感じ方

何個入りがうれしい?チョコ以外の贈り物の実験では、安いマフラーが高いコートより気前よく見えた

約7分で読めます / 主役の研究: Hsee 1998(シカゴ大学)と Many Labs 2 の追試 2018

研究の確かさ ★☆☆ 低論文5本を照合
古い贈り物用の缶
Photo: Adshead & Ramsay / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文と公的機関の資料をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

贈り物のチョコを企画するとき、「何個入りにするか」は値段と並ぶ大きな決めごとです。多いほど喜ばれそうですが、受け取る側の研究は別の答えを示しています。チョコ以外の贈り物の研究では、安いマフラーのほうが高いコートより「気前がいい」と受け取られ、7,646人の追試でも同じ結果でした。受け取る人は、量や値段そのものより、そのものの中での位置や、いちばんよいものの印象で判断しているようです。

結論

  1. シカゴ大学の Hsee の実験(83人)では、5〜50ドルの店の45ドルのマフラーをもらった人は、50〜500ドルの店の55ドルのコートをもらった人より、贈り主を気前がいいと評価した(5.63点と5.00点)。多くの国と地域で行われた大規模な追試の7,646人でも同じ向きだった(5.50点と4.61点)。
  2. 品物を1つだけ見て評価するとき、人は「少ないほうがよく見える」ことがある。並べて比べると、多いほうが選ばれやすくなる。別のチームの事前登録の追試(計403人)でも、1つだけ見たときの結果は再現された。
  3. よい品に、少し劣る品を足すと、受け取る側は全体を平均して評価が下がることがある、という研究もある。チョコの箱の個数を変えて、受け取る人の満足を比べた研究は見つからなかった。

01 どんな研究か贈り物の量や値段は、どう受け取られる?

シカゴ大学の Hsee は、留学前に友だちから送別の贈り物をもらった場面を想像してもらい、安いマフラーと高いコートのどちらかを見せて、贈り主の気前のよさを評価してもらいました。この実験は、2018年に大規模な追試で確かめられています。

Hsee CK / シカゴ大学(1998)[1]、追試: Klein RA ほか Many Labs 2(2018)[2]

83人の半分は「5〜50ドルのマフラーを売る店で買った45ドルのマフラー」、残りの半分は「50〜500ドルのコートを売る店で買った55ドルのコート」をもらったと想像した。値段は安いのに、マフラーの組のほうが贈り主を気前がいいと評価した。追試では、値段を物価の上昇に合わせて直し、ドルになじみのない国では地元の通貨に換えて行った。

対象: 元の実験は83人、追試は多くの国と地域の7,646人 / 限界: 想像した場面の評価で、実際に品物を受け取ってはいない。チョコの研究ではない。元の論文の本文は開けず、数字は追試の論文(著者が公開した原稿)で確かめた。

Hsee はこれを、1つだけを見て評価するとき、人は評価しやすい手がかり(そのものの値段の幅の中で高いか安いか)に頼るためだと説明しています。2023年の Vonasch らの事前登録の追試(計403人)でも、1つだけ見て評価すると「少ないほうがよい」となる結果が3つの研究すべてで支持されました[3]。並べて比べると「多いほうがよい」となる結果は、それより弱いものでした。

02 わかった数字安い贈り物のほうが、どれだけ気前よく見えた?

気前のよさの平均は、元の実験でマフラー5.63点・コート5.00点、7,646人の追試でマフラー5.50点・コート4.61点でした。値段が10ドル安いほうが、どちらでも高く評価されました。

5.63と5.00贈り主の気前のよさ(45ドルのマフラーと55ドルのコート、元の実験83人)[2]
5.50と4.61同じ評価の追試(7,646人)。効果の大きさ d=0.78 で、元の0.69より少し大きかった [2]
403人別のチームの事前登録の追試。1つだけ見て評価した3つの研究すべてで「少ないほうがよい」を支持 [3]
7つよい品に少し劣る品を足すと、受け取る側の評価が平均されて下がることを示した研究の数 [4]

足すと薄まる Weaver らは7つの研究で、見せる側は「よいものを足せば足すほど全体がよく見える」と考えがちだが、評価する側は全体を平均するように判断すると報告しました[4]。その結果、少しだけよいものを足すと、とてもよいものの印象が薄まり、見せる側の評価を下げてしまいます。見せる側は、セットを高そうに見せるためにお金を多く使う傾向も示されました。数字は要旨で確かめられませんでした。

一部だけの贈り物も喜ばれる ボストン大学の Kupor らは4つの研究で、欲しいものの一部だけを贈るとき、贈る側は「中途半端だと思われる」と心配するが、受け取る側は思ったより気持ちがこもっていると感じることを示しました[5]。友だちどうしの実際の贈り物でも同じでした。チョコの研究ではありません。

03 開発への使い方何個入りにするかは、どう決めて確かめる?

個数を増やすために質の落ちる粒を足さず、基準を満たす粒だけで組んだ案と比べることです。評価は、受け取る人と同じように、箱を1つだけ見て食べる形でもとります。

1

配合・工程: 「よい粒だけ」と「よい粒+足した粒」を作る

研究では、少し劣るものを足すと全体の評価が平均されて下がることがありました[4]。個数を増やすときは、増やす粒も同じ基準の試食を通したものにします。比べるのは個数だけで、粒の大きさと中身はそろえます。

目安 個数の違う2案。1粒の大きさ・中身は同じ

2

評価: 並べて比べる試食と、1箱だけの試食を両方行う

社内の試食は案を並べて比べがちですが、受け取る人は1箱だけを見ます。並べて比べると多いほうが選ばれ、1つだけ見ると逆になることがありました[1][3]。1人に1箱だけ渡して満足と「人にあげたいか」を聞く組を置きます。贈る人と受け取る人の見方は違うので[5]、両方の立場で聞きます。

目安 1案につき1箱だけの組を30人以上

3

品質管理・表示: 箱の大きさと中身をそろえる

箱や値段の見せ方で、中身以上に見せる工夫は勧めません。箱の大きさと個数が合っているか、内容量の表示と中身が合っているかを、ロットごとに確かめます。包装の大きさや内容量の表示の決まりは、この記事では確かめていません。

目安 包装の設計を変えるたびに確認

研究の条件は、米国などで贈り物を想像して評価したもので、日本のチョコの贈り物とは違います。自社の箱で確かめ直します。受け取る人が満足する個数を知ることは、究極のチョコの条件「誰かにあげたくなる」に近づく手がかりになりえますが、チョコで直接調べた研究はありません。種類の数と満足の研究はアソートの種類は多いほうがうれしい?、作り手の評価のゆがみは自分たちの試作は甘く評価しがち?で読めます。

04 まだわからないことチョコは何個入りがいちばんうれしい?

わかっていません。チョコの箱の個数を変えて、受け取る人の満足や「また買いたい」気持ちを比べた研究は、今回の調べでは見つかりませんでした。

  • マフラーとコートの研究は、品物の種類も値段の幅も違います。同じチョコで個数だけを変えた場合に同じことが起きるかは、わかりません。
  • 研究の多くは贈り物を想像した評価で、実際に食べたあとの満足は測っていません。
  • 日本のように、配る数が決まっている贈り物(職場で配るなど)では、個数の意味が違うかもしれません。その研究は見つかりませんでした。
  • Hsee の元の論文の本文と、Weaver らの研究の数字は、確かめられませんでした。

テンパリング温度ガイド研究一覧を見る

05よくある質問

贈り物のチョコは個数が多いほど喜ばれる?

チョコで調べた研究は見つかりませんでした。チョコ以外の贈り物の実験では、値段の安いマフラー(45ドル)のほうが高いコート(55ドル)より贈り主が気前よく見え、7,646人の追試でも同じでした。受け取る人は、量や値段そのものより、そのものの中での位置で判断しているようです。

詰め合わせにおまけを足すと評価は上がる?

下がることがあるという研究があります。7つの研究で、見せる側はよいものを足すほど全体がよく見えると考えがちですが、評価する側は全体を平均するように判断し、少しだけよいものを足すと評価が下がりました。チョコの研究ではありません。

チョコの試食で個数の違う箱を並べて比べていい?

並べて比べるだけでは不十分かもしれません。並べると多いほうが選ばれやすく、1つだけ見て評価すると少ないほうがよく見えることがありました。受け取る人は1箱だけを見るので、1箱だけ渡して評価してもらう組も置くと確かめられます。

出典

  1. Hsee CK (1998). Less is better: When low-value options are valued more highly than high-value options. Journal of Behavioral Decision Making, 11(2), 107–121.(本文は開けず、元の実験の数字は[2]で確認) https://doi.org/10.1002/(SICI)1099-0771(199806)11:2<107::AID-BDM292>3.0.CO;2-Y
  2. Klein RA, Vianello M, Hasselman F ほか (2018). Many Labs 2: Investigating Variation in Replicability Across Samples and Settings. Advances in Methods and Practices in Psychological Science, 1(4), 443–490.(数字は著者が公開した原稿 https://osf.io/9654g/ で確認) https://doi.org/10.1177/2515245918810225
  3. Vonasch AJ, Hung WY, Leung WY ほか (2023). “Less Is Better” in Separate Evaluations Versus “More Is Better” in Joint Evaluations: Mostly Successful Close Replication and Extension of Hsee (1998). Collabra: Psychology, 9(1), 77859.(要旨で確認) https://doi.org/10.1525/collabra.77859
  4. Weaver K, Garcia SM, Schwarz N (2012). The Presenter's Paradox. Journal of Consumer Research, 39(3), 445–460.(要旨で確認) https://doi.org/10.1086/664497
  5. Kupor D, Flynn F, Norton MI (2017). Half a Gift Is Not Half-Hearted: A Giver–Receiver Asymmetry in the Thoughtfulness of Partial Gifts. Personality and Social Psychology Bulletin, 43(12), 1686–1695.(要旨で確認) https://doi.org/10.1177/0146167217727003