コンチングは長く練るほどうまくなる?ダークチョコ200kgの機械測定では、練るほど酢酸などが減った

コンチングは、すりつぶしたチョコの生地を温めながら何時間も練り続ける工程です。長く練るほどおいしくなるのでしょうか。200kgのダークチョコの生地を1時間ごとに調べたドイツの研究では、練るほど酸っぱいにおいの酢酸などが減り、生地はさらさらになりました。ただしこの研究は、人が食べた評価を測っていません。「何時間がいちばんおいしいか」は、まだ研究の答えがない問いです。練りの時間と温度を決める人に向けて、測られていることと空いていることを分けて整理します。
結論
- コンチングの役目は主に2つと整理されている。香りの成分の量や生地の中での居場所を変えることと、生地を流れやすくすることだ(Augusto・Bolini 2022の総説)。
- Guckenbiehlら(2024)の試験では、60℃で6時間練る間に、測った6つの香りの成分がおおむね減り続けた。80℃では減り方が大きく、リナロールは78.0%減った。生地の粘りも練るほど下がった。
- 何時間練るとおいしいかを人の評価で確かめた研究は少ない。ガーナ産の豆の試食研究では、練らないチョコのほうが果物・バナナのような風味が強く評価された。
01 どんな研究か200kgの生地を練りながら、何を測った?
ドイツのフラウンホーファー研究所などのGuckenbiehlら(2024)は、カカオ分60%のダークチョコの生地を工場用の機械で練り、1時間ごとに6時間まで、香りの成分6種類の量と生地の粘りを測りました。
Guckenbiehl Y ほか / フラウンホーファー研究所IVV など(2024)[1]
練る温度(60℃と80℃)、回転の向き、機械の壁に前の回の生地が残っているかを変えて比べた。香りの成分は練るほどおおむね減り、とくに80℃で大きく減った。生地の粘りも練るほど下がった。著者らは、香りを残すことと生地をさらさらにすることは、高い温度では両立しにくく、折り合いが必要だとまとめている。
対象: カカオマス45%・砂糖40%・においを抜いたカカオバター15%の生地(カカオ分60%)、1回200kgの工場用の練り機 / 限界: 機械の測定だけで、人が食べた評価はしていない。資金はドイツ連邦経済・気候保護省の産業共同研究の制度。
測った6つの成分は、酢酸、ベンズアルデヒド、リナロール、テトラメチルピラジン、2-フェニルエタノール、酢酸2-フェニルエチルです[1]。酢酸は、豆の発酵でできる酢のようなにおいの成分です。チョコの酸っぱさの元の1つとされます。
練る間に、成分の「居場所」も変わりました[1]。水になじみにくい成分ほど、脂肪(カカオバター)の側に集まり、最大で91.7%が脂肪の側にありました。酢酸と2-フェニルエタノールは、カカオや砂糖の粒の側に多く残りました。総説では、こうした居場所の変化が、口の中で香りが出てくる速さを変えると説明されています[3]。
同じチームの以前の試験でも、測った5つの成分はすべて、練る時間とともに減りました[2]。最も大きく減ったのは酢酸で約60%、最も小さかったのはリナロールで最大26%でした。沸点が低い成分、水になじみにくい成分ほど大きく減る傾向でした。
02 わかった数字練る時間と温度で、香りと粘りはどう変わる?
60℃で6時間練ると香りの成分はおおむね減り、80℃ではさらに大きく減りました。粘りも練るほど下がり、80℃のほうが大きく下がりました。
| 成分 | 60℃で練ったとき | 80℃で練ったとき |
|---|---|---|
| 酢酸 | 31.9%減 | 42.3%減 |
| テトラメチルピラジン | 19.6%減 | 70.7%減 |
| ベンズアルデヒド | 25.0%減 | 52.5%減 |
| 2-フェニルエタノール | 19.8%減 | 47.1%減 |
| リナロール | 15.8%減 | 78.0%減 |
| 酢酸2-フェニルエチル | 2.6%減 | 24.3%減 |
練り始め1時間から6時間までの、脂肪の側の濃さの変化。どちらも機械の壁に前の回の生地が残っている条件で、回転は前向き(Guckenbiehlら 2024 [1])。
人の評価では コペンハーゲン大学のOwusuらは、ガーナ産の豆からチョコを作り、練らないものと、80℃で6時間または8時間練ったものを比べました[4]。8人の審査員が16項目を採点し、8項目で差が出ました。練らないチョコは、果物のような風味が6.9と6.6、バナナのような風味が8.6と6.1でした。練ったチョコは、果物が3.1〜4.8、バナナが3.4〜4.2で、どちらも低めでした。著者らは、コンチングがバナナや果物の風味の感じ方を下げるようだと考えています。
ただし、練らなかったチョコは120℃45分で焙煎し、練ったチョコは焙煎なしか150℃30分でした。練る時間と焙煎が同時に違うため、練る効果だけとは言い切れません。共著者の1人は菓子メーカーの社員で、デンマークの国際開発機関とその菓子メーカーが資金を出しています。
03 開発への使い方練る時間と温度は、試作でどう決める?
練る時間と温度を分けて振り、香りの成分と粘りの機械測定と、訓練したパネルの官能評価を並べることです。研究では、高い温度ほど香りの成分が減り、粘りも下がりました。著者らは、香りを残すことと生地を流れやすくすることは、高い温度では両立しにくいとまとめています。
配合・工程: 温度を決めて時間を振る(またはその逆)
Guckenbiehlらは60℃と80℃で、1時間ごとに6時間まで比べました[1]。試作では、同じ生地から1時間・3時間・6時間で取り出すなど、1つの条件だけを動かします。Owusuらの試食は焙煎の条件も同時に違ったので[4]、焙煎と練りは同時に変えません。回転の向きや、機械の壁に前の回の生地が残っているかも結果を変えうる条件として、そろえて記録します[1]。
目安 1条件2〜3段階。豆・配合・焙煎は固定
評価: 香りの成分と粘りを測り、果物・酸っぱさを官能で付ける
機械の測定では、酢酸・リナロール・テトラメチルピラジンなど研究と同じ成分と、生地の粘りを取り出すたびに測ります[1]。成分は脂肪の側と粒の側で居場所が違ったので、どちらで測ったかをそろえます。官能評価は、Owusuらのように訓練した審査員(8人、16項目)で、酸っぱさ・果物・バナナ・ココアらしさなどを採点します[4]。
目安 試料は番号で伏せ、同じ回に並べて評価
品質管理: 生地の温度と運転条件をロットごとに残す
80℃で6時間練ると、花のような香りのリナロールは78.0%減りました[1]。花や果物の香りを特徴にする豆では、長く高い温度の練りがその香りを減らす方向に働く可能性があります。練り機の中の生地の温度・時間・回転の向きをロットごとに記録し、香りや流れやすさがぶれたときに条件を追えるようにします。
目安 1時間ごとに生地の温度を記録
研究の条件は、カカオ分60%の生地を200kgの工場用の練り機で6時間練った機械の測定と、ガーナ産の豆を8人で評価した試食で、自社の生地・練り機とは違うため、試作で確かめる価値がある条件として使います。練る前の焙煎は焙煎の温度と時間でチョコの香りは変わる?、舌ざわりに効く粒の細かさはなめらかさは粒の大きさで決まる?、練った後の温度の扱いはテンパリングは何度で何をしている?で読めます。
04 まだわからないことコンチングの「ちょうどいい時間」はわかっている?
わかっていません。練ると香りの成分が減り、生地がさらさらになることは測られていますが、何時間でいちばんおいしくなるかを人の評価で確かめた研究は、今回の調べでは見つかりませんでした。
- Guckenbiehlらの試験は機械の測定だけで、人が食べた評価はしていません。
- Owusuらの試食では、練ったほうが果物の風味が低めでしたが、焙煎の条件も違い、練る効果だけを分けられていません。
- 香りの成分が減ることが、おいしさに良いのか悪いのかは成分によって違うと考えられます。酸っぱさは減ってほしくても、花や果物のような香りは残したい、という場合もあります。
- Guckenbiehlらの練り機は1回200kgの工場用です。練り方や空気の入れ替わり方が違う機械で同じ結果になるかは確かめられていません。
- 今回読んだ試験は6〜8時間までで、それより長く練った場合の変化は測られていません。
05よくある質問
チョコのコンチングとは何をする工程?
すりつぶしたチョコの生地を、温めながら何時間も混ぜ続ける工程です。総説では、香りの成分の量や生地の中での居場所を変えることと、生地を流れやすくすることが、主な役目と整理されています。
コンチングは長いほどおいしくなる?
研究ではわかっていません。200kgのダークチョコの試験では、練るほど酢酸などの香りの成分が減り、生地はさらさらになりましたが、人が食べた評価は測っていません。ガーナ産の豆の試食では、練らないチョコのほうが果物の風味が強く評価されました。
コンチングでチョコの酸っぱさは減る?
酸っぱいにおいの成分である酢酸は、練るほど減りました。ドイツの試験では6時間で60℃なら31.9%、80℃なら42.3%減り、別の試験では約60%減りました。人が感じる酸っぱさがどれだけ減るかは測られていません。
出典
- Guckenbiehl Y, Morales Romero AM, Haug H, Ortner E, Rothkopf I, Schweiggert-Weisz U, Buettner A, Gola S 2024. Conching of dark chocolate – Processing impacts on aroma-active volatiles and viscosity of plastic masses. Current Research in Food Science, 9, 100909.
- Guckenbiehl Y, Martin A, Ortner E, Rothkopf I, Schweiggert-Weisz U, Buettner A, Naumann-Gola S 2022. Aroma-active volatiles and rheological characteristics of the plastic mass during conching of dark chocolate. Food Research International, 162, 112063.
- Augusto PPC, Bolini HMA 2022. The role of conching in chocolate flavor development: A review. Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety, 21, 3274–3296.
- Owusu M, Petersen MA, Heimdal H 2013. Relationship of sensory and instrumental aroma measurements of dark chocolate as influenced by fermentation method, roasting and conching conditions. Journal of Food Science and Technology, 50, 909–917.


