口どけと保存

口どけが速いほど「また食べたい」?396人の試食では、速く溶ける試作ミルクチョコほど好き度が高かった

約7分で読めます / 主役の研究: Sasmaz・Gunes 2026(イスタンブール工科大学)

研究の確かさ ★★☆ 中論文4本を照合
溶けたチョコ
Photo: Roozitaa / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文と公的機関の資料をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

「口どけがいい」は、チョコの評価でよく使われるほめ言葉です。では、口の中で速く溶けるように作れば、好き度は上がるのでしょうか。トルコの396人の試食では、訓練された評価者が「速く溶ける」と付けた試作ほど、好き度が高い傾向がありました。ただ、速く溶ける試作は、なめらかさや粒の細かさも同時に違っていて、溶ける速さだけの効果は分けられていません。

結論

  1. イスタンブール工科大学の研究で、乳化剤の量と粒の大きさを変えたミルクチョコ6種類を比べると、乳化剤が多く粒が小さい試作ほど、評価者が付けた「口で溶ける速さ」が速く、消費者396人の好き度も高かった(9点満点で最高7.94、最低6.71)。
  2. 機械で測った舌の上のすべりにくさ(摩擦)は、「口で溶ける速さ」となめらかさの評価と強く逆の関係にあり、好き度とも逆の関係にあった。唾液でやわらかくなる度合いは、甘さと好き度と同じ向きに動いた。
  3. 溶ける速さだけを変え、ほかの性質をそろえて好き度を比べた研究は見つからなかった。70℃でも溶けにくいチョコが「サクッとする」「べたつかない」と好まれた研究もあり、速く溶けるほどよいとは言い切れない。

01 どんな研究か口どけの速さと好き度は、どう比べられた?

イスタンブール工科大学の Sasmaz と Gunes は、乳化剤を2段階、粒の大きさを3段階に変えたミルクチョコ6種類を作り、訓練された10人の評価、消費者396人の好き度、機械の測定を突き合わせました。

Sasmaz B, Gunes G / イスタンブール工科大学 食品工学科(2026)[1]

乳化剤(アンモニウムホスファチド)を0.2%と0.8%、粒の大きさ(D90、粒の9割がこの大きさ以下)を20µm・35µm・50µmにした6種類を、同じ工程で作った。10人の訓練された評価者が「口で溶ける速さ(遅い〜速い)」などを付け、396人の消費者が全体・味・食感の好き度を9点満点で付けた。速く溶けると評価された試作ほど、好き度も高かった。

対象: 試作のミルクチョコ6種類、18〜50歳の消費者396人(1種類を66人が評価) / 限界: 溶ける速さは乳化剤と粒の大きさを変えた結果として変わっただけで、溶ける速さだけを動かしてはいない。原料はトルコの菓子工場から提供され、研究費は大学の研究基金。

消費者は、1日1回以上チョコを食べる人と、週1回以上食べる人が半分ずつでした[1]。食感の好き度は「固さ・やわらかさと口で溶ける感じを考えて」と説明して付けてもらっています。サンプルの合間は、ぬるま湯と味のないクラッカーで口をすすぎました。

02 わかった数字速く溶ける試作は、何点好まれた?

乳化剤0.8%・粒20µmの試作が全体の好き度7.94点で一番高く、乳化剤0.2%・粒50µmが6.71点で一番低くなりました。6種類とも6点(少し好き)を超えていました。

乳化剤粒(D90)全体の好き度食感の好き度
0.8%20µm7.947.71
0.8%35µm7.647.34
0.8%50µm7.287.06
0.2%20µm7.237.32
0.2%35µm6.976.87
0.2%50µm6.716.66

9点満点(1: とても嫌い〜9: とても好き)。Sasmaz ら 2026 の表7から [1]。

1.23点一番好まれた試作と一番好まれなかった試作の、全体の好き度の差(9点満点)[1]
r > 0.9摩擦の大きさと「口で溶ける速さ」・なめらかさの評価の逆の関係の強さ(6種類の比較)[1]
396人好き度を付けた消費者。1種類を66人ずつ評価 [1]
70℃凍結乾燥で作った溶けにくいチョコが形を保った温度(別の研究)[2]

溶ける速さだけの効果ではない 乳化剤を増やすと、「口で溶ける速さ」だけでなく、なめらかさ、クリーミーさ、渋みの評価も上がり、固さは下がりました。粒を大きくすると逆に、固さと渋みが上がり、溶ける速さとなめらかさは下がりました[1]。好き度の差は、これらがいっしょに変わった結果です。粒の大きさとなめらかさの関係はなめらかさは粒の大きさで決まる?で扱っています。

すべりが好き度とつながった 機械で測った摩擦が大きいほど、好き度は低くなりました[1]。唾液を混ぜる前と後の固さの差(唾液でやわらかくなる度合い)は、甘さと好き度と同じ向きでした。英国リーズ大学の Soltanahmadi らは、舌に似せた表面でダークチョコを調べ、唾液が混ざると、油脂ですべる状態から水ですべる状態に移り、摩擦の係数が少なくとも3倍になったと報告しています[3]。

溶けにくいことが好まれた例もあります。北京林業大学の Li らは、乳化と凍結乾燥でチョコの組み立てを変え、70℃でも形を保つチョコを作りました[2]。当てはまる言葉を選ぶ方法の調査では、消費者は「サクッとする」「べたつかない」ことからこのチョコを好んだと報告されています。人数や点数は要旨で確かめられませんでした。

03 開発への使い方口どけを好き度につなげるには、何を変えて測る?

乳化剤の量か粒の大きさのどちらか1つを動かし、評価者の「口で溶ける速さ」と消費者の食感の好き度を同じ試作でとることです。摩擦や唾液を混ぜた固さが測れれば、試食の前のふるい分けに使える可能性があります。

1

配合・工程: 乳化剤か粒の大きさの、どちらか1つを動かす

研究では2つが同時に効いていました。自社の配合で、まず粒の大きさだけを2〜3段階にし、次に乳化剤の量だけを変えます。乳化剤の種類と使える量の決まりは国ごとに違い、この記事では確かめていません。

目安 1条件2〜3段階。豆・カカオ分・テンパリングは固定

2

評価: 「溶ける速さ」と「食感の好き度」を同じ試作で

訓練された評価者には「口で溶ける速さ(遅い〜速い)」を、消費者には食感の好き度を9点で付けてもらいます。噛むか溶かすかで味の流れが変わるので、食べ方を指定します(口どけの速さで香りの感じ方は変わる?)。出す温度も決めます(チョコは何℃で溶ける?)。

目安 消費者は1試作60人以上(研究は66人)

3

品質管理: 粒の大きさと固さをロットごとに記録する

粒が20µmから50µmに粗くなると、同じ乳化剤の量でも好き度が下がりました[1]。精製後の粒の大きさ(D90)と、決めた温度での固さをロットごとに残し、基準から外れたら試食で口どけを確かめます。暑い地域向けに溶けにくくするときは、口どけの評価も取り直します。米国の研究では、溶けにくくする技術を使った6種類と標準品を訓練された評価者が比べ、口で溶けるまでの時間を含む13項目すべてで差が出ました[4]。

目安 ロットごとに粒の大きさを1回

研究の条件は、トルコの試作ミルクチョコ6種類と、トルコの消費者です。ダークチョコや自社の配合で同じ向きになるかは、自社のパネルで確かめます。口どけの好き度は、究極のチョコの条件「食べたあとにもう一度食べたくなる」に近づく手がかりになりえますが、この研究が測ったのはその場の好き度までです。

04 まだわからないこと溶ける速さだけで、また食べたくなる?

わかっていません。ほかの性質をそろえて溶ける速さだけを変え、好き度や「また食べたい」気持ちを比べたチョコの研究は、今回の調べでは見つかりませんでした。

  • 研究の6種類は、溶ける速さ・なめらかさ・固さ・渋みが同時に違っていました。どれが好き度を動かしたのかは分けられません。
  • 機械の測定と評価の関係は、6種類の試作どうしの比べ合わせです。試作が少ないので、相関の強さは試作を増やすと変わる可能性があります。
  • 速すぎる口どけが好まれなくなる境目があるかは、調べられていません。溶けにくいチョコが好まれた研究もあります[2]。
  • 好き度が、続けて食べたときや後日の「また買いたい」にどうつながるかは、測られていません。

テンパリング温度ガイド研究一覧を見る

05よくある質問

口どけが速いチョコほど好まれる?

そういう傾向を示した研究があります。トルコの消費者396人の試食では、評価者が「速く溶ける」と付けた試作ミルクチョコほど好き度が高く、9点満点で最高7.94、最低6.71でした。ただ、速く溶ける試作はなめらかさや粒の細かさも違っていて、溶ける速さだけの効果は分けられていません。

チョコの口どけは何で変わる?

研究では、乳化剤の量と粒の大きさで変わりました。乳化剤を0.2%から0.8%に増やすと口で溶ける速さの評価が上がり、粒を20µmから50µmに粗くすると下がりました。舌の上の摩擦が大きいほど、溶ける速さとなめらかさの評価は低くなりました。

溶けにくいチョコはおいしくない?

そうとは限りません。凍結乾燥で70℃でも形を保つようにしたチョコは、消費者に「サクッとする」「べたつかない」ことから好まれたという研究があります。溶けにくさと好き度の関係は、チョコの作り方によって変わりそうです。

出典

  1. Sasmaz B, Gunes G (2026). Correlations Between Sensory Evaluations and Instrumental Measurements in Milk Chocolate with Varying Emulsifier Levels and Particle Sizes. Foods, 15(5), 938.(数字は本文で確認) https://doi.org/10.3390/foods15050938
  2. Li Q, Zhang L, Zhang X ほか (2025). Innovative emulsification and freeze-drying techniques for developing heat-resistant chocolates with tunable textures and sensory attributes. Food Chemistry, 493, 145822.(要旨で確認) https://doi.org/10.1016/j.foodchem.2025.145822
  3. Soltanahmadi S, Bryant M, Sarkar A (2023). Insights into the Multiscale Lubrication Mechanism of Edible Phase Change Materials. ACS Applied Materials & Interfaces, 15(3), 3699–3712.(要旨で確認) https://doi.org/10.1021/acsami.2c13017
  4. Dicolla CB, Evans JL, Hainly LL, Celtruda SL, Brown BD, Anantheswaran RC (2019). Descriptive sensory analysis of heat-resistant milk chocolates. Food Science & Nutrition, 7(9), 2806–2816.(要旨で確認) https://doi.org/10.1002/fsn3.1047