豆と発酵

カカオ豆の乾かし方で酸っぱさは変わる?マレーシアの研究では、オーブンで急いで乾かした豆のチョコに異臭が強かった

約7分で読めます / 主役の研究: Jinap ら 1994

研究の確かさ ★★☆ 中論文4本を照合
天日で乾かしているカカオ豆
Photo: Irene Scott/AusAID / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文と公的機関の資料をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

試作したチョコに、ツンとした酸っぱさが残ることがあります。その酸っぱさの一部は、発酵のあとの「乾かし方」で決まると考えられています。発酵した豆は水分が多く、酢酸などの酸をたっぷり含んでいます。マレーシアの研究チームが4通りの乾かし方を比べると、60℃のオーブンで乾かした豆には酸が多く残り、そのチョコは異臭(いやなにおい)が強く評価されました。

結論

  1. Jinapら(1994)は、発酵した豆を60℃のオーブン・送風・日陰・天日の4通りで乾かし、ダークチョコにして味を比べた。天日と送風は酸っぱさの度合いに差がなく、どちらも評価がよかった。オーブンで乾かした豆は酸が多く、チョコの異臭が強かった。
  2. ガーナの大学の比較でも、天日で乾かした豆はpH 5.49と最も酸っぱくなく、60℃のオーブンは5.06だった。ただし酢酸の量はオーブンのほうが少なく、乳酸が多かった。
  3. 日陰に置いて乾くのが遅すぎると、カビなどを抑えられなかった。「ゆっくりがよい」にも限りがある。乾燥の温度を変えた試食の比較は、発酵の時間など別の条件も同時に違っていた。

01 どんな研究か4つの乾かし方で、何を比べた?

Jinapら(1994)は、同じように発酵させた豆を4通りに分けて乾かしました。乾燥中に酸っぱさの度合い(pHと酸の量)と、酢酸などの揮発性の酸を測り、最後にダークチョコにして味見をしてもらいました。

Jinap S ほか / マレーシアの研究チーム(1994)[1]

天日乾燥と送風乾燥の豆は、酸っぱさの度合いと酸の量に統計的な差がなく、チョコの評価もどちらもよかった。60℃のオーブンで乾かした豆は揮発性の酸が多く、チョコは異臭が強かった。

対象: 2つの系統のカカオを1対1で混ぜ、実を9日置いてから5日発酵させた豆 / 限界: 今回は要旨で照合した。味見をした人数と、チョコの配合は確かめられていない。

4つめの日陰乾燥では、ぬれた豆を120時間日陰に置いても、カビや酵母などの働きを止められるほど速くは乾きませんでした[1]。そのあとオーブンで急いで乾かしても、風味はよくなりませんでした。

なぜ乾かし方で酸っぱさが変わるのでしょうか。発酵中、果肉の糖から酢酸や乳酸ができ、豆の中にしみこみます。乾燥のあいだ、酢酸のように飛びやすい酸は、豆の水分と一緒に少しずつ外へ出ていきます。ガーナの研究チームは、急に水分を飛ばすと酸が豆の中に閉じこめられるのではないか、と考察しています[2]。

アフリカとアジアのカカオの60%超は、産地で天日乾燥されていると、カメルーンの大学の総説は整理しています[4]。一方、雨の多い時期にはカビを防ぐために機械乾燥が必要になります[3]。

02 わかった数字天日と機械で、酸の量はどれくらい違った?

ガーナの比較では、天日乾燥の豆が最も酸っぱくなく(pH 5.49)、60℃のオーブンは5.06でした。ただ酸の種類で見ると、オーブンは酢酸が少なく乳酸が多く、単純ではありませんでした。

pH 5.49天日で乾かした豆。60℃のオーブンは5.06、乾かす前は4.97(数字が小さいほど酸っぱい。Harunaら 2025)
2.10→2.72mg豆1gあたりの乳酸。天日→60℃のオーブン
4.53→3.94mg豆1gあたりの酢酸。天日→60℃のオーブン
6.2→4.0エクアドルの1か所で、60℃と80℃で乾かした豆の酸味の強さ(10cmの線の上。Streuleら 2024)

ガーナの比較 ケープコースト大学のHarunaらは、6日発酵した豆を約500gずつに分け、天日・60℃のオーブン・天日の温度と湿度をまねたオーブンの3通りで、水分7.5%まで乾かしました[2]。天日の豆はpHが最も高く、断面が茶色くなった豆の割合も98.23%と最も高くなりました。60℃のオーブンでは89.23%で、紫のまま残る豆が多くなりました。

酸の量は、酢酸が天日4.53mg・オーブン3.94mg、乳酸が天日2.10mg・オーブン2.72mg(豆1gあたり)でした[2]。飛びにくい乳酸がオーブンの豆に多く残ったことになります。Jinapらはオーブンで揮発性の酸が多く残ったと報告しており、酢酸の向きは2つの研究で一致していません。Harunaらの研究はチョコの味見をしていません。

乾燥の温度 スイスのチューリッヒ応用科学大学のStreuleらは、エクアドルの2か所で、同じ型の乾燥機を使い60℃と80℃で乾かした豆を比べました[3]。訓練された8人の評価では、80℃の豆は2か所とも苦みと渋みが強くなりました。酸味は1か所で60℃の6.2に対し80℃は4.0でしたが、もう1か所では3.6と3.5でほぼ同じでした。この比較では60℃の豆のほうが発酵が8〜10時間長く、著者らも温度だけの効果かはわからないとしています。研究費はチョコレートメーカーの財団が出しています。

03 開発への使い方乾かし方の違いを、原料の受け入れと評価にどう入れる?

原料の豆を受け入れるときに酸っぱさ(pHと酸の量)と断面の色を測り、乾かし方だけが違う豆を同じ焙煎でチョコにして比べることです。研究では、60℃のオーブンで急いで乾かした豆のチョコに異臭が強く出ました。

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原料・工程: 乾かし方だけが違う豆を比べる

産地から乾かし方(天日・送風・機械、機械なら温度)の記録をもらい、同じ発酵の豆で乾かし方だけが違うものを、同じ焙煎・配合でチョコにします。エクアドルの比較では80℃の乾燥で苦みと渋みが強くなりましたが、発酵の時間も同時に違っていました[3]。乾きが遅すぎるとカビなどを抑えられなかったので[1]、「ゆっくり」にも限りがあります。

目安 乾かし方2種類以上。焙煎・配合は固定

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評価: pHと酸を種類別に測り、酸味・異臭を官能で付ける

酢酸と乳酸は分けて測ります。ガーナの比較では、60℃のオーブンの豆は酢酸が少なく乳酸が多く、研究によって酢酸の向きが一致しませんでした[2]。断面が茶色くなった豆の割合(天日98.23%、オーブン89.23%[2])も受け入れの目安になります。官能評価は、Streuleらのように訓練した8人程度のパネルで、酸味・苦み・渋み・異臭を線の上の尺度で付けます[3]。

目安 豆のロットごとにpH・酸・断面の色

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品質管理: 酸の強いロットを練りだけで補えると決めつけない

酢酸は練る工程で減りますが(コンチングは長く練るほどうまくなる?)、飛びにくい乳酸は豆に残りやすいと考えられます[2]。酸の強いロットは基準のロットと官能評価で比べてから使い道を決め、カビの出た豆は除きます。

目安 受け入れのたびに基準ロットと比較

Jinapらの研究は2系統を混ぜた豆を要旨で照合したもの、Harunaらは約500gずつの乾燥、Streuleらはエクアドルの2か所での比較で、自社の原料や産地とは条件が違うため、試作で確かめる価値がある方向として使います。乾かす前の発酵の話は発酵しないとチョコの香りは出ない?、焙煎でどこまで香ばしくなるかは焙煎するとなぜ香ばしくなる?へ。

04 まだわからないこと乾かし方と酸っぱさの関係は、どこまで確か?

天日がよいという結果はありますが、研究は少なく、豆も条件もばらばらです。乾燥だけを変えてチョコの味を比べた新しい研究は見つかりませんでした。

  • Jinapらの研究は1994年のもので、要旨で照合しました。試食の人数や点数は確かめられていません。
  • オーブンで酢酸が増えるか減るかは、研究で一致していません。
  • 乾燥の温度を変えた試食の比較は、発酵の時間も同時に違っていました。
  • 乾燥のあとの焙煎やコンチングで酸がどこまで減るかを、同じ豆で通して測った研究は見つかりませんでした。

テンパリング温度ガイド研究一覧を見る

05よくある質問

チョコが酸っぱいのはなぜ?

発酵でできた酢酸や乳酸が豆に残っているためと考えられます。マレーシアの研究では、60℃のオーブンで乾かした豆は酸が多く残り、チョコの異臭が強く評価されました。

カカオ豆は天日で乾かすほうがいい?

天日と送風で乾かした豆は、どちらもチョコの評価がよかったという研究があります。ガーナの比較でも天日の豆が最も酸っぱくありませんでした。ただ、日陰で乾くのが遅すぎるとカビなどを抑えられませんでした。

乾燥の温度は高いほうが早くていい?

エクアドルの比較では、80℃で乾かした豆は60℃より苦みと渋みが強く評価されました。ただし発酵の時間も違っており、温度だけの効果とは言い切れません。

出典

  1. Jinap S, Thien J, Yap TN (1994). Effect of drying on acidity and volatile fatty acids content of cocoa beans. Journal of the Science of Food and Agriculture, 65, 67–75. https://doi.org/10.1002/jsfa.2740650111
  2. Haruna L, Abano EE, Teye E, Lukeman M, Tukwarlba I, Yeboah W, Nukafo D, Agyei KJ (2025). Effects of Different Drying Techniques on the Post-Harvest Quality of Fermented Cocoa Beans in Ghana. Food Science & Nutrition, 13(9), e70715. https://doi.org/10.1002/fsn3.70715
  3. Streule S, Freimüller Leischtfeld S, Chatelain K, Miescher Schwenninger S (2024). Effect of Pod Storage and Drying Temperature on Fermentation Dynamics and Final Bean Quality of Cacao Nacional in Ecuador. Foods, 13(10), 1536. https://doi.org/10.3390/foods13101536
  4. Dzelagha BF, Ngwa NM, Nde Bup D (2020). A Review of Cocoa Drying Technologies and the Effect on Bean Quality Parameters. International Journal of Food Science, 2020, 8830127. https://doi.org/10.1155/2020/8830127