地ではっきりした差はなかった。
- トルコの研究では、シナモンの粉4.2%を練りの最初に足すと、練ったあとに新しい香りの成分ができた。バニラの香りで甘く感じる研究は砂糖液などのもので、チョコで砂糖を減らせるかはわかっていない。
01 どんな研究かバニラの産地で、チョコの香りは変わる?
Januszewskaらは、3つの産地のバニラを白とミルクのチョコに入れ、訓練した評価者・一般の人・4か国の消費者に味わってもらい、香りの成分も機械で調べました。産地の違いはチョコの中では小さくなりました。
Januszewska R ら / ベルギーのチョコ原料メーカーとフランスのバニラ原料の会社の研究者(2020)[1]
マダガスカル・インドネシア・パプアニューギニアのバニラを、砂糖水・白いチョコ・ミルクチョコに入れて比べた。パプアニューギニアのものはアーモンドやアニスのような香りで、ほかの2つと違った。マダガスカルとインドネシアの違いは、チョコの中では小さくなった。どの産地でも、香りの主役はグアイアコールとバニリンだった。
対象: 白とミルクのチョコ、ベルギー在住の人の食べ比べ、ベルギー・フランス・スウェーデン・カナダの消費者 / 限界: 著者はチョコとバニラの原料を扱う会社の研究者。ダークチョコは調べていない。人数は要旨に書かれていない。要旨で照合。
砂糖水の中では、マダガスカルのバニラは甘い樹脂のような香り(バルサミック)、インドネシアのものは木のような香りがしました[1]。ところがチョコに入れると、インドネシアのバニラは木の香りが弱まり、乳の香りを引き立てる方向に変わりました。著者らは、産地より、バニラの植物としての種類の違いのほうが、チョコの香りの違いに大きく効いたとまとめています。
香りの成分を調べると、パプアニューギニアのアニスのような香りにはアニスアルデヒドが、インドネシアのものには果物のような香りの成分(2-メチル酪酸エチルなど)がかかわっていました。違いが見えやすかったのは白いチョコで、ミルクチョコでは目立ちにくくなりました。そして、消費者の好みには、平均すると産地ではっきりした差は出ませんでした。
02 わかった数字スパイスを足すと、香りの成分はどう変わる?
トルコのガズィアンテプ大学の研究では、シナモンの粉4.2%を練りの最初に入れ、7時間練ると、26の香りの成分が見つかり、そのうち11が香りとして感じられる成分でした。
AlbakとTekinは、研究室用の練り機で、ダークチョコの材料にシナモンの粉を入れて練りました[2]。練りは、50℃で2時間、80℃で4時間、そのあと1時間かけて45℃まで下げる3段階です。練ったあとのシナモンチョコからは26の香りの成分が見つかり、シナモンの香りのもとのシナモンアルデヒドは、練ったあとにできていました。足した香りが、そのまま残るだけではないということです。
評価者はシナモンチョコを「とても受け入れられる」と答えましたが、ざらつきや硬さは好まれる水準を下回りました[2]。なお、評価者は要旨では「訓練した評価者」、本文では「訓練していない評価者」と書かれていて、どちらかは確かめられませんでした。
香りで甘さの感じ方が変わる研究もあります。デンマークのオーフス大学のBertelsenらは、砂糖2.5%と同じ甘さにそろえた3種類の甘味の試料(砂糖だけのものを含む)に、バニラの香りを足すかどうかで比べました[3]。中国(159人)でもデンマーク(161人)でも、バニラの香りを足したほうが甘いと評価され、デンマークの人のほうが上がり方が大きくなりました。日本の坂井らは、バニラの香りを鼻から吸っても、口の奥から鼻へ抜けるように出しても、甘味料の液の甘さの評価が上がったと報告しています[4]。舌ではなく、においの感覚で起きていると考えられています。
03 開発への使い方バニラやスパイスは、どう選んで評価する?
足した香りは、ベースのチョコや工程によって、感じ方も成分も変わりました。香料は砂糖水ではなく自社のベースに入れて比べ、加える工程と口当たりも一緒に評価します。
香料は実際のベースに入れて比べ、加える工程も条件にする
バニラの産地の差は、砂糖水よりチョコの中で小さくなり、ミルクより白いチョコで目立ちました。原料の選定は、自社の白・ミルク・ダークのベースに入れた状態で行います。シナモンは練りの最初に入れると練ったあとに新しい香りの成分ができていたので、練りの前に入れるか後に入れるかも1つの条件として比べます。練りの時間と香りはコンチングは何をしている?へ。
目安 1回の試作で変えるのは、香料の種類か加える工程のどちらか1つ
香りの特徴と好みを別のパネルで取り、甘さは鼻をつまむ条件と比べる
研究は、訓練した評価者で香りの特徴を、消費者で好みを調べ、香りが違っても好みには平均すると産地の差が出ませんでした。甘さへの効き目はにおいの感覚で起きると考えられているので、鼻をつまむ条件と比べると、香りで甘く感じた分を分けられます。粉のスパイスは、ざらつき・硬さの評価も入れます。
目安 香料あり・なしの2種で、鼻をつまむ・つままないの4通り
「香りで砂糖を減らせる」とは書かず、香料の切り替えは基準品と比べる
バニラの香りで甘く感じた研究は甘味料の液や試料のもので、チョコで砂糖を減らしても同じ甘さに感じるかは確かめられていません。減らした砂糖を香りで補えると説明する前に、自社の製品で確かめます。香料の産地や種類を変えたときは、基準品と並べて香りを確かめます。
目安 香料のロットや仕入れ先が変わるたびに1回
バニラの研究はチョコとバニラの原料を扱う会社の研究者による白とミルクのチョコの研究、シナモンの研究は研究室用の練り機での試作で、自社の設備・ベース・量とは条件が違います。チョコそのものの香りはチョコの香りは何でできている?、甘さの好みは甘さはどこまでがちょうどいい?で読めます。香りの組み合わせが「もう一度食べたくなる」につながるかは、まだ確かめた研究がありません。
04 まだわからないこと香りを足す研究で、足りないことは?
ダークチョコにバニラを入れた比べ方や、シナモン以外のスパイスを入れた研究は見つかりませんでした。バニラの香りでチョコの砂糖を減らせるかも、確かめられていません。
- バニラの産地の研究は白とミルクのチョコだけで、ダークチョコで同じ結果になるかはわかりません。
- バニラの香りで甘く感じる研究は甘味料の液や試料のもので、チョコで砂糖を減らしても同じ甘さに感じるかは調べられていません。
- カルダモンや唐辛子など、シナモン以外のスパイスをチョコに入れて香りを調べた研究は、今回は確かめられませんでした。
- 研究と違う量・工程・設備で入れたとき、同じ変化が起きるかはわかりません。
05よくある質問
チョコにバニラを入れると何が変わる?
研究では、バニラの香りの主役はグアイアコールとバニリンで、産地によってアーモンドやアニス、木のような香りが加わりました。チョコの中では産地の違いが小さくなり、白いチョコで違いが目立ちました。
バニラの産地で、チョコはおいしくなる?
4か国の消費者の試食では、平均すると、どの産地のバニラを入れたチョコが特に好まれるという差は出ませんでした。香りは違っても、好みは人によって分かれると考えられます。
バニラの香りで甘く感じるのは本当?
甘味料の液や試料の研究では、バニラの香りを足すと甘いと評価されました。中国とデンマークの消費者でも同じ向きでした。チョコで砂糖を減らしても同じように感じるかは、まだ調べられていません。
シナモンを入れるといつ香りが出る?
トルコの研究では、シナモンの粉を練りの最初に入れ、7時間練ったあとに、シナモンの香りの成分を含む新しい香りが見つかりました。ただし粉を足すと、ざらつきや硬さは好まれにくくなりました。
出典
- Januszewska R, Giret E, Clement F, et al. 2020. Impact of vanilla origins on sensory characteristics of chocolate. Food Research International, 137, 109313.
- Albak F, Tekin AR 2015. Effect of cinnamon powder addition during conching on the flavor of dark chocolate mass. Journal of Food Science and Technology, 52(4), 1960–1970.
- Bertelsen AS, Zeng Y, Mielby LA, Sun YX, Byrne DV, Kidmose U 2020. Cross-modal effect of vanilla aroma on sweetness of different sweeteners among Chinese and Danish consumers. Food Quality and Preference, 87, 104036.
- Sakai N, Kobayakawa T, Gotow N, Saito S, Imada S 2001. Enhancement of sweetness ratings of aspartame by a vanilla odor presented either by orthonasal or retronasal routes. Perceptual and Motor Skills, 92(3), 1002–1008.


