口どけと保存

チョコのなめらかさは粒の大きさで決まる?米国の味見実験では、約5µmの差に気づけた

約8分で読めます / 主役の研究: Breen ら 2019(ペンシルベニア州立大学)

研究の確かさ ★★☆ 中論文3本を照合
ナッツや果物をのせた円いチョコ
Photo: Steven Depolo from Grand Rapids, MI, USA / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

なめらかなチョコと、舌にざらっと残るチョコ。その差には、砂糖やカカオの粒の大きさが関わっていて、すりつぶし(精製)をどこまでかけるかは、口あたりと溶かしたときの流れやすさの両方を左右します。米国の味見実験では、溶かしたチョコの粒の大きさが約5µm(1mmの200分の1)違えば、一般の人でも区別できました。ただし、感じ分けられるかどうかは、舌の触覚の敏感さによって大きく違いました。

結論

  1. ペンシルベニア州立大学の実験では、市販品に多い粒の大きさの範囲で、溶かしたチョコの粒が約5µm違うと、ざらつきの差に気づけた。粒が大きくなるほど、気づける差も大きくなった。
  2. 粒が19µmと26µmの市販のダークチョコ2種類を比べると、舌の触覚が敏感な人は20人中17人がざらつく方を当てたが、敏感でない人は24人中12人だった。
  3. 「25〜35µmを超えるとざらつく」という業界の目安は、元のデータが見つからないと著者ら自身が書いている。粒は口あたりだけでなく、溶かしたときの流れやすさや硬さも変える。

01 どんな研究か舌はどこまで細かい粒の差を感じ分ける?

ペンシルベニア州立大学の Breen らが、粒の大きさだけを変えたダークチョコを作り、溶かして2つずつ味わってもらい「どちらがざらつくか」を選ぶ実験で、気づける最小の差を測りました。

Breen, Etter, Ziegler, Hayes / ペンシルベニア州立大学(2019)[1]

カカオマスと砂糖を一緒にすりつぶす機械の設定を変え、粒の大きさが違うダークチョコを何段階も作った。約38℃で溶かしたチョコ約4gを2つずつ出し、ざらつく方を選んでもらった。気づける最小の差(丁度可知差異)は、市販品に多い範囲で約5µmだった。

対象: 実験1は一般の成人50人と60人、実験2は別の51人 / 限界: 実験1は溶かしたチョコで、かんで食べる固形のチョコとは条件が違う。ざらつき以外の口あたりは調べていない。

ここでいう粒の大きさは「D90」という値です。チョコの中の粒を小さい順に並べたとき、全体の90%がそれ以下に入る大きさを指します。研究チームが測った市販のダークチョコ9種類のD90は19.2〜31.1µmでした。

実験2では、細い毛で舌を押して、押す力の差をどこまで感じ分けられるかを1人ずつ測りました。感じ分けられる力の差は人によって大きく違い、敏感な人と敏感でない人の2つの群に分かれました。そのうえで、粒の大きさが19.7µmと25.2µmの市販のダークチョコ2種類を、固形のまま食べ比べてもらいました。

著者らは、よく言われる「25〜35µmを超えると砂っぽく感じる」という目安について、元の出典を見つけられなかったと書いています。一番近いのは1967年の報告で、粒の20%が22µmを超えると粗すぎると判断された、というものでした。

02 わかった数字何µmの差なら、ざらつきに気づける?

溶かしたチョコでは、D90が26〜29µmあたりのとき、約5µmの差に気づけました。基準が大きくなるほど気づける差も大きくなり、その比率はおよそ0.17でした。

約5µm溶かしたチョコで気づけた粒の差(基準26.5µmで5.04µm、29.3µmで4.44µm)
0.17気づける差 ÷ 基準の大きさの平均(ウェーバー比)。甘さ0.13・塩味0.15と同じくらい
17/20人舌の触覚が敏感な人のうち、ざらつく方のチョコを当てた人数
12/24人敏感でない人で当てた人数(半分は当てずっぽうと同じ)

粒の大きさは、口あたり以外も変えます。英国の Afoakwa らは、ダークチョコのD90を18・25・35・50µmに、脂肪を25・30・35%に、乳化剤のレシチンを0.3%と0.5%に変えて作り分けました[2]。溶かしたチョコは、粒が大きいほど流れやすくなりました(粘りや、流れ始めるのに必要な力が小さくなった)。流れやすさに一番効いたのは脂肪の量で、次が粒の大きさ、その次がレシチンでした。

同じチームの別の論文では、粒が大きいほど、固めたチョコの硬さが下がりました[3]。脂肪25%・レシチン0.3%の配合では、硬さはおよそ7062gから5546gの範囲で変わりました。脂肪やレシチンが多いと、粒の大きさの影響は小さくなりました。粒の大きさと脂肪の量は、表面の色の見え方にも関わっていました。

03 開発への使い方粒の大きさの目標を、どう決めて確かめる?

粒の目標値は、よく言われる目安ではなく、自社の製品と買い手で決めます。すりつぶしの条件を1つだけ変えてD90を測り、3つのうち1つを当てる試験でざらつきの差に気づけるかを確かめ、流れやすさと硬さも同時に記録します。

1

すりつぶしの条件だけを変え、D90と流れやすさ・硬さを一緒に測る

研究と同じく、機械の設定だけを変えて粒の大きさを作り分け、D90を測ります。粒が大きいほど溶かしたときに流れやすく、固めたときの硬さは下がりました。流れやすさに一番効いたのは脂肪の量で、次が粒の大きさ、その次がレシチンだったので、粒を変える試作では脂肪とレシチンの量を固定します。練る工程はコンチングは何をしている?で扱います。

目安 すりつぶしの条件2〜3段階、ほかの配合は固定

2

3つのうち1つを当てる試験で、パネルの敏感さも考える

2種類を同じもの2つ・違うもの1つの3つで出し、違うものを当ててもらいます。研究にならって溶かして約4gずつ出すと、かみ方の違いを減らせます。舌の触覚の敏感さで当たり方が大きく違ったので(20人中17人と24人中12人)、人数を多めにするか、敏感さで分けて結果を見ます。差に気づけても好みが上がるとは限らないので、好みは別に聞きます。

目安 1人3回。溶かした試料は同じ温度で出す

3

「25〜35µm」の目安をそのまま規格にしない

この目安は、元のデータが見つからないと著者ら自身が書いています。研究チームが測った市販のダークチョコ9種類のD90は19.2〜31.1µmでした。規格の幅は、自社の製品で差に気づけた幅をもとに決め(溶かしたチョコでは基準の約17%)、ロットごとにD90を測って幅に入っているかを確かめます。

目安 ロットごとにD90を1回

研究は米国の一般の成人約160人が、研究室で作ったダークチョコを主に溶かして味わったもので、固形でかんで食べる自社の製品や、ミルクチョコとは条件が違います。なめらかさには結晶の状態も関わります。口に入れたときの溶け方はチョコはなぜパキッと割れて口で溶ける?、カカオ分の違いはカカオ分が高いほど苦い?で読めます。

04 まだわからないこと粒となめらかさの関係で、何がわかっていない?

「何µmからざらつくか」の線は、まだ研究で引かれていません。固形のチョコをかんで食べたときに気づける差や、粒の形・粒の大きさのばらつきの影響も、確かめられていません。

  • 約5µmという差は、溶かしたチョコで測った値です。固形のチョコをかんだときに同じ差に気づけるかは調べられていません。
  • 「25〜35µmを超えるとざらつく」という目安の元のデータは、著者らにも見つけられませんでした。
  • 研究はD90という1つの値で比べています。大きな粒が少しだけ混じっている場合など、粒のばらつき方の影響はわかっていません。
  • 粒を細かくするほどおいしいと感じるか(好みとの関係)は、この研究では測っていません。
  • Afoakwa らの2本は要旨で照合しました。口あたりを人が評価した結果は、要旨には含まれていません。

テンパリング温度ガイド研究一覧を見る

05よくある質問

チョコが舌にざらざらするのはなぜ?

チョコの中の砂糖やカカオの固形分の粒が大きいと、舌がざらつきとして感じます。ペンシルベニア州立大学の実験では、市販品に多い大きさの範囲で、溶かしたチョコの粒が約5µm違うと、一般の人でもざらつきの差に気づけました。

何µm以下ならなめらかに感じる?

「25〜35µmを超えるとざらつく」とよく言われますが、その元のデータは見つからないと研究者自身が書いています。研究チームが測った市販のダークチョコ9種類の粒の大きさ(D90)は19.2〜31.1µmでした。

なめらかさの感じ方は人によって違う?

違います。舌の触覚の敏感さを測ったうえで、粒が19µmと26µmのチョコを比べると、敏感な人は20人中17人がざらつく方を当てましたが、敏感でない人は24人中12人で、当てずっぽうと変わりませんでした。

粒を細かくするとチョコは溶かしたとき流れにくくなる?

英国の Afoakwa らの研究では、粒が細かいほど溶かしたチョコの粘りが大きく、流れにくくなりました。ただし流れやすさに一番効いたのは脂肪の量で、粒の大きさはその次でした。

出典

  1. Breen SP, Etter NM, Ziegler GR, Hayes JE (2019). Oral somatosensatory acuity is related to particle size perception in chocolate. Scientific Reports, 9, 7437. https://doi.org/10.1038/s41598-019-43944-7
  2. Afoakwa EO, Paterson A, Fowler M (2008). Effects of particle size distribution and composition on rheological properties of dark chocolate. European Food Research and Technology, 226(6), 1259–1268. https://doi.org/10.1007/s00217-007-0652-6
  3. Afoakwa EO, Paterson A, Fowler M, Vieira J (2008). Particle size distribution and compositional effects on textural properties and appearance of dark chocolates. Journal of Food Engineering, 87(2), 181–190. https://doi.org/10.1016/j.jfoodeng.2007.11.025