感じ方

カカオ分の表示を見るとおいしく感じる?同じ70%でも脂肪分を変えると、108人の評価で苦みと甘さが変わった

約8分で読めます / 主役の研究: Brown et al. 2023

研究の確かさ ★★☆ 中論文2本と公正競争規約を照合
器に入ったココアパウダー
Photo: thecakeschool / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文と公的機関の資料をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

「カカオ70%」と書けば、買う人はある程度の苦さと濃さを思い浮かべます。ところが、日本の規約でのカカオ分にはココアバター(カカオの脂肪)も入るので、同じ70%でも中身の組み立ては1つではありません。数字と味がどこまで一致するのかを、脂肪分だけを変えた試食研究と、表示のルールの原典で確かめます。

結論

  1. チョコレート類の表示に関する公正競争規約では、カカオ分は「カカオニブ、カカオマス、ココアバター、ココアケーキ及びココアパウダーの水分を除いた合計量」と決められている。脂肪も脂肪以外のカカオの固形分も、まとめて1つの数字になる。
  2. ペンシルベニア州立大学の Brown ら(2023)が、カカオ70%のまま全体の脂肪分を30%・35%・40%に変えたダークチョコを108人に評価してもらうと、脂肪分が多いほど苦み・カカオの風味・口が乾く感じが弱く、甘さが強く感じられた。好き度は変わらなかった。
  3. 表示だけで期待と味がずれる研究では、高カカオの表示はふつうのダークより期待を上げず、何も知らせない試食で最も好まれなかった。カカオ分の数字の表示のしかたを定めた条文は、規約を通読した範囲では見当たらなかった。

01 どんな研究か同じ70%で、何を変えて食べ比べた?

Brown らは、ココアパウダーとココアバターを混ぜ直してカカオマスを作り、砂糖と合わせてカカオ70%のダークチョコを3種類作りました。違いは全体の脂肪分だけで、30%・35%・40%です。ふだんチョコを食べる108人が、味の強さと好き度を答えました。

Brown AL, Warren ER, Ingraham BW, Ziegler GR, Hopfer H / ペンシルベニア州立大学 食品科学科・官能評価センター(2023)[1]

脂肪分を30%から40%へ増やしても、好き度ははっきりとは変わらなかった。一方で、脂肪分が多いほど苦み、カカオの風味、口が乾く感じは弱まり、甘さは強く感じられた。ミルク好きかダーク好きかで、乾く感じの強さの感じ方が違った。

対象: ふだんチョコを食べる108人。カカオマスと砂糖の2材料のダークチョコ(カカオ70%)3種 / 限界: 要旨で照合した。1つの大学での1回の試食で、尺度の詳しい点数は確かめていない。米国農務省の食品農業研究所の資金。

この研究のきっかけは、豆と砂糖だけで作る小さな作り手のチョコです[1]。豆を混ぜずに1つの産地のカカオマスを使うと、カカオマスにもともと含まれる脂肪の量が豆ごとにばらつきます。そこで、脂肪の量だけを狙って変えられるように、ココアパウダーとココアバターから作り直したカカオマスを使いました。

砂糖と2材料のチョコで、カカオ分を70%に固定すると、脂肪分が増えたぶん、脂肪以外のカカオの固形分が減ります。水分を無視した概算では、脂肪分30%なら脂肪以外は40%、40%なら30%です。苦みのもとになる成分は脂肪以外の部分に多いと考えると、数字は同じ70%でも中身はかなり違っていたことになります(成分はこの研究では測られておらず、ここはこの記事の推測です)。

02 わかった数字カカオ分の数字には、何が入っている?

日本の規約では、カカオ分にカカオマス・ココアバター・ココアパウダーなどがすべて入ります。チョコレート生地はカカオ分35%以上かつココアバター18%以上と決まっていますが、脂肪とそれ以外の割合は数字からはわかりません。

30・35・40%カカオ70%のまま変えた全体の脂肪分。好き度は変わらず、苦みと甘さは変わった [1]
108人ふだんチョコを食べる人の数。3種を評価 [1]
35%以上規約のチョコレート生地のカカオ分(うちココアバター18%以上、水分3%以下)[2]
60%以上「チョコレート」と呼べる加工品の、チョコレート生地の割合(全重量に対して)[2]
生地の種類カカオ分ココアバターそのほかの条件
チョコレート生地35%以上18%以上水分3%以下
チョコレート生地(乳固形分で代える場合)21%以上18%以上カカオ分と乳固形分の合計35%以上、乳脂肪3%以上
準チョコレート生地(ア)15%以上3%以上脂肪分18%以上、水分3%以下
準チョコレート生地(イ)7%以上3%以上脂肪分18%以上、乳固形分12.5%以上(乳脂肪2%以上)、水分3%以下

チョコレート類の表示に関する公正競争規約 第2条第12項(令和6年10月1日施行の変更を含む版)から。割合はすべて全重量に対して。

規約は景品表示法第36条第1項にもとづくもので、全国チョコレート業公正取引協議会が相談・指導や違反の調査を行います[2]。第5条は不当な表示として、「特濃」「濃厚」を客観的な根拠なく使って特に優良であるかのように思わせる表示などを挙げています。一方、カカオ分の数字を包装の表に書くときの書き方を定めた条文は、規約と施行規則の全40ページを読んだ範囲では見当たりませんでした。

表示と期待のずれは、スペインの109人の研究でも見られました[3]。高カカオの表示は、ふつうのダークチョコより期待を上げませんでした。何も知らせずに食べると、高カカオのチョコが最も好まれませんでした。詳しい点数は産地の表示を見るとチョコはおいしく感じる?に、カカオ分と苦さの関係はカカオ分が高いほど苦い?にまとめています。

03 開発への使い方カカオ分の数字と味を、どうそろえる?

カカオ分は1つの数字でも、脂肪と脂肪以外の割合で苦みや甘さの感じ方が変わりえます。配合の規格は脂肪分と分けて持ち、評価では好き度と味の強さを別々に聞いて、表示の数字が約束する味と中身をずらさないようにします。

1

カカオ分を固定し、脂肪分だけを1条件変えて試作する

ココアバターを足すか、カカオマスを増やすかで、同じカカオ分でも脂肪以外のカカオの量が変わります。研究と同じく、カカオ分はそのままに全体の脂肪分を段階的に変え、苦み・甘さ・口どけがどう動くかを見ます。

目安 脂肪分を5%ずつ3段階(研究は30・35・40%)

2

好き度と、苦み・甘さ・乾く感じの強さを別々に聞く

研究では好き度が同じでも、味の強さははっきり変わりました。好き度だけでは、配合の違いを見落とします。何も知らせない評価のあとに、カカオ分を見せた評価を別に取ると、数字が期待をどう動かすかも測れます。人数の考え方はチョコの官能評価は何人に頼めばいい?へ。

目安 好き度1問、強さ3〜4問。同じ段階数の尺度で

3

脂肪分を社内規格に持ち、数字で中身以上に見せない

単一産地のカカオマスは豆のロットで脂肪の量がばらつくことが、この研究の出発点でした。ロットごとに脂肪分を測っておくと、同じ表示のまま味がずれるのを防げます。「濃厚」のような言葉を使うなら、配合や測定の根拠を持っておきます。チョコレート類の表示に関する公正競争規約(令和6年10月1日施行の変更を含む版)では第5条第9号がこうした言葉の扱いに当たりますが、個別の表示が当てはまるかは条文だけでは判断できないので、全国チョコレート業公正取引協議会に確かめてください。この記事は法的な助言ではありません。

目安 ロットごとに脂肪分を記録

研究は米国の1つの研究室で、2材料のダークチョコ70%を使ったもので、乳や乳化剤を使う自社の配合や、想定する買い手とは条件が違います。試作で確かめる価値がある条件として使ってください。表示の数字が約束した味と食べた味がそろうことは、究極のチョコの条件「もう一度買いたくなる」の土台になります。また買いたくなる気持ちと味の関係はもう一度買いたくなるチョコは何で決まる?へ。

04 まだわからないことカカオ分の表示で、わかっていないことは?

カカオ分の数字だけを変えて見せ、同じチョコの味の評価が変わるかを調べた研究は、今回の調べでは見つかりませんでした。脂肪分の研究も、70%の1点だけです。

  • 中身が同じチョコに、違うカカオ分の数字を付けて食べてもらう研究は見つかりませんでした。数字そのものが味の感じ方を変えるかはわかりません。
  • 脂肪分の研究はカカオ70%だけで、55%や85%でも同じ向きになるかは確かめられていません。
  • 乳や乳化剤、香りを加えた配合で、脂肪分の効き方が同じかはわかりません。
  • 日本の買い手が、カカオ分の数字から苦さや健康をどう想像するかを調べた研究は見つかりませんでした。
  • カカオ分の数字の表示に条文があるかは、規約を読んだ範囲で見当たらなかったというだけです。表示の判断は全国チョコレート業公正取引協議会に確かめてください。

テンパリング温度ガイド研究一覧を見る

05よくある質問

カカオ分とは何のこと?

チョコレート類の表示に関する公正競争規約では、カカオニブ、カカオマス、ココアバター、ココアケーキ及びココアパウダーの水分を除いた合計量です。カカオの脂肪(ココアバター)も、脂肪以外の固形分も、まとめて1つの数字になります。

同じカカオ70%なら味は同じ?

同じとは限りません。Brown ら(2023)の研究では、70%のまま脂肪分を30%から40%に変えると、108人が感じた苦み・カカオの風味・乾く感じは弱まり、甘さは強まりました。好き度ははっきりとは変わりませんでした。

チョコレートと呼べるのはカカオ分何%から?

規約では、チョコレート生地はカカオ分35%以上(ココアバター18%以上)、水分3%以下です。乳固形分で代える場合は、カカオ分21%以上で、カカオ分と乳固形分の合計が35%以上などの条件があります。チョコレート生地が全重量の60%以上の加工品も「チョコレート」です。

出典

  1. Brown AL, Warren ER, Ingraham BW, Ziegler GR, Hopfer H (2023). The effect of fat content on sensory perception and consumer acceptability of 70% cacao dark chocolate made from reconstituted cocoa liquor. Journal of Sensory Studies, 38(5), e12864. https://doi.org/10.1111/joss.12864
  2. 全国チョコレート業公正取引協議会. チョコレート類の表示に関する公正競争規約・同施行規則(令和6年10月1日施行の変更を含む版). 一般社団法人 全国公正取引協議会連合会 掲載. https://www.jfftc.org/DATA/Kiyaku_pdf/e01_H_choco.pdf
  3. Torres-Moreno M, Tarrega A, Torrescasana E, Blanch C (2012). Influence of label information on dark chocolate acceptability. Appetite, 58(2), 665–671. https://doi.org/10.1016/j.appet.2011.12.005