口どけと保存

カカオバター以外の油で口どけは変わる?パーム油・シアバターで一部を置きかえた研究では、香りより食感に差

約8分で読めます / 主役の研究: Molard ら 2026(フランス CIRAD・モンペリエ大学ほか)

研究の確かさ ★★☆ 中論文3本とEUの指令を照合
カカオバターのかたまり
Photo: David Monniaux / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文と公的機関の資料をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

カカオバターの一部をほかの油に置きかえる配合を考えるとき、気になるのは口どけと味わいです。置きかえると、何が変わるのでしょうか。フランスの研究チームがパーム油とシアバターで調べると、変わったのは主に流れやすさと食感で、香りの感じ方にははっきりした差が出ませんでした。

結論

  1. フランスの CIRAD・モンペリエ大学などの Molard ら(2026)は、ダークチョコのカカオバターの一部をパーム油かシアバターに置きかえた。機械で測ると香りの出方は変わったが、人が味わう試験では香りの感じ方にはっきりした差はなく、食感のほうが油の違いに敏感だった。
  2. 同じチームの別の研究では、機械で測った溶け方(溶ける温度など)に差は出なかった。シアバターを混ぜたチョコは、口の中で溶かして食べると、ざらつきが目立った。
  3. EUでは、カカオバター以外に使ってよい油は、カカオバターと性質の近い6種類に限られ、製品の5%まで。ココナッツ油のようにカカオバターとなじみにくい油をチョコに混ぜたとき、口どけを人が食べて比べた研究は見つからなかった。

01 どんな研究かほかの油を混ぜると、何が変わる?

Molard らは、ダークチョコに足すカカオバターの一部を、パーム油かシアバターに置きかえ、割合を少しずつ変えた試料を作りました。流れやすさ、香りの出方(機械)、人が味わった印象を比べました。

B. Molard, I. Maraval, Z. Deuscher, T. Goli, R. Boulanger, J. Lecomte / フランス CIRAD・モンペリエ大学ほか(2026)[1]

カカオバターの一部を置きかえても、主に変わったのは溶かしたチョコの流れやすさと食感だった。機械では香りの成分の出る量が変わったが、評価者が項目ごとに強さをつける試験(QDA)では、香りの感じ方にはっきりした差は出なかった。

対象: パーム油またはシアバターを一部に使ったダークチョコ。配合を少しずつ変える実験計画で作った / 限界: 評価した人数や、どの食感の項目がどれだけ変わったかは要旨に書かれておらず、今回は要旨で照合した。

この研究で置きかえたのは、作るときに後から足すカカオバターの一部です[1]。機械の測定では、足したカカオバターが10%を超えると、香りの成分の出る量が20〜60%増えました(2-メチルブタナールは除く)。7.5%を置きかえたとき、シアバターでは香りの成分リナロールの出る量が33%増え、パーム油では2-メチルブタナールが40%増えました。それでも、人の評価では香りの感じ方に差が出ませんでした。

同じチームのもう1本の研究(2026)では、カカオバターの一部をパーム油かシアバターにしたダークチョコを、カカオバターだけのものと比べました[2]。機械で測った溶ける温度などの溶け方には、この条件では差が出ませんでした。口の中で溶かして食べると、シアバター入りではざらつきが目立ち、カカオの風味が主役になるのが遅れました。食べ方による違いは口どけの速さで香りの感じ方は変わる?にまとめています。

02 わかった数字どれだけ置きかえると、どう変わった?

7.5%の置きかえで、機械で測る香りの出方は33〜40%変わりましたが、人が感じる香りには差が出ませんでした。EUの決まりでは、ほかの油は製品の5%までです。

7.5%カカオバターをパーム油・シアバターに置きかえた量の1つ。この量で香りの出方を比べた(Molard ら 2026 [1])
+33%と+40%7.5%の置きかえで増えた香りの成分の出る量。シアバターでリナロール、パーム油で2-メチルブタナール(機械の測定)
差なし人の評価での香りの感じ方。食感のほうが油の違いに敏感だった(Molard ら 2026)
5%までEUでチョコに使える、カカオバター以外の植物の油の上限(製品に対して)

ヨーロッパでは、チョコに使える油が法律で決められています。EUのチョコの指令(2000/36/EC)は、カカオバター以外の植物の油を製品の5%まで認めています[3]。ただし、カカオバターの最低量は減らしてはいけません。使ったときは「カカオバターのほかに植物の油を含む」と目立つように書く決まりです。

EUの指令の条件中身
油の種類ラウリン酸の多い油ではないこと。カカオバターと同じ形の脂肪(POP・POSt・StOSt)を多く含むこと
なじみやすさカカオバターとどんな割合でも混ざり、溶ける温度・固まる温度・溶ける速さ・テンパリングの必要さが合うこと
使える油イリッペ、パーム油、サル、シア、コクム、マンゴーの種の油の6種類
例外ココナッツ油は、アイスクリームなどに使うチョコだけ、国の判断で認められる

EU指令 2000/36/EC 第2条・付属書IIより。日本の表示の決まりは、この記事では確かめていない。

この条件の背景には、油どうしの相性があります。ドイツのマックス・プランク高分子研究所の Joshi ら(2020)は、カカオバターとココナッツ油を割合を変えて混ぜ、溶け方を測りました[4]。ココナッツ油65%・カカオバター35%のところで、どちらか一方だけより低い温度でまとまって溶ける混ざり方(共晶)になりました。それ以外の割合では、2つの油は混ざりきらずに分かれる様子が見られました。ココナッツ油のように性質の違う油は、カカオバターの溶け方を変えてしまうことがある、という結果です。

03 開発への使い方ほかの油を使う配合は、何を測って決める?

置きかえる油の種類と割合を1つずつ振り、溶かしたときの流れやすさ・機械で測る香り・人の評価(特に食感)を分けて測ります。機械の香りの差は人の感じ方の差にならなかったので、判断は人の評価で行い、表示は売る国の決まりに合わせます。

1

配合: 油の種類と置きかえる割合を段階に振る

Molard らと同じく、カカオバターの一部をパーム油・シアバターなどに置きかえ、割合を少しずつ変えた試料を並べます[1]。EUで使えるのは、カカオバターと性質の近い6種類の油で、製品の5%までです[3]。ココナッツ油のような性質の違う油は、カカオバターとの割合によって溶け方が変わりました[4](油だけを混ぜた実験)。

目安 油1種類につき割合3段階。ほかの配合は固定

2

評価: 機械の測定と、2つの食べ方での官能評価を分ける

機械では、溶かしたチョコの流れやすさ、溶ける温度などの溶け方、香りの成分の出る量を測ります。人の評価は、訓練した評価者が項目ごとに強さを付ける方法(QDA)で、香り・食感を別の項目にします。シアバターのざらつきは口の中で溶かして食べたときに目立ったので[2]、噛む食べ方と溶かす食べ方の両方で評価します。評価の人数はチョコの官能評価は何人に頼めばいい?にまとめています。

目安 1試料を2つの食べ方で。同じ温度・同じ大きさのかけら

3

品質管理・表示: 売る国の決まりと、保存での変化を確かめる

EUでは、ほかの油を使ってもカカオバターの最低量は減らせず、「カカオバターのほかに植物の油を含む」と目立つように書く決まりです[3]。日本のチョコレート類の表示の決まり(公正競争規約など)は、この記事では原典を確かめていないので、売る前に原文で確かめます。置きかえたチョコのテンパリングの温度や白くなりやすさは今回の研究では測られていないので、保存試験で確かめます(チョコは何日で白くなる?)。

目安 配合を決める前に表示の決まりを確認

研究はダークチョコだけ、置きかえた油はパーム油とシアバターの2種類で、評価した人数は要旨に書かれていません[1][2]。ミルクチョコや自社の配合・工程とは条件が違うので、置きかえの可否は自社の試作で決めます。社内の試食記録には食べ比べノートも使えます。

04 まだわからないこと「植物油脂」入りは口どけが悪い?

研究の条件では、溶け方の測定値は変わらず、香りの感じ方にも差は出ませんでした。ただし、食感の差がどのくらい「また食べたい」に効くかは、まだ調べられていません。

  • Molard らの2本は、パーム油とシアバターの2種類、ダークチョコだけの研究です。ミルクチョコや、ほかの油ではわかりません。
  • どの食感の項目がどれだけ変わったかは、要旨には書かれていません。今回は要旨までしか照合できませんでした。
  • チョコにココナッツ油などを混ぜたとき、口どけがどう変わるかを、人が食べて比べた研究は見つかりませんでした。Joshi らの研究は、油だけを混ぜた実験です。
  • 置きかえたチョコを、もう一度買いたいかや好き度で比べた研究は見つかりませんでした。

テンパリング温度ガイド研究一覧を見る

05よくある質問

カカオバター以外の油を使うと口どけは悪くなる?

フランスの研究では、カカオバターの一部をパーム油かシアバターにしても、機械で測った溶け方には差が出ませんでした。ただ、シアバター入りは口の中で溶かして食べるとざらつきが目立ち、食感の評価は油の違いに敏感でした。

EUではチョコにどんな油を使ってよい?

EUの指令では、イリッペ、パーム油、サル、シア、コクム、マンゴーの種の油の6種類で、カカオバターと性質の近いものに限り、製品の5%まで使えます。使ったときは、カカオバターのほかに植物の油を含むと目立つように表示します。

チョコにココナッツ油を混ぜると、口どけは変わる?

溶け方は変わる可能性があります。油だけを混ぜた研究では、カカオバターとココナッツ油は混ざりきらずに分かれやすく、ある割合では低い温度で溶ける混ざり方になりました。チョコの口どけを人が食べて比べた研究は見つかりませんでした。EUでは、ココナッツ油はアイスクリームなどに使うチョコだけ、国の判断で認められます。

出典

  1. Molard B, Maraval I, Deuscher Z, Goli T, Boulanger R, Lecomte J (2026). Effect of palm oil and shea butter addition on chocolate rheology, aroma release and sensory perception: a mixture design of experiment approach. Food Chemistry, 509, 148561. https://doi.org/10.1016/j.foodchem.2026.148561
  2. Molard B, Forestier-Chiron N, Deuscher Z, Troncho T, Schlich P, Lecomte J, Boulanger R (2026). Beyond cocoa butter: How partial substitution with cocoa butter extenders reshapes temporal dominance of sensations and aroma release in chocolate. Food Research International, 243, 120345. https://doi.org/10.1016/j.foodres.2026.120345
  3. Directive 2000/36/EC of the European Parliament and of the Council of 23 June 2000 relating to cocoa and chocolate products intended for human consumption. Article 2, Annex II. https://www.legislation.gov.uk/eudr/2000/36/annex/II
  4. Joshi BL, Zielbauer BI, Vilgis TA (2020). Comparative Study on Mixing Behavior of Binary Mixtures of Cocoa Butter/Tristearin (CB/TS) and Cocoa Butter/Coconut Oil (CB/CO). Foods, 9(3), 327. https://doi.org/10.3390/foods9030327